「これ、かなり危ないですよ」——総務省のSNS収益化停止指針案、2027年3月から適用へ
「これ、かなり危ないですよ。」。
総務省がまとめた選挙関連の指針案について、Xでこう書き込んだ投稿が3,000件を超すいいねを集めました。
偽情報の拡散を防ぐための仕組みのはずが、運用のしかたによっては別の問題を生みかねない——そんな懸念が広がっています。
SNSで情報発信をする立場の人にとっては、自分の投稿が収益化の対象から外れる可能性もある話で、無関係とは言えません。
先に結論をまとめると:
– 総務省が選挙時のSNS偽情報対策として、不適切な投稿の収益化停止や候補者公式サイトの優先表示を事業者に求める指針案をまとめた
– 2027年3月から適用予定で、2027年春の統一地方選挙を見据えた動き
– 罰則や行政の勧告権限はなく、対応の具体的な内容は事業者の判断に委ねられるため、「誰が収益化停止の対象を決めるのか」が議論になっている
何が起きたのか
総務省が作成した選挙時のSNS規制に関する指針案が、2026年10月21日に報道で明らかになりました。
指針案は、公正な選挙を害するおそれのある投稿について、閲覧数に応じた収益を投稿者が得られなくすることや、候補者・政党本人の公式サイトを検索結果などで優先的に表示することをSNS事業者に求める内容です。
来春(2027年春)の統一地方選挙での運用を視野に入れ、2027年3月からの適用を予定しているとされています。
藤井比早之総務相が近く正式に表明する見通しです。
報道が出た直後、Xでは好意的に受け止める声も見られました。
あー一番正しいやり方だと思っている方法が来た→
— 岩崎啓眞@スマホゲーム屋+α (@snapwith) 2026年10月21日
選挙の偽情報対策、SNS事業者に収益化停止促す 総務省指針案 – 日本経済新聞 https://t.co/AgEsmMGPnE
この投稿は21日夜に日本経済新聞の記事見出しを引きながら「一番正しいやり方だと思っている方法が来た」と評価しています。
ただ、この仕組みには見落とせない論点も潜んでいました。
そこで指針案の内容と、与野党がここに至った経緯を確かめてみました。
調べて分かったこと
指針案の中身は具体的に何を求めているのか
指針案の骨格は、①公正な選挙を害するおそれのある投稿について閲覧数に応じた収益化を止める、②候補者・政党の公式サイトを優先的に表示する、の2点です。
この内容は、与野党でつくる「選挙運動に関する各党協議会」が2026年10月9日に総務省へ申し入れた要請がベースになっています。
協議会側は、偽情報による悪影響を軽減するための具体的な措置として、収益化の停止やAI生成コンテンツへの対応を事業者に求めるよう提案し、同時に「表現の自由を過度に萎縮させない」ことも申し入れに明記していました。
罰則がないのに、事業者は本当に対応するのか
指針案には、SNS事業者への罰則や総務省による勧告・指導の権限は盛り込まれていません。
改正法は事業者に偽情報の悪影響を軽減する「必要な措置」を講じること自体は義務付けていますが、具体的にどう対応するかは事業者の判断に委ねられる形です。
藤井総務相は「参考となる指針を公表する」という立場で、年内にも指針を策定する方針だとされています。
強制力がない分、実際にSNS事業者がどこまで踏み込んで対応するかは、現時点では見通せません。
「危ない」とされているのはどこか
好意的な反応がある一方で、仕組みの詳細に注目した投稿では懸念も示されました。
これ、かなり危ないですよ。
— 菅野完 (@noiehoie) 2026年10月21日
「選挙期間中の一律収益化停止」なら安全だけど、総務省の指針だと「役所が収益化停止対象動画を個別に決める」となっていて、恣意的な言論弾圧の要素が排除できない。
簗ちゃんの事例があるわけで、「役所が自民党に媚びる」可能性は否定しきれないんですから。 https://t.co/TKx587K1zj
この投稿は22日朝、「選挙期間中の一律収益化停止なら安全だけど、総務省の指針だと役所が収益化停止対象動画を個別に決めるとなっていて、恣意的な言論弾圧の要素が排除できない」と指摘しています。
一律に止めるルールと、役所が個別に対象を判断するルールとでは、運用のリスクがまったく違うという論点です。
指針案が「公正な選挙を害するおそれのある投稿」という判断基準を誰がどう当てはめるのかを明確にしていない以上、この懸念自体は的を外していないように見えます。
統一地方選との関係はどうなっているのか
来春の統一地方選挙は、今回の指針案が実際に機能するかどうかの最初の試金石になります。
指針そのものは2027年3月からの適用予定で、統一地方選のスケジュールに合わせて逆算して用意されている形です。
年内に指針が固まったあと、各SNS事業者がどのような社内ルールを用意するかによって、選挙期間中に実際に何が収益化停止の対象になるのかが見えてくることになりそうです。
Shiritomo編集部の考察:運用ルールの設計がすべてを決める
今回のケースが示しているのは、「何を目的にした規制か」と「誰がその判断をするか」は別の問題だという点です。
偽情報対策という目的自体に反対する声はほとんど見られませんが、判断の主体が総務省(行政)になるのか、SNS事業者の独自基準になるのかで、受け止め方が大きく変わっています。
SNS運用に関わる立場からすると、プラットフォーム側が今後公表する社内ガイドラインの文言は要チェックです。
収益化停止の基準が「投稿の内容」だけでなく「投稿者の属性」にまで広がるケースが過去の規約改定でもあったため、選挙関連の発信をする企業・個人アカウントは、年内に出る指針の詳細を早めに確認しておく価値がありそうです。
まとめ
総務省がまとめた選挙時のSNS規制指針案は、2027年3月の適用を予定し、来春の統一地方選を見据えたものです。
罰則がなく、対応の具体的な内容が事業者の判断に委ねられる設計だけに、「誰が収益化停止の対象を決めるのか」という運用面の論点が、好意的な評価と懸念の両方を呼んでいます。
さらに深掘りしたい方へ
総務省の指針案に関する詳報は、日本経済新聞でも確認できます。

