「陸奥守からはあんまり聞いたことのない土佐弁」――NHK1950年代音源に刀剣乱舞ファンが1万いいね
感嘆符(‼️)を17個連ねた投稿に、1万件を超えるいいねと60万回のインプレッション(投稿が表示された延べ回数)が集まりました。
投稿主が呼びかけていたのは炎上でも宣伝でもなく、NHKアーカイブスで公開されている1950年代の方言音源です。
投稿にある「ガチで『ぜよ』使ってた時代の土佐弁が入ってる」という一文と、方言そのものへの物珍しさが噛み合った格好です。
拡散したのは、刀を擬人化したキャラクターが登場するオンラインゲーム「刀剣乱舞」のファンアカウント「koa_tourabu」さん。
SNS運用に関わる人にとっても、半世紀以上前の音声資料が、なぜ今のXで1万いいねを稼いだのかは見過ごせない現象です。
音源の実在性と拡散の経路を、一次情報から確かめてみました。
先に結論をまとめると:
– 音源はNHKが1952年から集めた「全国方言資料」の一部で、実在を確認できました
– バズった投稿は別の投稿(@numa_kabuki)からのリンクをさらに広めたもので、拡散は2段階でした
– 拡散したのは刀剣乱舞ファン層で、キャラクター陸奥守吉行の土佐弁演出との対比が食いつきの背景にありました
60万インプレッションを稼いだのは、NHKの方言音源への案内でした
まず投稿の中身を確認します。
投稿主は自分の言葉で「フォロワー‼️‼️‼️ここで1950年代の土佐弁が聴けるぞ‼️‼️‼️‼️」と呼びかけ、NHKアーカイブスのページへのリンクを添えていました。
フォロワー‼️‼️‼️ここで1950年代の土佐弁が聴けるぞ‼️‼️‼️‼️
— 一こあさん (@koa_tourabu) 2026年9月26日
ガチで「ぜよ」使ってた時代の土佐弁が入ってる‼️‼️‼️‼️‼️陸奥守からはあんまり聞いたことのない土佐弁も入ってる‼️‼️‼️‼️‼️ https://t.co/rkCj5VIjRI
投稿された2026年9月27日8時58分から1日足らずで、いいね1万358件・リポスト3,226件・ブックマーク3,908件(記事執筆時点)が集まりました。
ブックマーク数がリポスト数を上回っているのは、「後でちゃんと聴きたい」という保存目的の反応が多かったことを示しています。
ただ、この投稿だけを見ても「本当にそんな音源が存在するのか」までは分かりません。
そこでリンク先を一次情報として確かめてみました。
調べてわかった音源の正体と、拡散の裏側
NHKアーカイブスの土佐弁音源は本当に実在するのか?
投稿に貼られていたリンクをたどると、直接NHKアーカイブスに着地するわけではありませんでした。
まず別の投稿にリンクしていて、そこからさらにNHKアーカイブスのページに行き着く構造です。
中継点になっていたのは、9月25日に投稿された「NHKアーカイブスで1952年〜70年頃の日本の方言資料が公開されてて気になり」という投稿でした。
NHKアーカイブスで1952年〜70年頃の日本の方言資料が公開されてて気になり、ためしに京都と大阪の方言聞いてみたけど今より方言がきつい気がする。そして大阪弁の上品なこと⋯!!
— タダ(ぬま) (@numa_kabuki) 2026年9月25日
こういう資料をオンラインで公開してもらえるのありがたい🙏https://t.co/11H7kPLw7K
たどり着いた先は、NHKアーカイブスの「全国方言資料」というページです。
NHKは1952年、標準語化が進む前に各地の方言の生きた姿を残す目的で音声収集を始め、1972年までに全国141地域分を11巻にまとめました。
中国・四国地方を収めた巻には高知県内の収録地も含まれています。
つまり「1950年代の土佐弁」という核となる事実は、編集部の追跡でも実在を確認できました。
koa_tourabuさんの投稿は、numa_kabukiさんの投稿(いいね14,519件)をさらに広めた「二次拡散」だったことになります。
なぜ刀剣乱舞ファンが土佐弁に食いついたのか?
ここで気になるのが、なぜ刀剣乱舞のファンアカウントがこの音源に反応したのかという点です。
手がかりは投稿本文の「陸奥守からはあんまり聞いたことのない土佐弁も入ってる」という一文にあります。
「陸奥守」は刀剣乱舞に登場するキャラクター「陸奥守吉行」のことで、坂本龍馬の愛刀を由来とし、作中では土佐弁で話す設定です。
声優を務める濱健人さんは高知県南国市出身で、収録現場では土佐弁の“監修”も担い、公開されているインタビューでは「アクセントを大事にして、語尾は『~ぜよ』や『~やき』を付けつつ、しつこくならないようにした」と演じ方を語っています。
フォロワーにとっては、ゲームの中で作られた土佐弁と、NHKが記録した本物の土佐弁を聴き比べられるという珍しい機会だったと考えられます。
実際、投稿への反応にも聴き比べた感想が寄せられていました。
にゃーって言わずにノォって使ってるのが印象的だった
— からなし (@colorful_comcom) 2026年9月27日
文字にされると何言いうがかわからん(笑)
耳で聞きゆう方が妙に解るがはえらい面白い https://t.co/qMViMpTrat
「にゃーって言わずにノォって使ってるのが印象的だった」という声のほかにも、「ゼヨってかデヨぽい」という発音の違いに触れた反応や、「南部弁はあんま変わらないな。
津軽弁はかなりリスニングがしんどい」と別の方言との聴き取りやすさを比べる声も出ていました。
土佐弁に限らず、昔の録音の方言は文字にすると分からないが耳で聞くと分かる、という感想が多いのも特徴的でした。
「土佐弁」という言葉自体、実は検索され続けているようです
Google広告のキーワードプランナーによると(2026年8月時点)、「土佐弁」という言葉は直近月8,100件、12ヶ月平均でも8,100件と、跳ね(直近月÷12ヶ月平均)が1.0倍でした。
特定のイベントで急に増えたわけではなく、年間を通じて一定数調べられている言葉のようです。
「ぜよ」単独でも月720件前後の検索があります。
今回のようなバズが起きなくても、土佐弁そのものへの関心はもともと底堅かったのでしょう。
Shiritomo編集部の考察:拡散はファンダムを1段飛び越えて起きた
今回の拡散で目を引くのは、発信源(numa_kabukiさん)と最大の拡散者(koa_tourabuさん)が別のファン層に属していたことです。
方言資料そのものに興味を持った人の投稿が、刀剣乱舞という全く別のコミュニティに拾われ、そこで「陸奥守の土佐弁との対比」という新しい文脈が付け加えられて再燃しました。
もとの投稿もリンク先の投稿も、それぞれ単独で1万いいね規模まで伸びています。
1つのコンテンツが複数のファンダムを経由するたびに文脈が上書きされ、それぞれの入口で新しくバズる——公式発表をそのままリツイートするより、こうした「文脈の掛け合わせ」を生む余地のある投稿の方が伸びやすい傾向がうかがえます。
自分のジャンルと直接関係ない一次情報を、自分たちの文脈で語り直す動きは、SNS運用担当者にとっても参考になりそうです。
まとめ
NHKが1952年から集めた方言資料という古い一次情報が、刀剣乱舞ファンの目線を経由して現代のXで1万いいねを獲得しました。
音源自体は実在し、拡散は単発ではなく2つのファン層をまたいだ二段階の広がりだったことが確認できています。