朝日新聞がX上の虚偽画像投稿者を特定——SNS担当者が知っておくべき「発信者情報開示請求」という選択肢

shiritomo | AI・SNS・話題のテック情報メディア by Hashout編集部 @shiritomoAI_jp 2026年6月23日 更新
朝日新聞がX上の虚偽画像投稿者を特定——SNS担当者が知っておくべき「発信者情報開示請求」という選択肢

「自社の入社式の写真を加工されて、外国旗が掲揚されているかのように見せかけたフェイク画像を拡散されたら、あなたはどうしますか?」

スルーする?削除を申請する?それとも法的措置を取る?

先日、朝日新聞社がまさにこの状況に直面し、SNS関連では初となる「発信者情報開示請求」に踏み切ったことが明らかになりました。
投稿者はすでに特定済みだといいます。
SNS担当者にとって、他人事とは言えない出来事です。

何が起きたのか——入社式写真を加工した「フェイク画像」

朝日新聞社が6月15日、公式Xで公表したのは、自社の入社式の写真が加工された問題です。

元の写真には存在しないはずの他国の国旗が、まるで入社式会場に掲揚されているかのように合成されていました。
「こんな新聞を信じられる訳がない」というコメントを添えて投稿されたこの画像は、「朝日新聞が外国政府の影響下にある」という印象を意図的に与えるものでした。

当該アカウントはXによってすでに凍結されていますが、同社は「社会的評価を不当に低下させるものと判断した」として、SNS関連では初めての法的手続きに踏み切りました。
東京地裁から発信者情報の開示を認める判断を受け、投稿者を特定するに至っています。

X上での反応——批判と擁護が入り乱れる議論

この発表に対し、X上では単純な「支持」「非難」では収まらない議論が広がっています。

朝日新聞公式の発表ツイートには多くの反応が集まりました。

一方で、批判的な意見も目立ちます。
特に多かったのは「過去に同紙が訂正・謝罪した記事(サンゴ礁傷付け事件など)を持ち出し、ダブルスタンダードではないか」という指摘です。

「誤報を出した当事者が虚偽情報で開示請求をするのはどうなのか」という声が出るのは、日本のメディア事情を踏まえると理解できる側面もあります。
しかしここで注目すべきは、そのような批判が出ること自体が、SNS上でブランドイメージが傷つく典型的なパターンだということです。

SNS担当者が知っておきたい「発信者情報開示請求」の仕組み

SNS上のフェイク画像や誹謗中傷に対して、企業が法的手段を取ることは難しいと思われがちです。
でも実際にはどうでしょうか。

「発信者情報開示請求」とは、プロバイダ責任制限法に基づき、匿名の投稿者の情報をSNS事業者(Xなど)から開示させる法的手続きです。

流れはざっくり以下のようなイメージです。

①証拠保全: 問題投稿のスクリーンショットやURLを保存する(削除・凍結されても証拠になる)

②弁護士への相談: 「名誉毀損」「信用毀損」などの法的要件を満たしているか確認する

③X社(プロバイダ)への開示請求: 裁判所での手続きを通じてX社に投稿者の情報開示を求める

④投稿者の特定: 氏名・住所・IPアドレスなどを入手し、再発防止や損害賠償を求める

今回の朝日新聞のケースでは東京地裁が開示を認めたため、実際に投稿者が特定されました。
法的手続きは「成立しうる選択肢」だと実証した事例です。

ブランド保護の観点から見た「3つの教訓」

企業のSNS担当者が今回のケースから学べることを整理しておきます。

1. フェイク画像は「削除されたら終わり」ではない

アカウントが凍結された後でも、証拠を保全していれば法的手続きは可能です。
問題投稿を見つけたら、まず証拠のスクリーンショットと投稿URLを記録しておく習慣が大切です。

2. 法的対応は「最後の手段」だが選択肢に入れておく価値がある

今回の朝日新聞のように「初の法的措置」として注目される事例は、同時に「抑止力」にもなります。
SNS上の悪意ある投稿に対して法的手続きが取れることを社内外に示す効果があります。

3. 批判が批判を呼ぶ「炎上の二次展開」を想定しておく

今回のX上の反応が示すように、法的対応を公表すること自体が新たな炎上のきっかけになることがあります。
「なぜ今更」「自分たちも同じことをしている」という批判は、ブランド評価に傷をつけかねません。
対応を公表する際は、どのような反論が来うるかを事前に想定しておく必要があります。

さらに深掘りしたい方へ

SocialReport編集部の考察

今回の朝日新聞のケースは、SNS担当者にとって「高いところから降ってきた話」ではありません。
規模の大小を問わず、企業アカウントが何らかの形でフェイク画像・虚偽情報被害を受けるリスクは、2026年の今、確実に高まっています。

生成AI技術の普及により、入社式の写真に別の旗を合成するような加工は、もはや高度な技術を持つ者にしかできない作業ではありません。
スマートフォンのアプリでも、それなりの品質の合成画像は作れてしまいます。

SNS担当者として準備しておきたいのは、「不正加工画像・なりすまし投稿の早期発見の仕組み」と「発見した際の社内エスカレーションフロー」です。
具体的には、ブランドキーワードのソーシャルリスニング(SocialReportのような分析ツールを活用)、法務部門との連携ルートの確立、弁護士への事前相談の実施、といった体制整備が有効です。

「まさか自分たちが」と思っているうちに被害が広がるのがSNS炎上の怖さです。
朝日新聞が示した「法的手続きは選択肢にある」という事実は、SNS担当者全員が知っておく価値のある情報だと考えます。

まとめ

朝日新聞がX上の虚偽画像投稿者を「発信者情報開示請求」で特定した今回の事例は、SNS担当者にとって実践的な学びを提供しています。
フェイク画像・虚偽情報への対処は「削除申請」だけではなく、法的手続きという選択肢もあります。
まずは証拠保全の習慣と、社内エスカレーションフローの整備から始めてみてはいかがでしょうか。