Steamの売上が「銀行の取り扱い拒否」に――インディー開発者を襲う入金トラブル
「Steamの売上が、銀行の取り扱い拒否になりました」。
インディーゲーム開発者の投稿がそう告げていました。
海外で売れているのに、日本の銀行口座にお金が届かない。
そんな事態が今、複数の開発者を同時に襲っています。
個人でゲームを作って売っている人にとって、これは明日わが身かもしれない話です。
先に結論をまとめると:
– 百合(女性同士の恋愛)ビジュアルノベルを手がけるインディーゲーム開発者・滝井ノアメ氏が、新生銀行とゆうちょ銀行の双方からSteam売上の受け取りを拒否され、全年齢向けの新作の発売を2か月延期
– 背景にはマネーロンダリング対策強化による銀行の海外送金審査の厳格化があり、成人向けコンテンツを扱う開発者の間でも同様の入金拒否が相次いでいる
– 入金されなくても売上に対する納税義務は消えないため、開発者は「受け取れないお金に課税される」という板挟みの状態に置かれている
何が起きたのか(Xでの盛り上がり)
きっかけは、インディーゲーム開発者の滝井ノアメさんが8月10日に投稿した告知でした。

【#インディーズゲーム 開発者としてお知らせと共有】
— 滝井ノアメ コミケ2日目西1ふー35 (@fenrirvier) 2026年8月10日
《Steamの売上が、銀行の取り扱い拒否になりました》
上記の緊急対応により、一ヶ月ほど費やしておりましたが未だに解決しないため
『私たちフェイクマリッジ?』
発売を2か月ほど延期することになります🥲https://t.co/JMa9v8XAcw
(続#wtmr2 https://t.co/RDgZwFAJ28
Steamの売上金が銀行の取り扱い拒否に遭い、緊急対応に1か月ほど費やしたものの解決しなかったため、新作『私たちフェイクマリッジ?』の発売を2か月ほど延期すると明かしています。
この投稿には2300件を超えるいいねが集まり、同業のインディー開発者を中心に大きな反響を呼びました。
この件を受けて、SNS上では「またも同様の事例が」という報告も相次いでいます。
またもSteamでの海外売り上げ送金が国内銀行で受け取り拒否された話。銀行から実際に届いたメールのスクリーンショットも載っており必見。実は他の方面からも、数日前にこうしたデバンキング多発の知らせを受けており、金融機関による引き締めが強まっている可能性があります。… https://t.co/0zLPm8XvE8
— くりした善行 (Zenko)🇯🇵無所属/Anti-Censorship/C108 日曜西あ51a (@zkurishi) 2026年8月5日
投稿者は、銀行から実際に届いた拒否通知のスクリーンショットを添えて、Steamでの海外売上送金が国内銀行で受け取り拒否された別の事例を紹介しました。
この投稿がきっかけとなり、匿名でのヒアリングを通じて同様の事案が他にも複数寄せられているとのことです。
ただ、これが単発のトラブルなのか、それとも構造的な問題なのか。
実際に何が起きているのか、一次情報を確認してみました。
調べて分かったこと(調査・深掘り)
なぜ銀行は送金を拒否するのか?
滝井さんの説明によれば、新生銀行からマネーロンダリング関連の海外送金審査で資料提出を求められました。
その結果、開発者の過去作品に成人向け(百合)コンテンツの売上が含まれていると判断され、口座の取り扱いを拒否されたとのことです。
その後、海外パブリッシャーがゆうちょ銀行を通じて成人向け分を除いた売上のみを振り込もうとしたものの、再度審査の末に拒否されたと報告されています。
今回発売が延期になった『私たちフェイクマリッジ?』自体は、Steamストアページ上で年齢制限の表示がない全年齢向けタイトルです。
同様の構図は他の開発者にも見られます。
X上で報告されている別の事案では、台湾のパブリッシャー経由でSteam売上を国内銀行に送金しようとしたところ、送金者との関係や取引内容を示す資料の提出を求められました。
契約書などを提出したにもかかわらず、最終的に入金を拒否されたケースもありました。
銀行側からは拒否の具体的な理由について回答できないと伝えられたといいます。
この事案自体は成人向け作品の売上に関するもので、全年齢向け作品まで対象になったと確認できるのは滝井さんの事例のみですが、資料を提出しても拒否理由が開示されないまま「Steam経由の海外送金」自体が審査対象になっている点は共通しています。
入金されなくても税金はかかるのか?
この問題を特に深刻にしているのが、税制上の扱いです。
銀行が入金を拒否して開発者の手元にお金が届かなくても、Steam上で発生した売上自体に対する納税義務は消えません。
つまり開発者は、実際には受け取れていないお金について税金だけを支払わなければならない状況に置かれる可能性があります。
まだ着金していない売上金にどう対処すべきか、経理・税務の実務としても難しい局面に立たされているといえるでしょう。
なぜ今、こうした事例が増えているのか?
近年、金融庁による規制強化や資金決済法の改正を背景に、銀行によるマネーロンダリング対策が厳格化されています。
海外からの送金は、送金元との関係性や取引の実態を示す資料の提出を求められるケースが増えています。
正当な商取引であっても、銀行側の内部審査で時間がかかったり、最終的に取り扱いを断られたりする事例が報告されるようになりました。
Steamを通じて世界中に販売するインディーゲーム開発者は海外からの入金を受け取る機会が多いため、この審査強化のあおりを受けやすい立場にあると考えられます。
Shiritomo GAME編集部の考察:開発者が今すぐ検討できることは2つ
まず、資金の受け皿を1つの銀行に集中させないことです。
今回の事例でも、新生銀行で拒否された後にゆうちょ銀行でも再拒否されており、複数の金融機関に送金経路を分散させておくことがリスクヘッジになり得ます。
海外決済に強いオンライン銀行や、国際送金サービスを普段から選択肢として持っておく開発者も増えていくかもしれません。
もう1つは、こうした事例を開発者同士で可視化することです。
今回、滝井さんの投稿をきっかけに他の開発者からも類似事例が寄せられ、単発の個人トラブルではなく構造的な傾向として認識され始めています。
個人のインディー開発者は法務・金融の専門知識を持たないことが多く、声を上げて情報を共有すること自体が、業界全体で対策を検討する土台になっていくのではないでしょうか。
全年齢向け作品であっても対象になり得るという点は、Steamで販売するすべてのインディー開発者にとって無関係ではない話です。
まとめ
Steam売上の銀行送金拒否は、成人向けコンテンツに限らず全年齢向け作品の開発者にも及んでいることが、今回の一連の投稿から見えてきました。
マネーロンダリング対策の強化という大きな流れの中で、個人開発者がどう資金を守るかが問われています。