SNS運用Tips 読了 4 分

「はみくま」商標トラブル全記録——個人クリエイターがUSJの要求を退けた方法

shiritomo | AI・SNS・話題のテック情報メディア by Hashout編集部 @shiritomoAI_jp 2026年5月18日 更新
「はみくま」商標トラブル全記録——個人クリエイターがUSJの要求を退けた方法

ある朝、見知らぬ法律事務所からメールが届く。

「あなたのドメインは商標権を侵害しています。
5日以内に移管してください」

VRChatで活動するクリエイター・実森はみくまさんが体験したのは、まさにそんな状況でした。
長年愛用してきたペンネームと同じ名前のキャラクターが大手企業によって商標登録され、ドメインの移管を迫られたのです。
しかし、はみくまさんはこの要求を退けました。
その経緯をnoteに詳細に記録し、個人クリエイターたちの間で大きな話題となっています。

「はみくま」と「ハミクマ」——同じ名前、別々の歴史

はみくまさんが「はみくま」の名前を使い始めたのは2020年のことです。
VRChatを中心に活動し、ペンネームとして定着させてきました。

一方、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が「ハミクマ」というキャラクターを発表したのは2022年秋。
青い毛並みの不思議なクマが「はみ出す」ことをテーマにしたキャラクターで、2023年のハロウィンイベントで人気を博しました。
その後、2023年に「ハミクマ」が商標登録されます。

はみくまさんはその存在を知らないまま、2024年前半にhamikuma.comというドメインを取得しました。

UDRPという武器——そしてその限界

数ヶ月後、代理人の法律事務所からメールが届きます。
英語で書かれたその文書には、UDRP(統一ドメイン名紛争解決方針)違反を主張し、5日以内にドメインの移管認証コードを提供するよう求める内容が記されていました。

UDRPとは、ドメイン名に関する国際的な紛争解決手続きです。
申立てが認められるには3つの要件すべてを満たす必要があります。

  1. ドメインが商標と同一または混同を生じさせるほど類似していること
  2. 登録者が権利または正当な利益を持たないこと
  3. ドメインが悪意をもって登録・使用されていること

はみくまさんが調べると、第2・第3の要件において自分には反論できる根拠があることがわかりました。
2020年からペンネームとして使用していたSNSの投稿記録、活動履歴——これらが「正当な利益の証拠」になりえます。
さらに、ドメイン取得時点では「ハミクマ」の商標を知らなかったことから、「悪意による登録」も成立しません。

証拠を集め、レジストラを移管する

はみくまさんが取った行動は冷静でした。

まず、過去のSNS投稿・活動記録を体系的に保存・整理。
次に、レジストラ(ドメイン登録会社)を海外から国内事業者に移管しました。
これにより、企業側が強引にドメインを奪う手続きが取りにくくなります。

代理人の正当性を確認したうえで反論の意思を示すと、2025年初頭、企業側は「商標権侵害」を前提とした移管要求を取り下げ、任意交渉への切り替えを申し出てきました。

謝罪・補償の要求には応じなかったため交渉は事実上中断しましたが、ドメインははみくまさんの手元に残りました。

noteが呼んだ大きな反響

はみくまさんがこの一連の経緯をnoteに公開すると、X(旧Twitter)で大きな反響を呼びました。

「大企業でも理不尽な要求をしてくることがあるんだ」「個人クリエイターでも戦えることがわかった」という声が相次ぐ一方、「なぜ長年使っていたペンネームの方が立場が弱くなるのか」という不条理さへの怒りの声も多く見られました。

こうした体験談が広がることで、「自分も同じ状況になったらどうするか」を考える個人クリエイターが増えています。

個人クリエイターへのアドバイス

はみくまさんがnoteの中で強調しているのは、2点です。

商標の定期的な確認
自分が使っているペンネームやキャラクター名が、誰かによって商標登録されていないかを定期的にJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)で調べることが重要です。

活動記録の保存
いつから、どんな形でその名前を使い始めたかを証明できる記録を残しておくこと。
SNSの初期投稿、作品ファイルの作成日時、ブログの公開日など、日付が証明できるものを意識的に保存しておくと、もしもの時の証拠になります。

「先に商標を登録した方が強い」という誤解がありますが、それより前から使用していた実績があれば、必ずしも泣き寝入りする必要はありません。

さらに深掘りしたい方へ

まとめ

個人クリエイターが大手企業の法的要求に立ち向かい、ドメインを守り抜いた実森はみくまさんの事例は、多くのクリエイターにとって貴重な参考事例です。
UDRPは申立て側が必ず勝つ仕組みではなく、使用実績と記録の保存があれば対抗できる余地があります。
自分の活動名・ペンネームを長期的に守るためには、日頃からの商標チェックと活動記録の蓄積が最大の防衛手段です。
大企業だからといって、すべての要求が正当なわけではありません。