「スルッと入ります!」連呼で600万ビュー——小林製薬 糸ようじ公式Xが放った「鬼畜MAD風」広告の正体
Xのタイムラインを流し見していたら、エプロン姿の男性がひたすら「スルッと入ります!」と叫び続ける60秒の動画が目に飛び込んできました。
顔が歪むエフェクト、「ギコイコはしません」という謎のテロップ……これ、ニコニコ動画の「鬼畜MAD」じゃないの? と二度見したら、小林製薬の公式アカウントでした。
2026年6月2日の朝、小林製薬の「糸ようじ」公式Xアカウントが投稿したこの動画は、数時間で600万ビュー・5万いいねを突破。
「最終鬼畜小林製薬」などのコメントが飛び交い、Xのタイムラインを賑わせました。
メーカーの公式がこんな振り切った映像を出してくるとは……と気になって調べてみました。
動画の内容と「ニコニコMAD文化」との接点
動画の中心にいるのは、白いエプロン姿の実演販売風の男性。
歯間フロスの使い方を説明しながら、「スルッと入ります、スルッと入ります!」と連呼します。
商品の名前が「糸ようじ スルッと入るタイプ」なので、そのままなのですが、繰り返しと大袈裟なエフェクトの組み合わせが、ニコニコ動画で2000年代後半に流行した「鬼畜MAD」のノリそのもの。
「ギコイコはしません」というテロップは、ニコニコ発祥のキャラクター「ギコ」「モナー」を思わせるネットミームのオマージュ。
QVCの実演販売をリスペクトしたような構成も加わり、「10年以上前のネット文化を熟知している人間が作っている」との分析が続出しました。
ニコニコ動画を主戦場とするアーティストのbeatmario氏も反応し、

最終鬼畜小林製薬 https://t.co/70c59HPZT5
— ビートまりお💓 (@beatmario) 2026年6月2日
この投稿は1.4万いいねを超え、インターネット文化に深く親しんだ層に刺さった証拠になっています。
SNS運用的な「おかしさ」の設計
おもしろいのは、「笑わせる」ことを目的にしつつも、商品の機能説明が完璧に機能している点です。

「スルッと入るタイプ」という商品名は、狭い歯間にもスルッと入るという特徴そのまま。
実際に公式サイトによると、歯ブラシだけでは落とせない歯垢(全体の50〜60%ともいわれる)をフロスで除去できるとされていて、価格は750円(税抜)・60本入りとコスパの高さも魅力。
動画はその訴求をすべて映像に詰め込みながら、エンターテインメントとして成立させています。
SNSで話題になるコンテンツには「シェアしたくなる理由」が必要です。
今回の動画には「仲の良い人に送りたくなる独特の笑い」があり、それが拡散の原動力になりました。
Xで「これ公式か?」「マーケ担当天才」という声が相次いだのは、企業アカウントへの信頼感と驚きが同時に生まれたためでしょう。
「知っている人だけわかる」が拡散を加速させる仕組み
ニコニコMAD文化を知らない人が見ても「なんかシュールな動画だな」で終わります。
でも、2000年代後半のニコニコ動画を体験している世代には「あの空気感」が瞬時にわかる。
この世代差のある「わかる人だけわかる笑い」が、特定の層のシェア意欲を強く刺激します。
Xでは、コメントに「最終鬼畜糸ようじ」「これ本当に公式?」という反応が溢れ、実際に商品を試した人から「本当にスルッと入る、このキャッチコピーは正確だった」という二次的な口コミも生まれました。
エンターテインメントと実使用体験が自然につながった形です。
企業X運用への示唆
「企業の公式がこんなことをしていいのか」という驚き自体が、バズの燃料になります。
今回の動画は「親しみやすい笑い × 商品機能の正確な説明」という二重構造になっており、どちらかが欠けていたら炎上かスルーで終わっていたかもしれません。
小林製薬は2024年の紅麹サプリ問題をきっかけに国内広告を長期自粛。
2025年6月に食品・サプリ以外の商品でテレビCM再開という経緯があります。
この背景を知ると、「また公式が振り切ってきた」という応援ムードも生まれやすい状況だったといえます。
「まじめな企業がネット文化の文法を使う」という組み合わせは、それ自体がニュースになります。
SNS運用を担当する人にとって参考になるのは、ターゲットの文化的文脈をどれだけ深く理解しているか、という一点ではないでしょうか。
さらに深掘りしたい方へ
まとめ
小林製薬の「糸ようじ」公式Xが放った鬼畜MAD風の動画は、ニコニコ文化へのリスペクトと商品説明の融合という巧みな設計で600万ビューを達成しました。
「おかしさの設計」こそが拡散の鍵——企業SNS担当者に刺さる事例です。