SNSより現場を歩け——政治家の投稿が照らしたSNS運用の本質
SNSの投稿数を増やせば、フォロワーが増えれば、いいねが伸びれば——そう信じてスマホを握りしめた経験はありませんか。
私がこの問いを改めて突きつけられたのは、政治の世界から届いた一つの投稿がきっかけでした。
国民民主党の玉木雄一郎代表が2026年5月15日、Xにこんな言葉をシェアしたのです。
「候補者に必要なのは、スマホを見る時間ではなく地域を見る時間だ。
投稿文を悩む時間ではなく有権者の声を聞く時間だ。
いいねを確認する時間ではなく支援者に電話する時間だ。」
これは元公安警察官の前川健太氏がnoteに書いた記事の一節で、玉木氏はその内容に同意する形で引用しました。
政治の話として読んでもいいのですが、私はSNSを仕事にする人間として、胸を衝かれる思いがしました。
「投稿文を悩む時間ではなく相手の声を聞く時間だ」——これ、企業のSNS運用にそのまま当てはまりませんか。
Xで1700いいね超え。
賛否が割れた理由

この投稿は公開直後から反応を集め、1705いいね・約42万インプレッションを記録しました。
これそのとおり。
— 玉木雄一郎(国民民主党) (@tamakiyuichiro) 2026年5月15日
「候補者に必要なのは、スマホを見る時間ではなく地域を見る時間だ。投稿文を悩む時間ではなく有権者の声を聞く時間だ。いいねを確認する時間ではなく支援者に電話する時間だ。」
候補者にSNSをやらせない、という選挙戦略SNSは必要だ。…
国民民主党の支持者を中心に「玉木さんのドブ板活動がすごい」「現場を大切にしてきたからこそ言える言葉」という賛同が広がりました。
一方で批判も相次ぎました。
「スマホ中毒と言われている玉木氏が言うな」「自分が一番スマホに貼りついているのでは」という声です。
皮肉な話ですが、これこそ問題の核心を突いていると思います。
SNSで影響力のある人物が「SNSより現場を」と発信する——その矛盾が、逆に多くの人の関心を引き、議論を生んだのです。
前川氏のnoteで注目を集めた主張の一つが「SNSはふりかけ」という比喩です。
陣営でSNS担当と現場担当を分け、候補者自身の現場活動が全体の40%の投稿比率を占めるべきだという、具体的なオペレーション提案もしていました。
SNSは主食ではなくふりかけ——その割り切り方が、政治関係者の間でも共感を呼んでいます。

企業SNSへの示唆——「現場40%」の意味
この議論を企業のSNS運用に置き換えると、何が見えてくるでしょうか。
SNSで成果を出しているブランドの多くは、オンラインよりも「現場でのリアルな顧客体験」を軸に据えています。
投稿はその延長線上にあるコンテンツであって、SNSそのものが本体ではありません。
よく見られる落とし穴は、「投稿数を増やすこと」が目的になってしまうことです。
週5投稿、毎日ストーリーズ更新……数字の管理に忙殺されるうちに、本来大切な「顧客の声を聞く時間」「商品・サービスをブラッシュアップする時間」が削られていく。
気づいたときには、投稿は増えているのにエンゲージメントは下がっている、という状態になります。
前川氏が選挙陣営に向けて言った「候補者にSNSをやらせない」という逆説的な戦略は、担当者の役割分担の話でもあります。
発信力のある候補者(ブランドの顔)が現場に集中し、SNSの運用はチームに任せる——これは企業でも十分に応用できる考え方です。
マーケティング担当者がコンテンツ作成に追われ、営業や商品開発の現場に足を運べていない、という状況はないでしょうか。
もう一つ印象的だったのが「現場40%の投稿比率」という数値の出し方です。
SNS運用の設計において、「現場から生まれたコンテンツ」をどれだけ比率として確保するか、という視点はあまり語られません。
社内の誰かが顧客と直接やり取りした気づき、スタッフが現場で感じたこと——こうした一次体験に根ざした投稿は、デスクで考えたコンテンツより格段に共感を得やすいです。
「ネットドブ板」という玉木氏の本音
玉木氏はかつて「永田町のYouTuber」と批判されながらもSNSを徹底活用し、「結局はネットドブ板だ」と語っています。
SNSは人と人の接点を広げるツールであって、そのデジタル版のドブ板——現場を大切にする姿勢が根底にあるという意味合いです。
今回の投稿は、その玉木氏が「スマホより地域を」と訴えたことで矛盾と見られ、批判を受けました。
しかし別の読み方もできます。
SNSの達人だからこそ、SNSの限界も誰より理解している——その経験からの言葉として捉えると、重みが違って見えます。
SNS運用に長けた担当者ほど、「投稿だけでは届かない領域がある」ことを知っています。
フォロワーが増えても、いいねが伸びても、商品が売れなければ意味がない。
その感覚を常に手放さないことが、SNS運用者にとって最も大切なことかもしれません。
さらに読みたい方へ
- 政治家のSNS戦略「結局はネットドブ板だ」——玉木雄一郎氏インタビュー(ABEMA TIMES)
- SNSデモクラシー:ネット選挙も”どぶ板”に(沖縄タイムズ)
- 2026年のSNSマーケティングトレンドと実践ポイント(digima)
まとめ
玉木雄一郎氏の「スマホより地域を」という投稿は、政治の話を超えて、SNS全体への問い直しになっています。
SNSはあくまでふりかけ。
主食は現場で積み上げた顧客との信頼関係です。
投稿の量や数字に追われるとき、この言葉を思い出してみてください——「投稿文を悩む時間ではなく、相手の声を聞く時間を」。