自民党がSNS事業者に課徴金を提言——「依存対策規制」の中身と、マーケターへの影響を整理した
SNS運用に関わっていると、「このままでいいんだろうか」と感じる瞬間があります。
アルゴリズムが興味に合った投稿を次々と表示し続ける仕組み——それを使いこなすのが私たちの仕事でもあるわけですが、その同じ仕組みが子どもたちへの「依存」を生み出しているとしたら?
2026年5月28日、自民党のプロジェクトチームがSNS依存対策の提言をまとめました。
事業者にアルゴリズムの見直しを求め、対応が不十分なプラットフォームには政府が課徴金(罰則的な制裁金)を科す制度の導入を検討するよう促す内容です。
SNS運用・マーケティングの業界に直接関わる提言として、内容を押さえておく必要があります。
提言の3本柱——アルゴリズム、年齢確認、課徴金
今回の提言をまとめたのは、自民党の「情報社会においてこども・若者を守るPT(プロジェクトチーム)」です。
大きく3つの柱から構成されています。
第1の柱:アルゴリズム規制
「利用者の興味に沿った内容を表示するアルゴリズムによって、SNS利用や動画視聴が長時間化している」と明記し、事業者に子どもへの影響を考慮した設計変更を要求しています。
念頭に置かれているのは、無限スクロール(コンテンツが自動的に読み込まれ続けるUI設計)やオートプレイ機能の見直しです。
「次の動画」「おすすめ投稿」を自動で流し続ける仕組みそのものが問われています。
第2の柱:年齢確認の厳格化

年齢に応じたコンテンツ制限・利用時間制限の実施を事業者に求めます。
YouTube、Meta(Instagram・Facebook)、X(旧Twitter)を対象に、自民PTは2026年4月にはすでに各社からヒアリングを実施済みです。
神田潤一議員(自民党)は、そのヒアリングの様子をXで共有しています。
「年齢によるコンテンツや利用時間の制限、両親による管理など、各事業者の取り組みとその考え方」を議論したとのことでした。
(8:00-8:40)自民党・情報社会においてこども・若者を守るPT
— 神田潤一(衆議院議員3期目) (@Jun1CanDo) 2026年4月22日
インターネットやSNSを巡る青少年の保護のあり方に関する事業者ヒアリング(YouTube、Meta、Xより)。
年齢によるコンテンツや利用時間の制限、両親による管理など、各事業者の取り組みとその考え方をヒアリングと議論。 pic.twitter.com/XU8mhqD1YL
第3の柱:課徴金制度
政府が各SNS事業者を評価し、対応が不十分と判断された場合に課徴金を科す仕組みの検討を提案しています。
これまでの「お願いベース」の要請から、制裁力を持つ規制への転換を意味します。
提言を踏まえ、2027年の通常国会での法整備を目標としており、来年には具体的な議論が本格化する見込みです。
なぜ今なのか——背景にある深刻なデータ
提言の背景にあるのは、子どもたちのSNS利用実態の変化です。
小中高生の6割が平日に1時間以上SNSを利用しているというデータが示されており、長時間利用といじめ・自殺の増加との関連を懸念した声が党内で高まっていました。
PTではこうしたリスクを、闇バイト・詐欺・性的被害などの「コンタクトリスク」、いじめ・誹謗中傷などの「コンダクトリスク」、有害情報接触の「コンテンツリスク」、アプリへの課金などの「消費者関連リスク」の4つに分類して議論してきました。
(8:00-8:50)自民党情報社会においてこども・若者を守るPT
インターネット利用を巡る青少年の保護のあり方について議論。
闇バイト・詐欺・性的被害(コンタクトリスク)
いじめ・誹謗中傷(コンダクトリスク)
SNS等の有害情報(コンテンツリスク)
アプリへの課金・カジノ等(消費者関連リスク)… pic.twitter.com/0cBNR3hhXf— 神田潤一(衆議院議員3期目) (@Jun1CanDo) 2026年5月13日
日本だけの問題ではありません。
規制の波は世界規模で押し寄せており、EU(欧州連合)では2023年からDSA(デジタルサービス法)が施行され、大手プラットフォームには未成年者保護措置が義務付けられています。
オーストラリアは2024年末に16歳未満のSNS利用を禁止する法律を成立させ、英国でも「子どものオンライン安全法」が施行済みです。
日本はこれらの動きを追う形で、ようやく本格的な法整備に向けた議論が動き出しました。
SNSマーケターが今すぐ考えておくべきこと
今回の提言が法律になるのは早くても2027年以降ですが、マーケターとして今から意識しておくべき変化があります。
ターゲティング精度への影響
アルゴリズムの変更が義務化されると、「興味関心」に基づいたレコメンデーション(おすすめ表示)の精度が変わる可能性があります。
特に若年層をターゲットとした広告施策は、仕様変更の影響を受けやすくなるでしょう。
今のうちから「アルゴリズムに依存しない訴求力」を磨いておくことが重要です。
未成年ユーザーへのリーチ制限
年齢確認が厳格化されると、未成年ユーザーに対するリーチが制限されます。
若年層向けのキャンペーンを展開している場合、プラットフォームをまたいだ代替チャネルの検討も視野に入れておく必要があります。
事業者コスト増大と広告単価への影響
課徴金制度の導入は、SNSプラットフォームの運営コスト増大につながります。
その分が広告単価(CPM:1000回表示あたりの費用、CPC:1クリックあたりの費用)に転嫁される可能性は否定できません。
「規制の動向を追う」のはもはやコンプライアンス担当者だけの仕事ではなく、SNS運用・マーケターが自分ごととして把握しておくべき経営リスクのひとつです。
課徴金の対象はプラットフォーム事業者ですが、その影響は間違いなく広告主や運用担当者にまで波及します。
さらに深掘りしたい方へ
まとめ
自民党が5月28日にまとめたSNS依存対策の提言は、アルゴリズム規制・年齢確認強化・課徴金制度の3本柱で、2027年の法整備を目指すものです。
マーケターにとって「他人事」ではなく、ターゲティングの精度・若年層リーチ・広告単価に直接影響する可能性がある動向として、引き続き注視していく必要があるでしょう。

