「消してスッキリ」をブランドに変えた——チルアウトの逆張り広告キャンペーンがXで話題
ウェブを閲覧していると、ふと広告の×ボタンを探してしまうことがあります。
小さくて見つかりにくい、あるいはどこにあるかわからなくて焦る——そんなちょっとしたイライラ、心当たりはないでしょうか。
日本コカ・コーラのリラクゼーションドリンク「CHILL OUT(チルアウト)」が、そのモヤモヤをそのまま広告のコンセプトにしてしまいました。
2026年6月1日からスタートしたキャンペーンは、「×ボタンが一目でわかる=一瞬で消せるバナー広告」を掲げる異色の施策。
公式が「広告費をかけて消されるための広告を出稿した」と宣言したことで、Xを中心にSNSで一気に話題が広がっています。
「どういうこと?」と気になって調べてみたところ、これが単なるパフォーマンスにとどまらない、きちんと設計されたSNSマーケティングでした。
ライブドアニュースの投稿が9,000超えいいねを集めた背景
ライブドアニュースがこの施策を「もはや清々しい」と紹介するニュースをX上に投稿したところ、9,000を超えるいいねが集まりました。
【どういうこと】チルアウト、広告費をかけて「消されるための広告」を制作https://t.co/HFzff6h7IJ
バナー広告の「×印」が見つからない。そんなモヤモヤに対し、チルアウトが「一瞬で消せる」バナー広告を制作。さらにPR記事でも「ぜひ消してください」と全力でお願い!? <PR> pic.twitter.com/8HsjOwRsn1— ライブドアニュース (@livedoornews) 2026年6月17日
リポストや引用ポストには「粋なアプローチだ」「こういうの好き」「ブランドの好感度が一気に上がった」という反応が多数見られます。
一方で「表示崩れで×ボタンが逆に見えない」という指摘もあり、実際の広告体験にはばらつきがある様子も。
SNSマーケティング・デザインの観点からこのキャンペーンを評したツイートも注目を集めています。
デジタルマーケターの @architectizm は次のようにコメントしました。
エナジードリンク「CHILLOUT」のWEB広告は秒で消せるバナー。
— なんぼー | マーケ×ブランディング (@architectizm) 2026年6月18日
WEB広告の邪悪さは年々加速しており、
画面をカバーするのに消し方もわからないものが多い。
逆手にとって広告だけど消し方を案内するクリエイティブ。
これ、結局は広告に注目するから、アテンションは取れてる。
メタ的アプローチ。 pic.twitter.com/U9Pp6BY1FW
「WEB広告の邪悪さは年々加速しており、消し方もわからないものが多い。
逆手にとって消し方を案内するクリエイティブ」と指摘しており、マーケティング担当者の視点からも評価されていることがわかります。
「広告を消していいと言っている企業」という言及だけで話題になった点は、キャンペーン設計の妙と言えます。
PR記事タイトルが「消された広告の話題記事」としてSNSに流れ、それがまた話題になるという二次拡散の構造が意図的に仕込まれている印象を受けます。
キャンペーンは3層で設計されている
調べてみると、この施策は三段階に設計されていました。
第一層:秒で消せるバナー広告(6月1日〜)
通常のウェブバナー広告として出稿しながら、「×印がひと目でわかるデザイン」を採用。
ユーザーに「クリックしてください」ではなく「消してください」と呼びかけるという、広告の常識を逆手に取った設計です。
PR記事タイトルでも「ぜひ消してください」と明示するなど、コンセプトをメッセージとして一貫させています。

第二層:「バナー広告バスター」ゲーム(6月17〜30日・Coke ON)
公式アプリ「Coke ON(コーク・オン)」で配信されるミニゲームで、画面に次々と出現するバナー広告を15秒以内に10個消せばクリアです。
クリアすると「Coke ONスタンプ」が獲得でき、15個集めるとドリンク1本と交換できます。
「広告を消す快感」をゲーム化することで、ブランドとの接触時間をさらに引き延ばす構造になっています。
第三層:PR記事・SNSによる話題の波及
施策の内容がライブドアニュースやマーケティング専門メディアで「逆張りキャンペーン」として取り上げられ、SNS上での二次拡散が起きています。
広告に使ったお金で「消される体験」を作る逆算発想が、メディアと生活者の両方を動かしています。
リラクゼーションドリンクだからこそ刺さる設計
CHILL OUTはGABA(γ-アミノ酪酸、ストレス緩和に関わるアミノ酸)28mgを配合した機能性表示食品で、一時的なストレスや疲労感の軽減をサポートすることを訴求しています。
バナー広告を消す爽快感と、ストレスから解放されて「チルアウト(くつろぐ・落ち着く)する」感覚が重なる——このダブルミーニングの設計がブランドコンセプトと完全に一致しているのが、このキャンペーンの核心です。
多くのブランドが「見てもらうこと」「クリックしてもらうこと」を広告目標とするなかで、CHILL OUTはその逆をいっています。
ユーザーが広告を消すという行為に「スッキリ感」を重ね、その体験そのものをブランドのイメージと結びつける設計は、「広告フォーマットそのものがメッセージになっている」と言い換えられます。
マーケティング専門メディア「PR EDGE」では、この施策を「商品機能を体験に翻訳した現代マーケティングの好例」として評価しています。
SNS上での共感獲得が難しくなっている時代において、ユーザーの日常的なモヤモヤを起点にしたコンテンツ設計は一つのヒントになりそうです。
さらに深掘りしたい方へ
SocialReport編集部の考察
このキャンペーンが示しているのは、「ユーザーの生活感情を起点にしたSNSコンテンツ設計」の可能性です。
「広告をうっとうしいと感じている」という前提を逆手に取り、その感情をブランド体験に変換するアプローチは、SNS運用担当者にとって見過ごせない発想です。
エンゲージメントを「獲得する」のではなく「共感から生み出す」という設計思想は、どの媒体のSNS運用にも応用できます。
今回のケースでは「広告を消す」という否定的な行為が、ブランドへの好感度形成につながっています。
SocialReportが提供するSNSデータを活用すれば、こうした逆張り施策がどの層にリーチしているかを定量的に検証することも可能です。
まとめ
「消されるための広告」というコンセプトは、従来の広告常識を逆手に取った逆張り戦略です。
CHILL OUTはブランドのリラクゼーションというコンセプトと、広告を消す爽快感を重ね合わせることで、SNSでの自然な話題化に成功しています。
ユーザーのモヤモヤを「共感起点のコンテンツ」に変えるこの発想は、SNS運用担当者が自社の施策に取り入れられるヒントが詰まっているように思います。
