手描きポスターの大学芋詰め放題に18万いいね——広島のスーパーが教えてくれた「AI時代の手仕事」の強さ
150円(税込162円)。
広島のあるスーパーで撮られた一枚の写真には、色鉛筆で丁寧に塗られた「大学芋詰め放題」の文字と、ピンク色のトマトのキャラクターが笑顔で並んでいました。
値段だけを見れば、どこにでもある特売の告知です。
ところがこの一枚が、Xで18万を超えるいいねを集めることになりました。
投稿したのは「亀井割引」さん(@waribiki_hu)。
買い物中に売り場でこのポスターを見つけ、写真に収めてXに投稿したところ、瞬く間に拡散していきました。
大学芋の販促に、なぜかトマトのキャラクターが起用されているミスマッチさも、多くの人の目を引いた要素のひとつだったようです。
色鉛筆一枚が呼んだ「どこの店?」の連鎖
亀井割引さんの投稿をきっかけに、Xでは「これはどこのスーパーだろう」と店舗を特定しようとする動きも起こりました。
実際に、次のようなリプライも多くのいいねを集めています。
広島のスーパーマーケット、ショージかな? pic.twitter.com/Z59KUBOEsk
— 忠之介 (@chunosuke) 2026年7月3日
このリプライだけで2000件超のいいね、21万を超えるインプレッション(投稿が表示された延べ回数)を記録しており、元の投稿だけでなく「どこの店なのか」という周辺情報にまで関心が広がっていたことがうかがえます。
実際にこのポスターが掲示されていたのは、広島県内で複数店舗を展開するスーパーマーケット「ショージ」だったとみられます。
東広島市などに店舗を構える地域密着型のチェーンで、日々の特売情報を手作りのPOP(Point of Purchase:売り場で商品をアピールする販促物)で発信してきた店舗のひとつです。
投稿への反応で目立ったのは、「手書きの購買意欲がすごい」「人間の発想が勝る」といったコメントでした。
イラストレーターや、かつてその売り場を担当していたとみられるスタッフからも「懐かしい」「頑張って描いた記憶がある」といった共感の声が寄せられ、投稿は単なる拡散を超えて、ふだん表に出ない作り手の存在まで可視化する形になりました。

亀井割引さん自身も「AIではない」ことを強調していた
亀井割引さんの投稿を確認すると、このポスターが画像生成AIではなく色鉛筆で一枚一枚手描きされたものである点を、あえて強調していたことがわかります。
こんなもんチャッピーに飛ばせば一発で生成してくれるのに、この時代に色鉛筆なんか使って自筆で描いてんの良すぎるぞー絶対行くからな pic.twitter.com/zjfJVFKiDD
— 亀井割引 (@waribiki_hu) 2026年7月2日
この投稿でも数百万規模の表示回数を記録しており、単なる「かわいいポスター」の紹介にとどまらず、「AIではなく人の手で描かれている」という事実そのものが拡散の原動力になっていたと考えられます。
なぜ「手描き」がここまで刺さったのか
近年、SNS上のPOPや告知画像は、画像生成AIを使って短時間で仕上げられるケースも増えています。
「手書き風」を模したAIイラストを簡単に作れるツールも各社から次々とリリースされており、パッと見ただけでは人の手によるものか判別しにくい画像も珍しくありません。

そうした状況の中で、ショージのポスターは色鉛筆特有の塗りムラや、トマトのキャラクターのゆるい表情など、「本物の手描きである」ことが自然に伝わる情報を備えていました。
効率化が進むほど、あえて時間をかけた表現の価値が相対的に高まる——そんな逆説が、今回の反響の背景にはありそうです。
地域のスーパーが日常的に作っている売り場のPOPが、全国区の話題に転じたのも、この「非効率さ」への評価があってこそだといえるでしょう。
もうひとつ見逃せないのが、価格の親しみやすさです。
150円(税込162円)という金額は、大学芋という食材の身近さとも相まって、誰にとっても想像しやすい買い物風景を思い浮かべさせます。
高級な商品や派手な演出ではなく、日常の延長線上にある小さな出来事だったからこそ、多くの人が「自分の近所にもありそう」と共感し、気軽にリポストできたのではないでしょうか。
バズる投稿というと突飛な内容を思い浮かべがちですが、今回のケースはむしろその逆で、誰もが知っている日常の一場面に、ちょっとした発見が添えられていたことが拡散の後押しになったといえそうです。
さらに深掘りしたい方へ
店舗の詳細な特売情報は、ショージ 志和店のチラシ情報(トクバイ)からも確認できます。
SocialReport編集部の考察
今回の事例が示すのは、企業アカウントやローカルビジネスにとって「作り込みすぎない情報」がむしろ拡散の起点になり得るということです。
SocialReportがこれまで見てきたバズ投稿の多くは、公式アカウントが意図して発信したものではなく、来店客など第三者が偶然見つけて拡散させた「発見型」の投稿でした。
今回もまさにその典型で、店舗側は宣伝目的でSNSに投稿したわけではなく、単に売り場のPOPとして掲示していただけです。
SNS運用担当者への示唆があるとすれば、フォロワー数やインプレッションを追う前に、現場に眠っている「人の手が加わった痕跡」こそが最も再現性の高いコンテンツ資産になり得るという点でしょう。
無理にバズを狙うより、日常業務の中にある温度感をそのまま可視化する運用のほうが、結果的にリーチを伸ばすことがあります。
まとめ
150円の大学芋詰め放題を知らせるための、ごく普通の販促ポスター。
それが色鉛筆一色で仕上げられていたというだけで、18万人以上の心を動かしました。
効率化が当たり前になった今だからこそ、こうした小さな手仕事に多くの人が惹きつけられているのではないでしょうか。


