藁が尽きたスーパー、500万再生のネジチョコ——いまSNSでバズるのは「地方の実直さ」でした【編集部まとめ】
藁が全部なくなりました——そんな在庫切れの報告に、4万5千件を超える表示が集まりました。
投稿したのは福岡のスーパー「ダイキョー」です。
同じ週には、北九州の土産店が公開した48秒の動画が公開2日で500万回再生され、東大阪の町工場が載せた「ただの写真」に10時間で2万7千件のいいねがつきました。
この1ヶ月にShiritomo SNSで公開した記事を並べてみると、宣伝のつもりではなかった投稿ばかりが大きな反響を呼んでいるという共通項が浮かび上がってきました。
SNS運用に関わる方であれば、明日の投稿づくりのヒントになるはずです。
先に結論をまとめると:
– 藁不足の悲鳴、廃材つまようじ、手描きポスター——反響を集めた7つの投稿はどれも「宣伝ではなく実情の共有」だった
– 中小事業者同士が互いの投稿を引用し合う「国産バズ」の連鎖も起きていた(つまようじ屋からマッチ工場への引用が代表例)
– 明日からできるのは、キャンペーン設計よりも「困りごと」「裏側」「日常」をそのまま見せる投稿の設計
いま、地方の中小企業に何が起きているのか
この1ヶ月、Shiritomo SNSが取り上げた記事のうち、大きな反響を集めたのは有名タレントの起用でも大型キャンペーンでもありませんでした。
目立ったのは、地方のスーパーや町工場、老舗メーカーが、宣伝の体裁すら整えないまま投稿した「日常の一コマ」です。
藁が尽きたという悲鳴、廃棄予定だった棒、手描きの特売ポスター——共通しているのは、担当者が「バズらせよう」と意気込んで作った企画ではなく、困りごとや裏側をそのまま見せただけの投稿だったという点です。
中には、投稿同士が連鎖する動きも見られました。
大阪・河内長野市のつまようじメーカー菊水産業が投稿した製造工程の動画を見た姫路の老舗マッチメーカー・日東社が、「国産マッチでもバズりたい」と引用ポストしたところ、さらに他の企業もこの構図を真似ていきました。
単発のバズではなく、複数の中小事業者が同じ型を模倣し合うことで拡散が続いたのです。
ここからは、この1ヶ月に見つかった7つの事例を順に見ていきます。
この1ヶ月、地方の実直な投稿がバズった7つの舞台
1. 藁を使い切ったら、まさかの「藁ください」投稿
福岡県春日市のスーパー「ダイキョー」が7月13日に投稿したのは、新商品の告知ではなく、名物のカツオの藁焼きに使う藁を切らしてしまったという在庫切れの報告でした。
この投稿には4万5千件を超える表示と1,687件のいいねが集まり、「藁を沢山お持ちの方、どうかダイキョーさんに協力してあげて下さい」と拡散に協力する第三者まで現れました。
宣伝色のない「困りごとの共有」が、業種を超えた協力者を巻き込んだのがこの事例の面白さです。
ダイキョーは惣菜・お弁当のクオリティで13年連続受賞歴を持つ地域の名店で、こだわりの商品ほど原材料調達が繊細になるという裏側も、投稿を通じて初めて可視化されました。
2. 「ただの台車」の写真に、店員から感謝の声が殺到
東大阪の町工場・松田産業が投稿したのは、自社製造の買い物かご置き台車を写した1枚の写真だけでした。
それでも10時間で2万7千件を超えるいいねが集まり、スーパー店員や買い物客から「頑丈で壊れない」「いつもお世話になってる」という声が次々に寄せられました。
前の事例と同じく、キャンペーンでも新商品発表でもありません。
投稿者の「工場の嫁」さんは専任のマーケターではなく、家族経営の担当者です。
記事内では、こうした流れが「国産バズ」と呼ばれる一種のトレンドの一環だと紹介されており、次に紹介するマッチ工場の事例にもつながっていきます。
3. 捨てるはずの棒が、鳥のおもちゃになった
大阪・河内長野市で60年以上つまようじを作り続ける菊水産業は、機械の都合で不揃いになり廃棄予定だった白樺の棒を「工作に使えませんか」とXに投稿しました。
9,500件を超えるいいねとともに、鳥のおもちゃや自由研究キットなど、思いもよらない用途の提案が寄せられています。
この会社は2020年にも、廃材を「非接触棒」として商品化した実績があり、「廃材」「制約」「被災」といったマイナスの出来事をそのまま発信することで、新しいアイデアや支援を集める構造を何年も繰り返してきました。
今回の投稿も、その延長線上にある出来事でした。
4. 隣町のつまようじ屋を引用したら、マッチ工場もバズった
兵庫県姫路市の老舗マッチメーカー・日東社は、菊水産業の製造工程動画を引用ポストする形で、自社のマッチ製造動画を「国産マッチでもバズりたい。
バズらんかなぁ。」というコメントとともに投稿しました。
結果は2万9千件のいいね、120万回のインプレッションです。
さらに別の企業が同じ構図を真似て動画を引用し、「うちもバズりたい」という連鎖が業種を超えて広がりました。
国内で一貫生産を行うマッチメーカーは全国にわずか2社しか残っておらず、伝統産業ならではの厳しい背景も、この拡散を通じて多くの人に知られることになりました。
5. サンドイッチを「締結」したら、エンジニアまで乱入してきた
北九州・門司港レトロの土産店「にたはら」が公開した48秒の動画は、看板商品「ネジチョコ」のボルト型・ナット型チョコレートでバナナサンドイッチを固定するという内容でした。
公開からわずか2日で500万回再生、5万件のいいねを記録し、「ワッシャーも欲しい」「規定トルクは何N・mですか」といった、菓子とは畑違いのエンジニアからのコメントまで集まりました。
商品が持つ機能を使い切った1シーンを見せるだけで、単なる土産物紹介が実演レビューに変わったのが、この事例の核心です。
6. 「AIじゃない」の一言が、色鉛筆ポスターを全国区にした
広島のスーパー「ショージ」の店頭で撮影された、大学芋詰め放題を知らせる手描きポスターの写真に、18万件を超えるいいねが集まりました。
投稿者は「こんなもんチャッピー(ChatGPT)に飛ばせば一発で生成してくれるのに、この時代に色鉛筆なんか使って」と、画像生成AIではなく人の手で描かれた点をあえて強調しています。
効率化が進むほど、時間をかけた表現の価値が相対的に高まる——そんな逆説が、この投稿の反響を後押ししました。
150円という価格の身近さも、多くの人が「自分の近所にもありそう」と共感できた理由の一つです。
7. 「創業記念日ではありません」——素の一言が5500人を集めた
大分県別府市・鉄輪温泉の家族経営宿「かどや旅館」は、「風船が飛びました🎈」という一文に続けて「中の人の誕生日で、創業記念日ではありません」とわざわざ断りを入れ、フォロワーが5500人を超えたことを報告しました。
宣伝でも予約の呼びかけでもない、朝の挨拶のような投稿です。
インプレッションは5,908件と決して大きくありませんが、いいね・返信・リポストの合計は表示回数の約10%に達しており、一般的な投稿の反応率としてはかなり高い部類に入ります。
ここまで見てきた6つの事例と同じく、マーケティング色を消した「素の発信」ほど、濃い反応を呼んでいることがうかがえます。
7個の事例を1枚にまとめると
| 事例 | 数字 | 効いたもの |
|---|---|---|
| ダイキョー(藁焼きカツオ) | 4.5万表示・1,687いいね | 困りごとの正直な共有 |
| 松田産業(買い物かご置き台) | 10時間で2.7万いいね | 使い手からの具体的な感謝の連鎖 |
| 菊水産業(つまようじ廃材) | 9,500いいね | 廃材を「問いかけ」に変えた投稿 |
| 日東社(マッチ製造動画) | 120万表示・2.9万いいね | 同業種を巻き込む引用リレー |
| にたはら(ネジチョコ動画) | 2日で500万再生・5万いいね | 商品機能を使い切った1シーン |
| ショージ(手描きポスター) | 18万いいね | 「AIでない」ことの明示 |
| かどや旅館(風船投稿) | 505いいね・反応率約10% | 宣伝色を消した一貫した語り口 |
Shiritomo編集部の考察:明日からやることは3つ
7つの事例を並べて見えてくるのは、企業規模も業種もバラバラなのに、拡散した投稿はすべて「キャンペーンの体裁を取っていない」という一点で共通していたことです。
しかも松田産業の買い物かご置き台が「国産バズ」というトレンドの一環と紹介されていたように、こうした投稿は単発の偶然ではなく、繰り返し観測されている現象だと考えられます。
SNS担当者が明日からできることは3つあります。
ひとつは、新商品告知の合間に「困りごと」や「製造の裏側」をそのまま見せる投稿を混ぜること。
ふたつめは、フォロワーからの反応(リプライ・引用)を拾い上げ、会話として続ける設計を意識すること。
みっつめは、AIで簡単に作れる時代だからこそ、手作業や手描きであることをあえて明示することです。
派手な企画よりも、飾らなさそのものが武器になる時代に入っているのかもしれません。
まとめ
藁の在庫切れも、廃材のつまようじも、素の誕生日報告も、狙って作られたバズではありませんでした。
宣伝を忘れた投稿ほど遠くまで届く——この1ヶ月の7つの事例は、そんな逆説を教えてくれています。
さらに深掘りしたい方へ
この1ヶ月はほかにも、プラットフォームの仕様変更や詐欺の急増など、SNS担当者が押さえておきたい動きがありました。






