SNS運用Tips 読了 4 分

不揃いな棒が9,500いいね──爪楊枝屋の「廃材」が工作材として拡散した理由

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年7月10日 更新
不揃いな棒が9,500いいね──爪楊枝屋の「廃材」が工作材として拡散した理由

長さはバラバラ、先端も尖っていない。
ただの白樺の棒——本来なら爪楊枝にすらなれなかったはずの端材が、X上で9,500件を超える「いいね」を集めました。
投稿したのは、大阪・河内長野市で60年以上つまようじを作り続ける菊水産業。
「工作に使えませんか」という一言に、鳥のおもちゃ、夏休みの自由研究キット、非接触棒まで、思いもよらないアイデアが次々と寄せられています。

つまようじ屋が「捨てるはずだったもの」をSNSに投稿する。
それだけの出来事が、なぜここまで広がったのでしょうか。
背景を調べてみると、この会社が何年も前からSNSを使って「制約を強みに変える」ことを繰り返してきた歴史が見えてきました。

Xで広がった「捨てるはずだった棒」への反応

菊水産業は北海道産の白樺材からつまようじを作っていますが、機械の都合で長さがまちまちになったり、先端が尖らなかったりする棒がどうしても出てしまいます。
廃棄予定だったこの棒を、同社は「工作に使えませんか」とXに投稿しました。

薬剤を使わない天然素材で頑丈という特徴もあり、リプライには「インコのおもちゃに良さそう」「自由研究の材料に欲しい」といった声が続々と寄せられました。
中でも四代目社長の末延秋恵さんが反応したのが、鳥のおもちゃとして使いたいというコメント。
「聞きたかった!」というコメントに、想定していなかった使い道が見つかった喜びがにじみます

なぜ菊水産業のSNS投稿は毎回反響を呼ぶのか

実はこの「廃材を投稿したら話題になる」というパターン、菊水産業にとっては今回が初めてではありません。

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大初期、末延さんは中国・武漢でエレベーターのボタンを爪楊枝で押している映像をXで見かけ、「つまようじ屋として何かできないか」と考えます。
そこで目をつけたのが、機械に通らず廃棄予定だった白樺材の棒でした。
試作品を友人に見せたところ好感触を得て、わずか1週間ほどでECサイトを整備し「非接触棒」として発売。
直後から問い合わせが殺到し、J-Net21の取材によれば発売から短期間で700件を超える注文、3,500個の販売につながったといいます。

さらに2021年10月には、隣接する農地の野焼きが延焼し、事務所・工房・倉庫が全焼するという被害に遭いました。
四代目社長に就任してわずか1カ月後の出来事でしたが、CAMPFIREでのクラウドファンディングには目標金額の3倍を超える支援が集まり、会社は再建を果たしています。
この間もSNSでの発信は途切れず、火災の報告には他企業の公式アカウントからも見舞いの声が相次ぎました。

「廃材」「制約」「被災」——本来ならマイナスに見える出来事のたびに、菊水産業はSNSでそのままの姿を発信し、そこに新しいアイデアや支援が集まる構造を作ってきました
今回の工作材投稿も、この延長線上にある出来事だと考えると納得できます。

さらに深掘りしたい方へ

ネジチョコでサンドイッチ固定、公開2日で500万再生──北九州の小さな土産店がバズった理由ネジチョコでサンドイッチ固定、公開2日で500万再生──北九州の小さな土産店がバズった理由48秒の動画に、500万回の再生と5万件の「いいね」。 派手な演出も有名人も出てきません。

菊水産業の非接触棒開発の経緯はJ-Net21の特集記事、火災からの再建の詳細はCAMPFIREのプロジェクトページで読むことができます。

Shiritomo編集部の考察

今回の投稿が示しているのは、「完成品」だけでなく「作る過程で生まれる余りもの」も立派なコンテンツになるという点です。
多くの企業アカウントは新商品や新サービスの告知に偏りがちです。
菊水産業のケースは製造工程の副産物という、普段は見せない部分を発信したことでかえって共感と実用アイデアの両方を引き出しました。

SNS担当者にとって示唆的なのは、この投稿が単発の思いつきではなく、2020年の非接触棒開発から一貫した「読者に問いかけて一緒に用途を探す」姿勢の延長にあることです。
フォロワーに答えを求める投稿は、企業からの一方的な発信よりもリプライやシェアが伸びやすく、結果的にアルゴリズム上の露出も増えやすい傾向があります。
中小メーカーが大きな広告予算をかけずに新しい販路のヒントを得る手法として、他業種でも応用できる考え方ではないでしょうか。

まとめ

爪楊枝になれなかった棒が9,500件超の「いいね」を集めた背景には、廃材や制約をそのまま発信し、フォロワーと一緒に使い道を探ってきた菊水産業の積み重ねがありました。
次にどんな棒の使い道が見つかるのか、今後の展開にも注目です。