「ラストは心を震わせてくれました」――『キリコのタクト〜YELL〜』を厚木市が丸ごと後押しした理由
「ラストは心を震わせてくれました」。
試写会に参加した観客がそう投稿したのは、いきものがかりの名曲「YELL」から生まれた映画『キリコのタクト〜YELL〜』です。
9月23日にオンライン試写会が開かれ、Xには合唱シーンへの感想が相次いで投稿されました。
10月2日の全国公開を前に、なぜこの作品がここまで注目を集めているのか気になって調べてみました。
SNSでの反応を追うだけでなく、映画自体の成り立ちにも珍しい背景があります。
先に結論をまとめると:
– いきものがかり「YELL」に着想を得た完全新作で、神奈川県厚木市の市制70周年記念事業として全編がオールロケで撮影された
– 試写会の感想は合唱シーンと鈴木京香の演技を評価する声が中心だが、「エピソードを詰め込みすぎ」という指摘も出ている
– 主人公は失踪した恩師の謎を追う音楽雑誌記者で、監督・脚本・原作小説はすべて雑賀俊朗氏が手がけた
Xで広がった試写会の感想
映画『キリコのタクト〜YELL〜』は、消息を絶った伝説の音楽教師・原田貴理子(通称キリコ、鈴木京香)の過去を、彼女に教わった元教え子たちが追っていくヒューマンドラマです。
試写会に参加した観客のひとりは、こんな感想を投稿しています。
#キリコのタクト
— もろ太 (@morota88_2) 2026年9月23日
ラストは心を震わせてくれました
でも色々な事を盛り込みすぎて1つ1つのエピソードが希薄になってしまってる気が…
鈴木京香さんの演技そして若手の4人の俳優さん達の歌声はとても良かったですね
若い子たちにYELLが届けば良いなぁ@FansVoiceJP 試写会にて pic.twitter.com/apzDuTsIhj
合唱シーンで涙腺が緩んだという声はこの投稿だけではありません。
ただ、感想を追っていくと、単なる称賛だけでは終わらない厚みのある反応が見えてきました。
なぜ厚木市がまるごと関わっているのか?
まず気になったのは、いち映画に対して「厚木市」の名前が何度も出てくることです。
調べてみると、この作品は神奈川県厚木市の市制70周年記念事業として制作された記念映画で、劇中の舞台となるシーンはすべて厚木市内でロケが行われていました。
いきものがかりの「YELL」自体が厚木市に縁のある楽曲で、そのミュージックビデオも同市で撮影されており、映画はその土地のつながりをそのまま引き継いだ形になります。
自治体が丸ごと1本の劇場映画を後押しする例は珍しく、単なるPR動画とは規模も座組みも異なります。
試写会の投稿でも、ロケ地の風景に触れたものがありました。
『#キリコのタクト』
— みっちょば (@myu191910) 2026年9月23日
今、いきものがかり合唱曲『YELL』が、あらゆる世代の応援歌となり賛美歌となる。鈴木京香演じる伝説の音楽教師キリコがタクトを振るたびに、明るい場所へと導かれる自分がいた。圧巻は厚木市の七沢森林公園で響き合う合唱シーン。人を愛する力に共鳴し感涙した。@FansVoiceJp試写 pic.twitter.com/S3kAeriuHv
圧巻とされているのは、厚木市内の森林公園で生徒たちが合唱するシーンです。
音楽教師と教え子たちの物語を、音楽ゆかりの土地で実際に撮影したことが、感想の熱量につながっているように見えます。
原作はどんな話なのか?
物語の主人公は、音楽雑誌の記者・北村翔(藤原大祐)です。
彼は「伝説の音楽教師」を特集する企画で、かつて全国合唱コンクールを何度も制覇した原田貴理子を取材しようとしますが、貴理子は教職を辞めたあと消息を絶っていました。
実は貴理子は北村自身のかつての恩師でもあり、当時の合唱仲間とともに記憶をたどりながら、彼女が姿を消した理由に迫っていく構成です。
監督・脚本に加えて原作小説も雑賀俊朗氏本人が手がけており、8月には厚木市内の書店でサイン会も開かれています。
鈴木京香が演じる貴理子のほか、藤原大祐、小泉今日子ら世代の異なるキャストが顔をそろえている点も、合唱を軸にした群像劇らしい布陣です。
試写会の評価は手放しの称賛だけではない
好意的な感想が多い一方で、詰め込み過ぎを指摘する声も見つかりました。
『#キリコのタクト 〜YELL〜』
— いなみ (@waku2trailers) 2026年9月24日
大好きないきものがかりの曲を基に映画が作られた事にまず感謝。様々な生徒の葛藤を描くなか色々と要素を詰め込み過ぎな気もするけど、音楽教師演じる鈴木京香の指揮に呼応する若手俳優陣の素晴らしい演技と合唱シーンが印象的だった。
10/2公開 @FansVoiceJP 試写にて pic.twitter.com/T4l4wnw6o6
生徒それぞれの事情を描こうとした結果、1つひとつのエピソードが薄くなったと感じた観客もいるようです。
ここは公開後の評価が分かれるかもしれないポイントとして留めておきたいところです。
Shiritomo MOVIE編集部の考察
この作品が興味深いのは、原作・脚本・監督を1人が兼任し、さらに自治体の記念事業として製作費や撮影協力を得ている点です。
地方自治体が絡む「ご当地映画」は観光PRが主目的になりがちですが、本作は「YELL」という既存の楽曲の物語性を軸に据えたことで、単なる観光映画にとどまらない筋立てを持てています。
試写会の感想を見る限り、合唱という体験を伴うクライマックスが強い没入感を生んでいる一方、複数の生徒のエピソードを並行させる構成は諸刃の剣です。
公開後にどちらの声が優勢になるかで、この座組みが今後の「ご当地映画」の作り方に影響するかどうかが決まりそうです。
まとめ
『キリコのタクト〜YELL〜』は、いきものがかりの楽曲と厚木市の街づくりが結びついた記念映画として、10月2日に全国公開されます。
試写会の感想からは合唱シーンへの高い評価とともに、構成面での率直な指摘も見えてきました。