マーケティング・営業・コマースが一つになる——MarkeZine20周年の「統合」が示すこと
マーケティング担当者なら一度はお世話になったことがあるはずの「MarkeZine(マーケジン)」が、2026年5月22日に開設20周年を迎えました。
そしてこの節目に、同じ翔泳社が運営する「SalesZine(セールスジン)」と「ECzine(ECジン)」をMarkeZineのドメインに統合するという大きな発表がありました。
「メディアが統合する」というニュースを聞いて、最初は正直「読者としてはどう変わるんだろう」と思ったんです。
でも調べてみると、これは単なる運営の効率化ではなく、現代のビジネス環境そのものの変化を映した動きだということが見えてきました。
マーケ・営業・コマースの境界線が消えた理由
翔泳社のプレスリリースによると、MarkeZineが2006年に創設された当初、デジタル広告はまだ黎明期でした。
当時のマーケティングはシンプルで、「広告を打って認知を作る」というフローが多くの企業の主流でした。
ところが20年経った今、話は全然違います。
AI普及やRevOps(Revenue Operations:マーケティング・営業・カスタマーサクセスを横断して収益プロセスを一体管理する考え方)の広がりによって、3つの領域の境界線が急速に曖昧になってきているというのです。
確かにそうですよね。
たとえばマーケティングオートメーションを使えば、リード獲得から商談化まで自動的につながります。
ECサイトでは購買データがマーケ施策にフィードバックされ、営業チームはデータドリブンで顧客アプローチを変えていく。
もはや「マーケはマーケ」「営業は営業」「ECはEC」と縦割りで情報収集できる時代ではないのかもしれません。
3メディアはどう変わる?
統合のポイントをまとめると、大きく3つです。
まず、ECzineが「CommerceZine(コマースジン)」にリブランディングされます。
名前が示す通り、EC(Electronic Commerce)に限定せず、リアル店舗も含めたコマース領域全体をカバーする専門メディアへと生まれ変わります。
「ECとリアル店舗の境界線もなくなってきている」という現状を踏まえた変化です。
次に、SalesZineはMarkeZineブランドに合わせてロゴを変更し、MarkeZineドメイン内でサイトが一体化されます。
とはいえ、独立した専門メディアとしての性格は残ります。
そして、過去記事はすべてMarkeZine内に引き継がれ、3領域を横断した検索が可能になるそうです。
「あの記事どこだっけ」という悩みが減るのは素直にうれしい変化です。
編集体制はどうなるか
新体制として、MarkeZine編集長にはSalesZine編集長も兼任する宮田華江(みやた はなえ)氏が就任し、ビジネス編集統括として安成蓉子(やすなり ようこ)氏が全体を支えます。
CommerceZineの編集長は道上飛翔(みちかみ つばさ)氏が務めます。
宮田氏は2016年に翔泳社入社後、SalesZineの立ち上げに携わり、2019年には同メディアの編集長に就任。
2026年4月からMarkeZineの編集長を兼任するに至りました。
「読者の仕事に資する羅針盤を目指す」というメッセージが公式発表に記されています。
編集部員が3領域を横断し、シナジーの強いコンテンツを発信していく体制になるとのことで、単にサイトをまとめるだけでなく、取材・執筆レベルで領域横断が起きることを期待させる内容です。
マーケティング担当者にとって何が変わるか
正直なところ、「6月中旬以降に統合完了」という段階であり、実際に使ってみないとわからない部分もあります。
でも、現場レベルで考えると、いくつかポイントがあります。
一つは情報収集の導線が変わること。
これまでMarkeZine・SalesZine・ECzineを別々に巡回していた方は、MarkeZineを起点に3領域の情報を取れるようになります。
タブ管理が楽になる半面、情報量が増えてどこに注目すべきか悩む場面も出てくるかもしれません。
もう一つはコンテンツのシナジーです。
たとえば「マーケ施策がどう商談につながったか」「ECのCRM(顧客関係管理)がリピート率にどう影響したか」という横断的な事例記事が増えることが期待できます。
従来のように「マーケ視点の記事」「営業視点の記事」と分断された状態より、実務に近い情報が出てくる可能性があります。
20周年特集は6月下旬ごろから各分野の識者を交えて展開される予定で、2026年12月には「Retail & Commerce Standard 2026」という小売・コマース領域の新イベントも計画されています。
メディアの「縦割り解体」が業界の変化を先取りしている
個人的に面白いと思うのは、このメディア統合自体が、現在のビジネス現場で起きていることの縮図だという点です。
RevOpsという概念が日本でも広がりつつある中、営業・マーケ・CSをバラバラに動かしているとデータが分断され、顧客体験が途切れるという問題は多くの企業が実感しています。
MarkeZine・SalesZine・ECzineが別々に存在していたことも、ある意味で「メディアの縦割り」でした。
それを統合するというのは、まさに読者が現場でやろうとしていることと同じ方向性です。
Gartnerは以前「2026年までに高成長B2B企業の75%がRevOpsモデルを採用する」と予測しています。
一方で「60%の企業が機能するエンドツーエンドの収益プロセスを構築できない」という厳しい見立てもあります。
メディアが変わっても、現場での実践は難しい。
でもだからこそ、横断的な知見を届けるメディアの存在意義が高まっているとも言えるでしょう。
2006年から20年、ガラケーの時代から今日まで歩んできたMarkeZineが次の20年をどう描くか。
統合の成果は、コンテンツの質で問われることになります。
さらに深掘りしたい方へ
- MarkeZine20周年・SalesZine・ECzine統合に関するプレスリリース(翔泳社)
- ECzineはCommerceZineへ刷新 MarkeZineへ合流しビジネス横断メディアへ(ECzine)
- RevOps(レベニューオペレーションズ)入門——営業・マーケ・CSを統合して収益を最大化する方法
まとめ
MarkeZineの20周年統合は、マーケティング・営業・コマースという3領域の境界線が実務レベルで溶けている現代を象徴する出来事です。
横断的な知見がワンストップで届くようになることで、現場の担当者にとって情報収集の選択肢が広がります。
新体制がどんなコンテンツを生み出していくか、しばらく注目していきたいと思います。