「テスト」の一言が6分で100万回表示——TBS報道特集が暴いた「SNS農場」ビジネスの全貌

shiritomo | AI・SNS・話題のテック情報メディア by Hashout編集部 @shiritomoAI_jp 2026年6月28日 更新
「テスト」の一言が6分で100万回表示——TBS報道特集が暴いた「SNS農場」ビジネスの全貌

Xで「いいね」が多い投稿は、本当に多くの人が共感した結果なのでしょうか。

先週末、TBSの「報道特集」が衝撃的な実験を公開しました。
新規Xアカウントに「テスト」とだけ投稿し、あるサービスに依頼したところ——なんと6分で100万インプレッション(表示回数)に達してしまったのです。
見た目の数字は本物そのもの。
でも中身はすべて人工的に作られたもの。
これが「SNS農場(スマホ農場)」と呼ばれるビジネスの実態です。

SNS担当者として日々エンゲージメントの数字を追っている方にとって、ちょっと不穏なニュースかもしれません。
気になって深掘りしてみました。

そもそも「スマホ農場」って何?

スマホ農場とは、大量のスマートフォンやSIMカードを並べ、SNSの数字を人為的に水増しする拠点のことです。
制御PCから数百〜数千台のアカウントを一括管理し、「いいね」「フォロワー」「再生回数」「インプレッション」などを自動操作します。

国内では、茨城県つくば市周辺の建物3棟に1,000台超のスマホや基板が集められていた事例が報じられています。
電波を遮断するシールドルームに60ものラックが並ぶ、まるでデータセンターのような光景です。
運用グループは「1分で約8,000回の表示回数を増やせる」と実演してみせました。

今回のTBS報道特集が取材したのは、なんと18歳の大学生が運営する農場でした。
「50万インプレッションやるつもりだったけど、余裕があれば増やすかも」と語り、実際には6分以内に100万回を超えています。

規模は「年間数千万〜数億件の注文」

このビジネスの規模が、改めて驚かせます。

報道によれば、農場への年間注文件数は「数千万〜数億単位」にのぼり、推定の年間利益は約45億円規模とも指摘されています。
これはもはや個人の副業レベルではありません。

さらに深刻なのが、選挙への悪用疑惑です。
TBS取材では、2026年の衆院選に際して「候補者の陣営から複数の依頼があった」ことが明かされました。
「この投稿が多くの人に高く評価されているように見せてほしい」という内容だったとのこと。
農場側はAIを使って選挙関連とみられる依頼を弾く対策をしているといいますが、完全に防ぎきれるかは不明です。
国立情報学研究所の佐藤一郎教授は「私たちが目にしている情報空間はつくられている。
SNS以外の信頼のおけるメディアで情報の真偽を確かめる必要がある」と警鐘を鳴らしています。

ツイートへの反響も大きく、TBS公式アカウントへの投稿は9千件超の「いいね」を集めました。

元世田谷区長でジャーナリストの保坂展人氏も「SNSは金で買われ、多数のフォロワーがいるインフルエンサーを偽装することもできる。
世論も、政党支持も、こうして作られるのかもしれない」と投稿し、多くの共感を集めました。

SNS担当者が身につけるべき「見分け方」

「では、本物のバズと偽物のバズをどうやって見分ければいいの?」と思われた方もいるでしょう。

今回の報道に対して、X上でとても実践的な視点が投稿されていました。

いいねばかり多くてリポストが極端に少ない投稿は、農場使用の疑いがあるのでは?」という指摘です。
確かに、本物のバズは「共感して広めたい」という心理が働くため、いいねとリポストはある程度比例します。
一方、農場で機械的に生成されたいいねは拡散行動を伴わないため、比率が歪みます。

ほかにも以下のような違和感がシグナルになります。

  • コメント欄が似たような定型文ばかりで、内容に踏み込んだ言及がない
  • フォロワー数が多いのにエンゲージメント率(いいね÷フォロワー数)が著しく低い
  • プロフィール画像がなく、アカウント作成日が新しいアカウントからの反応が集中している

インフルエンサーへのPR施策や口コミマーケティングを行っている方は、こうしたシグナルに注意を払う価値があります。

さらに深掘りしたい方へ

日本に「スマホ農場」があった——朝日新聞の直撃取材、1分で表示回数8千件の衝撃日本に「スマホ農場」があった——朝日新聞の直撃取材、1分で表示回数8千件の衝撃SNSで表示回数を水増しする「スマホ農場」の実態を朝日新聞が直撃取材。 1分で8千件もの表示回数を操作できる実態が明らかに。

SocialReport編集部の考察

今回の報道が突きつけるのは、「数字を信じるな」という皮肉な教訓です。

SNSマーケターは普段、インプレッション数・いいね数・フォロワー数をKPI(重要指標)として追います。
でも、それらの数字の一部が「買われた」ものだとしたら——意思決定の前提そのものが崩れかねません。

SocialReportの視点から見ると、ここで重要になるのが「エンゲージメントの質」の分析です。
単純な数字ではなく、「どんなユーザーが」「どのタイミングで」「どんな行動をとったか」まで見ることで、本物の反応と農場由来のノイズを区別しやすくなります。

たとえば、インフルエンサーとのコラボ施策を評価する際には、「リポスト率」「コメント率」「クリック率」を組み合わせて判断することをお勧めします。
いいね単体の数字だけで費用対効果を測るのは危険です。

また、自社公式アカウントのいいねが急増したとき、それが本物のバズなのかを確認するために、以下を組み合わせて確認する習慣をつけるとよいでしょう。
インプレッション急増と同時にリポストも増えているか。
急増したいいねを送ってきたアカウントのプロフィールに不自然な点はないか。
類似の急増パターンが他の無関係なアカウントでも同時に起きていないか。

SNS農場の問題は、選挙だけの話ではありません。
ブランドのSNS施策の費用対効果を評価するすべての担当者に、直接関係する問題
です。
数字を「盲信しない」習慣こそが、これからのSNSマーケターに求められる基本スキルになっていくでしょう。

まとめ

「テスト」の一言が6分で100万回表示——このTBS報道特集の実験は、私たちが普段目にしているSNSの数字がいかに人為的に操作されうるかを示しています。
SNS担当者として今すぐできることは、いいね単体だけでなく「いいね+リポスト+コメントの比率」で投稿の本物度を評価する習慣をつけることでしょう。