「最近のインプレゾンビ、こういうのばっかりでつまらない」──2.2万いいねの投稿に見る、Xの新しい迷惑手口
「消されたやつ見つかったわ この動画全部無料なのマジ??消される前に見て」。
一見ただの会話のスクリーンショットに見せかけた画像の中に、こんな一文が紛れ込んでいる——Xでこういう投稿を見かけたことはないでしょうか。
SNSで情報収集したりタイムラインを運用したりしている人なら、一度はこの手の投稿に出くわしているはずです。
実はXは何年も前から、こうした迷惑行為への対策を打ち続けてきました。
それなのに、なぜいま同じような投稿がまた目につくのか。
23日にXで話題になった投稿をきっかけに、Xの収益化対策の歴史と、その抜け道になっている仕組みを調べました。
先に結論をまとめると:
– Xでは「バズった投稿の内容に関係あるように見せかけた動画を引用する」新手の迷惑投稿が増えている
– Xは2024年11月と2026年8月の2度、収益化ルールを変更してこうした投稿の締め出しを図ってきた
– それでも「引用元をブロックしても新しい引用が次々現れる」形で、対策はすり抜けられている
何が起きたのか(Xでの盛り上がり)
Xで「インプレゾンビ」と呼ばれる迷惑投稿が、ここにきてまた目立つようになっています。
閲覧数(インプレッション数:投稿が表示された延べ回数)稼ぎを目的に、本文とは無関係な動画や画像を貼り付けて会話の中に紛れ込ませる手口です。
23日午後には、こんな投稿が2万件を超えるいいねを集めました。
最近のインプレゾンビ、こういうのばっかりでつまらない pic.twitter.com/6ZctQ1JxAG
— m_nm_rum_n (@m_nm_rum_n) 2026年10月23日
添付されていたのは、「それはおもろい」という何気ないやり取りに見せかけた画像です。
開いてみると中身は、冒頭で紹介した「消されたやつ見つかったわ この動画全部無料なのマジ??消される前に見て」という、いかにも怪しいリンク誘導の文面でした。
雑談のスクリーンショットを装ってクリックを誘う——こうした投稿が、タイムラインのあちこちに紛れ込んでいるようです。
ただ、こうした投稿が目立つこと自体は、実は今に始まった話ではありません。
Xはこれまでにも繰り返しインプレゾンビ対策を打ってきたはずでした。
そこで、これまでの対策の中身と、なぜすり抜けられているのかを調べてみました。
調べて分かったこと
Xはこれまでどんな対策を打ってきたのか?
Xはこれまでに2度、収益化の仕組みを大きく変更しています。
1度目は2024年11月。
それまでの「閲覧数(インプレッション数)に応じた収益分配」から、「Xプレミアム加入者からの反応(いいね・リプライ・リポスト)に応じた収益分配」へと方式を変えました。
プレミアム未加入のユーザーにどれだけ見られても収益に直結しない仕組みにして、無意味な投稿を量産してインプレッションだけを稼ぐ行為を抑え込む狙いがあったとされています。
2度目は2026年8月8日。
Xは既存の収益分配プログラムを置き換える新制度「オリジナルコンテンツ報酬プログラム」を発表し、9月8日から提供を始めました。
条件は、Xプレミアムに加入し認証済みフォロワーが500人以上いること。
さらに過去90日間で認証済みユーザーからのホームタイムライン表示が50万回以上であることなども求められます。
リプライ欄を使った荒らし行為や、他人の投稿・他のプラットフォームからの無断転載は収益化の対象から外すことも明言されています。
インプレゾンビとリプライ稼ぎの排除が、導入目的の一つに挙げられていました。
参考: X、収益化プログラムを一新 「オリジナル投稿」が基準に(Impress Watch) / X、「クリエイター収益分配プログラム」終了へ(ITmedia NEWS)
それでもなぜすり抜けられるのか?
ところが、23日午後にはこんな報告も投稿されていました。
最近増えてきてる「バズったポストの内容に関係あるように見せかけた動画ポストを引用する」という新型インプレゾンビ(それのためにパクツイでバズらせるパターンも多い)、引用されてるやつから全部ブロックするようにしてるけど、
— 𝑷𝑲𝑨 (@PKAnzug) 2026年10月23日
ほらこれこれ(引用)
↓
これこれ(引用)
↓
これだよ(引用)…
投稿主は、「バズったポストの内容に関係あるように見せかけた動画ポストを引用する」という新型のインプレゾンビを指摘しています。
引用されている投稿のアカウントを片っ端からブロックしても、「ほらこれこれ→これこれ→これだよ」というふうに、新しい引用の連鎖が次々と現れるといいます。
ブロックという対症療法だけでは、いたちごっこに追いつけない構造になっているようです。
これが起きる理由は、収益化の審査基準そのものにありそうです。
オリジナルコンテンツ報酬プログラムが見ているのは「認証済みユーザーからのインプレッション数」です。
投稿が独自に制作されたものかどうかまでは、仕組みとして厳密にチェックしきれていません。
つまり動画そのものを自作しなくても、話題のポストを引用する形でタイムラインの表示回数を稼げれば、収益化の土俵には乗れてしまいます。
Xが評価基準に「オリジナリティー」を掲げても、引用という投稿形式そのものがふさがれているわけではないため、手口を変えながら生き延びているとみられます。
Shiritomo編集部の考察:SNS運用者が見ておくべき2つの視点
SNS運用やマーケティングに関わる人にとって、この話は「迷惑投稿が鬱陶しい」で終わらせてはもったいない事例です。
1つは、エンゲージメント分析の精度への影響です。
自社やクライアントの投稿が話題になったとき、引用やリプライの件数を“反響の大きさ”としてそのまま報告していないでしょうか。
インプレゾンビによる引用は、商品やブランドへの関心とは無関係に発生します。
バズった投稿の引用数が急に伸びたときは、中身を一つひとつ確認し、収益目的の便乗投稿が混ざっていないかを見極める習慣が必要です。
もう1つは、ブロックに頼り切らない運用です。
PKAnzugさんの投稿が示すように、引用元を個別にブロックしても次のアカウントが現れるいたちごっこが続きます。
自社アカウントの引用欄やリプライ欄を日常的にチェックする仕組みを持っておきましょう。
怪しい引用が増えた段階でミュート機能や通報機能も併用するなど、1つの手段に頼らない運用体制を整えておくと安心です。
まとめ
Xは収益化ルールを2度にわたって見直し、インプレゾンビの締め出しを図ってきました。
それでも「引用」という投稿形式そのものは塞がれておらず、手口を変えながら新しい迷惑投稿が生まれ続けています。
タイムラインで見かける引用の中身を鵜呑みにせず、一呼吸おいて確かめる習慣が、これからも求められそうです。

