「X? あ、Twitterね!」——9,000いいねを集めた漫画が示した”Twitter呼び”の深層と、SNS担当者が知るべきブランド認知の慣性
「X? あ、Twitterね!」——そう言いながら目を輝かせるメイド姿の女性を描いた1枚漫画が、先日Xのタイムラインで静かに、でも確実に広がっていきました。
投稿したのは、”ゆとり世代あるある”漫画で知られる漫画家・福田ナオ絵氏。
「私がいまだに『X』『ポスト』ではなく『Twitter』『リツイート』と言っているのは思想でもなんでもなく、MAJORの清水が終盤までノゴローくんを『本田』呼びしてたのと同じです」——そんな添え書きとともに投稿された漫画は、あっという間に9,000以上のいいねを集めました。
気になって調べてみたのですが、この「Twitter呼び問題」、実はSNS担当者にとってかなり示唆に富んだ現象なんです。
「単なる習慣」か「思想的なもの」か——沸き起こった議論
福田ナオ絵氏のこの投稿、引用リポスト(あえてこう書きます)には「Xは言いづらい」「Twitterの方が相手に伝わる」という擁護の声が相次ぎました。
一方で「Twitter呼びに思想を感じる」という批判的な意見も少なからず見られ、2023年のリブランディングから3年近く経った今も、この呼び方問題がユーザーの間でくすぶり続けていることがわかります。
私がいまだに「X」「ポスト」ではなく「Twitter」「リツイート」と言っているのは思想でもなんでもなく、
— 福田ナオ絵🌟C108(日)西そ01b (@fukku7010gmail1) 2025年8月15日
MAJORの清水が終盤までノゴローくんを「本田」呼びしてたのと同じです
このポストの面白さは、「習慣」という言葉でそれを整理したことにあります。
MAJORの清水が長年のライバルをいつまでも旧姓で呼び続けるのと同じ——それは感情的な距離感の表れであり、悪意のない慣性です。

データが示す「Twitter呼び」の根深さ
フィーリングの話だけではなく、数字にも裏付けがあります。
2023年にMMD研究所が行った調査では、日本のユーザーのうち「X」と呼ぶ人はわずか9.1%、一方「Twitter」と呼ぶ人は67.7%に上りました。
「ポスト」「リポスト」という新しい用語についても、依然として「ツイート」「リツイート」を使い続ける人が7割を超えています。
この調査結果が発表された当時、毎日新聞もXでこんなポストをしています。
ツイッターを「X」と呼ぶ人、わずか9%https://t.co/5XE1xIoe9s
— 毎日新聞 (@mainichi) 2023年10月23日
民間調査会社のMMDラボの調査で、新しい呼び方が浸透していない実態が明らかに。研究員は「エックスという呼び方が他人に通じないので、ツイッターと呼んでいる人が多いことが分かった」と話しています。
「エックスという呼び方が他人に通じないので、ツイッターと呼んでいる人が多いことが分かった」——担当研究員のコメントが、実態をよく表しています。
プラットフォームが公式名称を変えた後も、ユーザーの認知はそう簡単には書き換わらない——このデータが示しているのはそういうことです。
名称変更から3年近くが経過した2026年時点でも、この傾向が大きく変わっていないとすれば、それはもはや「慣れていないだけ」では説明できません。

なぜ人は古い名前を使い続けるのか
認知心理学的に言えば、これは「認知的慣性(cognitive inertia)」と呼ばれる現象に近いです。
長年使い続けた名称は、その人の記憶の中で「プラットフォームそのものの概念」と強く結びついています。
新しい名前を使うには、その都度「書き換える」という意識的な作業が必要で、日常の会話の流れの中ではそれが省略されやすい。
さらに、Twitter には「タイムライン」「バズる」「鍵垢」など、独自の文化語彙が生まれていました。
これらは新名称の「X」に切り替わっても、ユーザーの中では依然として”Twitter的文化”として機能しています。
名前は変わっても、文化のラベルとしての「Twitter」はまだ生きている、ということです。
SNS担当者が今すぐ確認したいこと
この現象は「ユーザーのこだわり問題」で済ませてしまうと、実務上のミスにつながることがあります。
いくつか確認しておきたい点を整理します。
コンテンツ表記の統一:自社のSNS投稿やブログ記事で「X(旧Twitter)」「Twitter(X)」「X/Twitter」など表記が揺れていないか確認してください。
読者が混乱するだけでなく、SEOにも影響します。
広告・LPの文言:X広告を出稿している場合、LPに「Twitterでシェア」ボタンが残っていたり、文中に「Twitter上で話題の〜」という表現が使われていることがあります。
2026年時点では「X上で〜」に統一するのが正式ですが、ターゲット層が年配の場合は「X(旧Twitter)」と補足を入れる配慮も一つの選択です。
ターゲット別の言語選択:10〜20代向けのコンテンツでは「X」表記が定着しつつある一方、30代以上への訴求では「Twitter」に近い語感(「つぶやく」「タイムライン」など)を残す方が読み手に馴染みやすいケースがあります。
ターゲットの年代を意識した表記戦略は、細かいようで意外と効きます。
さらに深掘りしたい方へ
- 「X」と呼んでいる人は9.1%、「Twitter」と呼んでいる人は67.7% X有料化に関して反対は86.7%(MMD研究所)
- Twitterが「X」になって早2年。
若者が”Twitter呼び”を続ける理由をデータで考察(マナミナ)
SocialReport編集部の考察
今回の漫画がこれほど共感を集めたのは、多くの人が「言えてる……」と感じたからでしょう。
ただ、SNSマーケティングの現場から見ると、この現象はブランドの「認知浸透コスト」の重さを改めて教えてくれます。
Xは2023年にリブランディングを断行しましたが、67.7%というデータが示すように、ユーザーの認知はほとんど動いていない。
これは「マーケティング予算をかけなかったから」という問題ではなく、長年かけて形成されたユーザー習慣が、そう簡単には上書きされないことを示しています。
SocialReportのデータを扱っていると、キャンペーンのハッシュタグに「旧名称の表記」「旧ロゴのスタンプ」が交じり込むケースを見ることがあります。
受け取る側が複数の呼称を混在させてしまうと、リーチ数やエンゲージメントの集計にも影響が出ます。
ブランドのリニューアルやサービス名変更を検討している企業は、X(旧Twitter)の事例を反面教師として活用できます。
特に①変更前から段階的にダブル表記を使う、②影響力のあるクリエイターに新名称を積極的に使ってもらう施策を早期に打つ、③コミュニティの中で愛着を持って使われてきた旧称には、頭ごなしに「禁止」するのではなく、愛着に寄り添った切り替えをうながす——こうした視点は、今後SNSでのリブランディングを考える上で参考になるはずです。
まとめ
「X? あ、Twitterね!」という反応は、決して「遅れている」のではなく、長年かけて育まれたユーザーの感情的な記憶の表れです。
SNS担当者にとっては、ユーザーの認知がいかに変わりにくいかを示すリマインダーとして受け取っておきたい出来事でした。
