「インフルエンサーと信じて買った」——育児系アカウントなりすまし詐欺、13人再逮捕の全貌
「インフルエンサーと信じて買った。
許せない」。
福岡県に住む30代の女性は、SNSで見つけた育児系アカウントの発信者を信じました。
約50万円をローンで支払い、「SNSスクール」という情報商材(ノウハウを動画やテキストにまとめて販売する商品)を購入したのです。
ところが投稿を続けても、フォロワーは一向に増えませんでした。
彼女が信じていた発信者は、実は本人ではありませんでした。
大阪府警は7月1日、会社役員の松村真吾容疑者(29)ら13人を詐欺の疑いで再逮捕したと発表しました。
容疑者らが本物のインフルエンサーになりすまし、虚偽の副業成功談を投稿して情報商材を売りつけていた、というのが事件の構図です。
「かみかみ離乳食ラボ」はなぜ信じられたのか
容疑者らが悪用したのは、離乳食レシピや手作り弁当を紹介する「かみかみ離乳食ラボ」など、実在した育児系アカウントでした。
仲介業者を通じて10個以上のインフルエンサーアカウントを買い取り、そのうち3アカウントだけで合計約50万人のフォロワーを抱えていたといいます。

乗っ取ったアカウントには「スタート9カ月で550万円達成。
シングルマザーでお子さんを育てながらこの成果は本当にすごい」といった、根拠のない成功体験が投稿されました。
フォロワーからすれば、育児の悩みを共有し合ってきた「信頼できる人」からの発信に見えたはずです。
この信頼の積み重ねを乗っ取って悪用した点に、今回の手口の巧妙さがあります。
被害総額6.5億円、大阪府警が追う「匿名流動型犯罪グループ」
今回の再逮捕容疑は、昨年11月から今年3月にかけて、静岡・大阪・愛媛の女性3人から「講義」の受講代名目であわせて約18万〜51万円をだまし取ったというものです。

しかし事件の全体像は、これよりはるかに大きいものです。
同様の手口による逮捕者はすでに計41人に達しており、昨年1年間の被害者は全国で約2300人、被害総額はおよそ6億5000万円にのぼるとみられています。
大阪府警は、実行役をSNSなどでその都度募り、氏名や組織構造を隠したまま離合集散する「匿名流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の関与を視野に捜査を進めています。
さらに深掘りしたい方へ
- インフルエンサー成り済まし「副業すれば高額収入」 詐欺容疑で13人再逮捕—大阪府警(時事通信)
- インフルエンサーのアカウントを買い取り”なりすまし”詐欺か 会社役員の男ら13人を再逮捕(関西テレビ)
- インフルエンサー装い副業詐欺、アプリ会社代表らアカウント数十個使い商材売りつけたか(読売新聞オンライン)
SocialReport編集部の考察
今回の事件がSNS運用担当者に示す教訓は、「フォロワー数」と「信頼性」はまったく別の指標だということです。
企業がインフルエンサーとタイアップする際、確認すべきことは契約前の実績だけではありません。
過去投稿のトーンや運営者情報の変化を継続的にチェックする体制がなければ、乗っ取り後のアカウントと知らずに広告出稿してしまうリスクがあります。
実際、著名アカウントがXRP詐欺ツールの拡散源にされたケースもありました。
川崎フロンターレの画像が無断改変された騒動もあり、なりすましを起点とするブランド毀損は繰り返し起きています。
契約後も発信者の実在性を定期的に確認する仕組みを持つことが、今後のインフルエンサーマーケティングには欠かせないでしょう。
まとめ
50万人のフォロワーを抱えた育児系アカウントの裏側で起きていたのは、積み重ねてきた信頼を売り物にした巧妙な詐欺でした。
SNS上の「実績」を鵜呑みにせず、発信者の実在性を見極める視点が、運用者にも利用者にも求められています。