AIで巧妙化するインプレゾンビ——石破首相のXリプライ欄が”偽の声”で埋め尽くされた
首相のXアカウントのリプライ欄に、600字を超える流暢な日本語の長文が並んでいたら、あなたはそれを「市民の声」だと思うでしょうか。
石破茂首相の釈明ポストに寄せられたリプライの多くが、実は生成AIで量産された「インプレゾンビ」だったと、朝日新聞が取材で明らかにしました。
気になって調べてみたところ、この問題がSNS運用の現場にとっても他人事ではないことがわかってきました。
生成AIで「高度化」するインプレゾンビの実態
「インプレゾンビ」とは、Xの広告収益分配の仕組みを悪用し、インプレッション(投稿の閲覧数)を稼ぐことだけを目的に、無関係なリプライや投稿を繰り返すアカウントのことです。
注目度の高いポストに大量返信することで広告収益を得るビジネスモデルで、以前は意味不明なカタカナや全角英語が並ぶ粗雑な投稿が大半でした。
ところが今では、首相の発言内容に呼応した文脈のある長文を自動生成できるレベルにまで進化しているようです。
朝日新聞がナイジェリア在住の運営者に直接取材したところ、「娘の学費を稼ぐために始めた」との話が出た一方、過去の投稿にはAIに「炎上しそうな投稿案」を提案させるやりとりが残っていました。
貧困を背景にした経済活動という側面と、意図的な情報汚染という側面が重なり合っている——その構造がX上でも大きく拡散しています。
Xはすでにリプライへの広告収益分配を対象外とする仕様変更を実施していますが、海外アカウントはAIで対応を変化させながら活動を続けているとのことです。
イケハヤ氏は「ゾンビが一気に駆逐されるかも」とXで反応。Xが infofi(リプライへの報酬を提供するサービス)を明確に禁止しAPIも遮断したニュースを受け、インプレゾンビ問題が深刻化している証左だと指摘しています。
うお!すばらしいニュース!
Xのインプレゾンビが一気に駆逐されるかも!
なにかというと、Xのリプ欄にゾンビが湧くのは、ああやって書き込むとお金がもらえるサービスがあるんです(通称infofi)。
今後はinfofiは明確に禁止され、APIも遮断済み! https://t.co/CO6tXEiSTc
— 🍺 イケハヤ@アニメ作る人 (@IHayato) 2026年1月15日
漫画作家のカマタミワ氏は「最近のインプレゾンビのリプは、漫画の画像の中身も読んで文章を生成していてすごい。うっかりリプ返してしまいそうになった」と実体験を投稿しています。
画像の内容まで読み取って自然な返信を生成できるとなると、もはや「怪しい投稿」と見抜くことはかなり難しくなっているのではないでしょうか。
最近のインプレゾンビのリプは、ちゃんと漫画の画像の中身も読んで文章を生成していてすごいなあ(1枚目)と思ってついリプ返してしまった直後に目に入ったリプが2枚目 pic.twitter.com/kpe9jSvgIj
— カマタミワ@「非日常活はじめました。」発売中! (@kamatamiwa) 2026年3月3日
背景にある構造と、プラットフォームの限界
朝日新聞の調査報道(2026年4月)によると、インプレゾンビの発信元はナイジェリア・インドネシア・インドなど貧困率の高い国が多く、X経由の収益で生計を立てようとしている実態が確認されています。
生成AIとの組み合わせにより、今後さらに「見分けがつかない偽の声」が増加するリスクがあります。
政治家・有名人・企業の公式アカウントへのリプライ欄は特に標的になりやすく、SNSマーケターが管理するブランドアカウントも例外ではありません。
Xは2026年2月、API経由の自動リプライを大幅に制限する対策を講じたと発表しました。
ただ、人間による手動投稿に見せかけたAI利用は規制が難しく、プラットフォーム側の対応には限界もあるようです。
「AIで進化したインプレゾンビ 海外から日本語投稿する理由を聞いた」(朝日新聞)
https://news.yahoo.co.jp/articles/76f4d11fb24e7e9ba6d48e58df7a36a8b849ed0b
X上での信頼性の低下は、ブランドのコメント欄やコミュニティノート(投稿の正確性を補足する注釈機能)の信用度にも影響しうる問題として、SNS運用担当者が注視すべき動向といえるでしょう。
さらに深掘りしたい方へ
- Xの収益化プログラム公式説明(英語): help.twitter.com
- インプレゾンビ対策まとめ(INTERNET Watch): internet.watch.impress.co.jp
- ダイヤモンド・ビジョナリー「インプレゾンビ急増中」: www.diamondv.jp
まとめ
生成AIの普及により、インプレゾンビは「見分けがつかない偽の声」へと進化しつつあります。
エンゲージメント数値をそのまま信じるのではなく、リプライ欄の質的な変化にも目を向けることが、SNS運用担当者にとってますます重要になっているのかもしれません。