SNS運用Tips 読了 7 分

「TLがツナ缶だらけ」ジンの動員参治『海のタンパク質』広告、ファンを動かす仕掛けとは

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年8月14日 更新
「TLがツナ缶だらけ」ジンの動員参治『海のタンパク質』広告、ファンを動かす仕掛けとは

「ㅇ마트 갔더니 참치를 타는 석진이캔 발견」——8月13日、韓国在住のあるファンがXにこう投稿しました。
マグロにまたがってピースサインをするBTSジンさんのイラストが描かれたツナ缶が、近所のスーパーの棚にずらりと並んでいたというのです。
投稿者は「朝オンラインで注文したからそちらを待つよ」「私のTLがチャムチ(참치=ツナ)だらけ笑」とも書き添えていて、いいねは1,410件を超えました。

たかがツナ缶、されどツナ缶です。
SNS運用やブランドのキャンペーン設計に関わる人にとって、この現象は「著名人を起用した広告が、なぜここまでファンの自発的な拡散を生むのか」を考える材料になります。
この記事では、ドンウォンF&B(Dongwon F&B:韓国最大手クラスの食品・水産加工会社)が仕掛けたキャンペーンの中身と、それがどうファンの発信につながっているのかを調べました。

先に結論をまとめると:
– ドンウォンF&Bは8月13日、BTSジンさんを起用した2作目のツナ広告「海のタンパク質」キャンペーンを公開しました
– ツナ缶1缶(135g)に含まれるタンパク質は25gで、鶏むね肉や卵が中心だったタンパク質市場に「海」から挑む狙いがあるようです
– 購入証明やAI生成画像の投稿で応募できる抽選施策など、ファンが「参加」できる仕組みを組み込んでいます

韓国のマートに並んだ「ジン印」ツナ缶

冒頭のツイートで紹介されているのは、ドンウォンの主力商品「동원참치(動員参治)」のBTSジンエディションです。
缶のふたには、マグロに乗って笑うジンさんのイラストと「바다 단백질에 올타타!(海のタンパク質に乗っかろう!)」というコピーが印刷されています。
写真を見る限り、店頭では通常のツナ缶と並べて山積みにされており、売り場の上には「슈퍼참치(スーパーツナ)」と書かれたジンさんの写真入りサインボードも掲げられていました。

この投稿にあるように、ファンは店頭で製品を見つけるたびにXへ報告する習慣があるようです。
ドンウォン側もそれを見越してか、8月13日に第2弾の広告を公開したばかりでした。
ここで一つ疑問が浮かびます。
なぜ「ツナ缶」というありふれた日用品が、ここまでファンの発信意欲を刺激するのでしょうか。
それを調べるため、キャンペーンの背景を一次情報で確認してみました。

「海のタンパク質」キャンペーンを掘り下げる

なぜジンさんが起用されたのか?

ドンウォンF&Bがジンさんを起用したのは今回が初めてではありません。
始まりは2025年7月。
きっかけは、ジンさんが2021年に趣味で発表した自作曲「スーパーツナ(Super Tuna)」でした。
釣り好きで、自らを刺身好きの代表格になぞらえるほど水産物への思い入れが強いジンさんが、純粋に楽しみのために公開した曲が、後々までBTSファンの間で愛され続けるミームになっていたのです。
2024年に公開された延長版ミュージックビデオでは、ツナのぬいぐるみを抱きしめたり、釣り針入りの指輪ケースでツナに”プロポーズ”したりする場面が話題を呼び、ファンの間でさらにミーム化が進んでいました。
ドンウォン側はこの、すでに出来上がっていたファン文化を見つけて公式に取り込む形で起用を決めた、という構図のようです。

8月13日公開の新広告は何が違うのか?

今回8月13日に公開された広告は、この起用の第2弾にあたります。
ドンウォンは商品を単なる「ツナ缶」ではなく「海のタンパク質(블루 프로틴:ブループロテイン)」と再定義し、「진짜 고단백은 바다에 있다(本当の高タンパク質は海にある)」というメッセージを打ち出しました。
狙いは、これまで鶏むね肉や卵が中心だったタンパク質市場そのものに、水産物という新しい選択肢を持ち込むことのようです
実際、ドンウォン参治のライトスタンダード135g缶には25gのタンパク質が含まれており、これは成人の1日推奨摂取量(55g)のおよそ半分、卵4個分や豆腐1丁分に相当するといいます。

広告映像では、ジンさんが海に浮かぶヨットで魚と戯れているように見えるシーンが印象的です。
ただ、報道によれば実際の撮影はスケジュールと安全面を考慮し、”海のドリームカー”と呼ばれる希少なヨットをスタジオに持ち込み、後処理で海の背景を合成したのだそうです。
爽快な”海の映像”の正体は、セットと編集技術の産物だったというわけですね。

なぜファンはここまで動くのか?

購買を後押しする仕掛けも用意されています。
「바다 단백질, 받아(海のタンパク質、受け取って)」と題した参加型キャンペーンでは、ツナを絡めたAI生成画像の投稿や購入証明の提示で応募でき、抽選で1年間毎日ツナ缶が届く”定期購読”権や、キャラクター型モバイルバッテリーが当たる仕組みです。
パッケージも特別デザイン缶12種類とランダムのシールステッカー5種類を用意し、集めたくなる要素を作っているのが特徴です。
こうした収集要素は、ファンが自発的に「戦利品」をSNSに投稿したくなる動機づけになっていると考えられます
実際、2025年7月にはネイバーショッピングライブでの先行予約が40秒で1,000セット完売したと報じられ、同年9月の秋夕(チュソク:韓国の秋の連休)向けにもジンさんの写真入りギフトセットが投入されたそうです。
今回の新広告でも、この過去の実績を知るファンほど反応が早いのかもしれません。

Shiritomo編集部の考察:起用のタイミングより「余白」を作る

このキャンペーンで注目したいのは、起用そのものよりも、ブランド側が「ファンにやらせる余白」を意図的に残している点です。
ジンさんの曲が生んだミーム文化はドンウォンが作ったものではなく、すでにファンが自発的に育てていたものでした。
ブランドはそれを壊さずに公式化し、さらにAI画像投稿や購入証明といった参加のハードルが低い導線を追加しています。
SNS担当者が学べるのは、著名人起用の効果を最大化するのは広告費の大きさではなく、ファンがすでに持っている創作エネルギーをどこまで邪魔せずに乗せられるかという設計思想なのではないでしょうか。
新規にバズを狙って作るより、すでに存在する熱量を見つけて後から公式化するほうが、拡散のコストは低くなりそうです。
この発想は、他業種のインフルエンサー起用や、社員・ユーザーが自然発生的に作った投稿を公式が拾い上げる場面にも応用できるでしょう。

まとめ

ドンウォンF&BのBTSジン起用は、ファン発の”遊び”だった楽曲を公式が拾い上げ、パッケージ集めや参加型キャンペーンで拡散の仕掛けを重ねた事例といえそうです。
マートの棚で見つけたツナ缶をつい報告したくなる気持ちの裏には、ブランドが用意した緻密な設計があったのかもしれません。

さらに深掘りしたい方へ