「変更したのは私です」——元ウォークマン設計者が明かす、付属イヤホン刷新の裏側
「廉価モデルにはMDR-E805を付属していましたが、音質に鑑みてMDR-E808に変更したのは私です」。
そう投稿したのは、ソニーでウォークマンの開発に携わっていた田中晃さん(@akiraa_tanaka)。
2025年2月28日付でソニーを退社した後も、X上で自身が関わった製品の裏側を発信し続けている人物です。
廉価モデルの付属イヤホンをめぐる、社内の力関係と技術判断が同居した一言に、ウォークマンファンやガジェット好きの間で反応が広がっています。
イヤホン選びに悩んだことがある人なら、思わず頷きたくなる話です。
先に結論をまとめると:
– ウォークマン開発チームは社内のイヤホン部隊にとって「上得意客」で、毎年コストダウン要請をしていた
– 廉価モデルの付属イヤホンは当初MDR-E805だったが、田中さん本人の判断で音質を優先しMDR-E808へ切り替えられた
– フラグシップモデルには別格のMDR-E838が付属し、価格帯によって付属イヤホンを作り分けていた

Xでの投稿と、そこに滲む社内事情
田中さんの投稿を見ると、まず目を引くのは「上得意客」という表現です。
ウォークマン本体を作る部隊と、イヤホンを作る部隊が同じソニー社内にありながら、別々の”取引先”のような関係だったことが伝わってきます。
ウォークマン部隊はイヤホン部隊の上得意客でしたので、毎年コストダウン要請をしていました。後年のフラグシップモデルにはMDR-E838を付属しました。廉価モデルにはMDR-E805を付属していましたが、音質に鑑みてMDR-E808に変更したのは私です。#ウォークマン #walkman pic.twitter.com/TG12VP7cW7
— 田中 晃 (@akiraa_tanaka) 2026年8月14日
投稿には、シルバーとブラックそれぞれのイヤホンが並んだ写真が添えられています。
どちらも耳にフィットする丸みを帯びた形状で、イヤホン本体の付け根部分に「SONY」のロゴが入っている点は共通していますが、投稿本文では写っているイヤホンがどの型番にあたるかは明かされていません。
そのため、この記事でも写真から型番を断定することは避けます。
「毎年コストダウン要請」という言葉が示すのは、ウォークマン本体の利益を守るために、付属品にもシビアな原価管理が及んでいたという事実です。
ただ、その中でも田中さんは「音質に鑑みて」E808へ切り替えたと述べています。
コストと音質、両方の綱引きの中で下された判断だったことがうかがえます。
なぜ廉価モデルのイヤホンにまでこだわったのか?
ウォークマンは本体の価格帯によって、複数のグレードに分かれていました。
田中さんの投稿によれば、フラグシップモデルにはMDR-E838、廉価モデルにはMDR-E805、そしてそこから音質を理由にMDR-E808へと切り替えられています。
MDR-E805は、オープンエアダイナミック型(外の音も聞こえる開放型)の構造を採用したイヤホンとして知られています。
中古市場の取引情報などから伝わる当時のスペック情報では、再生周波数帯域が10Hz〜16,000Hz、インピーダンス16Ω、出力音圧レベル104dBといった数値が挙げられています。
ただしこれはメーカー公式の現行スペック表ではなく、あくまで当時の販売資料や中古取引情報にもとづくものです。
正式な仕様書は現在ソニーのサポートサイトでも公開されておらず、断定的な数値としては扱えません。
一方でMDR-E838は、MDウォークマンなど一部モデル向けのマイクロプラグ仕様として販売されていた記録があり、フラグシップに位置づけられていたことは投稿内容とも整合します。
廉価モデルであっても「聞こえればいい」で済ませず、コストの範囲内で音質を選び直したというのが、この投稿の核心といえるでしょう。
田中さんとはどんな人物なのか?
投稿の信頼性を考えるうえで気になるのは、田中さん自身がどれだけウォークマン開発の内情に通じていたかという点です。
過去の投稿を追うと、田中さんは2008年3月発売の初のBluetooth搭載ウォークマン「NW-A820」でメカ統括マネジャーを務めたと明かしています。
単なるファンではなく、開発の現場に立っていた人物だとわかります。
ウォークマンのコレクターとしても知られ、本体76台・カタログ279冊を所持していると自身のXで公開しています。
このバックグラウンドがあるからこそ、「変更したのは私です」という一言に重みが生まれています。
単なる推測や伝聞ではなく、決裁に関わった当事者本人の証言という点が、今回の投稿がXで注目を集めた理由の一つといえそうです。
Shiritomo GADGET編集部の考察:設計秘話が刺さるのは「値段の外側」を語るから
家電量販店の店頭で付属イヤホンを気に留める人は多くありません。
ですが、今回の投稿が示すように、そこには「毎年のコストダウン要請」と「音質への配慮」という、値札には出てこない駆け引きが積み重なっています。
こうした一次証言型の投稿が伸びやすいのは、スペック表や公式発表からは絶対に出てこない「なぜその選択になったか」という理由が言葉になっているからです。
読者は完成品としてのイヤホンではなく、意思決定の過程そのものに興味を持ちます。
田中さんのように開発現場にいた人物が、退社後にこうした裏側を発信し続けているのは、いまや貴重な情報源だといえるでしょう。
メーカー公式が語らない設計判断の経緯は、当時の担当者本人の言葉でしか残らない場合が多く、ガジェットの歴史を追ううえでも一次証言の価値は年々高まっています。
まとめ
廉価モデルの付属イヤホンひとつをとっても、そこにはコストと音質をめぐる社内の綱引きがありました。
田中晃さんの投稿は、そうした裏側を当事者の言葉で伝えてくれる貴重な記録です。
さらに深掘りしたい方へ
田中晃さんのX(@akiraa_tanaka)では、今回のイヤホン秘話以外にも、歴代ウォークマンの開発エピソードが継続的に投稿されています。
ウォークマンの歴史に興味がある方は、あわせて追ってみると新しい発見があるかもしれません。

