Xは若者離れ? 総務省データが示す「閲覧はするけど発信しない」世代の実態
先日、マレーシアを拠点に活動する起業家「ちゃん社長」がXにこんな投稿をして、大きな反響を呼びました。
「10代・20代はXを全く使わない」。
根拠として示されたのは、ご自身のアカウントのいいね分析データです。
65歳以上が31%、男性が74.9%、日本人が99.3%という数字を見ると、確かに若者の存在感がないように見えます。
でも、ちょっと待ってください。
「いいねをした人の属性」と「Xを利用している人の属性」は、実は同じではないのです。
総務省データが示す、若者のX利用率の実態
調べてみると、まったく異なる数字が出てきました。
総務省の令和7年版情報通信白書によると、20代のX利用率は78.0%。
これはTikTokの58.7%を大きく上回る数字です。
10代もX利用率が62.1%を維持しており、若者がXを使っていないどころか、過半数以上が日常的に開いているのです。

令和6年度の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省)では、20代のX利用率は81.6%とさらに高い数字が出ています。
総務省のXアカウントでも、白書に関連するSNS利用率のデータが公開されています。
先日公表した令和7年版情報通信白書の内容を一部抜粋しご紹介します。
— 総務省 (@MIC_JAPAN) 2025年7月15日
■「スマートフォン・SNS・クラウドサービスの利用の浸透・拡大」
個人のスマートフォン・SNS等の利用率は大幅に増加しており、企業のクラウドサービスの利用率も2024年に80.6%となりました。
詳細は👇https://t.co/qiPA7RHR1U pic.twitter.com/YllKuuj7sX
実際のMAU(月間アクティブユーザー数)を見ても、Xは日本で6,800万人(2025年5月時点)。
TikTokは4,200万人(2025年11月時点)と、ユーザー数ではXがTikTokを大きく引き離しています。
なぜアナリティクスには「高齢者が多い」と映るのか
では、なぜちゃん社長のアナリティクスには若者が少なく見えたのでしょう。
ここに、世代間の行動パターンの違いが関係しています。
「いいね」はあくまでも能動的なアクションです。
若者世代は「投稿を見るけれど、反応はしない」——いわゆるROM専(リードオンリーメンバー)の割合が高い傾向があります。
気になる情報はブックマークするか、そのままスクロールして次の投稿へ。
積極的に「いいね」を押す機会は少ないのです。
一方、シニア世代はフォローしたアカウントをじっくり読んで、気に入ったら「いいね」を押すという丁寧な使い方をする方が多いと言われています。
結果として、エンゲージメント(いいね・リプライ・リツイート)を分析すると、能動的に反応してくれる層が目立ち、閲覧だけしている若者は「見えない」状態になってしまうのです。

「発信離れはあっても、利用離れはない」。
これが、データが示すXと若者の関係性です。
TikTokとXの「使い分け」が進んでいる
もう一つ注目したいのが、若者世代のSNS使い分けの実態です。
TikTok(20代利用率58.7%)とX(20代78.0%)を比べると、多くの若者が両方を使っていることがわかります。
「面白い動画を消費するのはTikTok、テキストで情報を得るのはX」という棲み分けが定着しているようです。
Z世代にとってXは「リアルタイムの情報収集ツール」として機能しており、台風情報・速報ニュース・推し活情報などを取得する場になっているとも言われています。
SNSマーケターへの実務的示唆
この議論は、SNS運用・マーケティングの現場に対して重要な示唆を持ちます。
まず、エンゲージメント分析だけでオーディエンスを判断してはいけないということです。
いいね・リプライ・リツイートを見ると能動的に反応する層に偏り、「閲覧しているだけの若者」は数字に現れません。
インプレッションやリーチ数も合わせて見ることで、実際にリーチできている年齢層の全体像が見えてきます。
また、若者はXを情報収集の場として信頼しているという点も重要です。
彼らは投稿しないかもしれませんが、見ています。
ブランドのX運用を「発信の場」だけでなく「情報の置き場」として設計することで、若年層への接触機会を確保できるでしょう。
さらに、X Communities(コミュニティ機能)が2026年5月に廃止となり、XChatへの移行が案内されるなど、プラットフォームの仕様も変化しています。
利用者行動の変化とあわせて、X運用戦略を見直すタイミングかもしれません。
さらに深掘りしたい方へ
- 令和7年版情報通信白書:コミュニケーションツール・SNS(総務省)
- 「X離れ」は起きていない?イーロン・マスク体制でも意外な利用実態(東洋経済オンライン)
- Twitter離れはウソ?ホント? 20代女性の8割がXをほぼ毎日利用(Web担当者Forum)
- 2026年4月・5月版 性別・年齢別SNSユーザー数(ガイアックス)
まとめ
「Xは若者離れしている」という印象は、いいね分析から生まれた誤解である可能性が高いです。
総務省データが示すとおり、若者はXを使っています——ただし、黙って情報を収集しているだけで、発信・反応はしないのです。
エンゲージメントが見えにくい若者層へのアプローチとして、Xを「情報の発信・保存地点」として活用する視点が、これからのSNSマーケティングには求められるかもしれません。