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インフルエンサー1000人でSNSを「肯定的に」——ベトナム共産党の情報戦略が示す、SNS時代の国家プロパガンダの形

shiritomo | AI・SNS・話題のテック情報メディア by Hashout編集部 @shiritomoAI_jp 2026年5月11日 更新
インフルエンサー1000人でSNSを「肯定的に」——ベトナム共産党の情報戦略が示す、SNS時代の国家プロパガンダの形

「体制支持のインフルエンサーを1000人集め、ネット空間の8割を肯定的なコンテンツで埋める」——そんな計画書が、Reutersの調査によって明らかになりました。
ベトナム共産党が2030年を目標に進めている、大規模なSNS活用プロジェクトです。
これを知ったとき、どう受け止めましたか。
「遠い国の話だ」と流せればいいですが、SNSマーケティングの構造として見ると、驚くほど先進的な設計をしているかもしれません。

Reutersが報じた内部文書の中身

2026年4月に作成された草案をReutersが入手し、その内容を報道しました。

計画の柱は次のとおりです。
2030年までに体制を支持するインフルエンサーを最低1000人、AI専門家を5000人確保するという数値目標を設定。
ベトナム語のオンラインコンテンツの80%を「肯定的」なものにすることを目指しています。
さらに、党のガイドラインに違反するコンテンツをAIによって24時間以内に90%以上削除する仕組みも導入する方針とのことです。

新しいフォーマットとして、ポッドキャスト・短編動画・ターゲット別カスタマイズコンテンツなどを採用する計画もあります。
これは現代のSNSマーケティングが使っているコンテンツ戦略そのものです。

この方針は月内に政治局へ正式提案される予定とされています。

「思想的免疫」という概念

計画書の目的として掲げられているのは、「有害で有毒、虚偽の情報に対する思想的免疫を社会全体に作ること」です。
この表現は興味深いものがあります。

SNSが普及することで、政府の公式発表よりも個人の発信が信頼されやすくなるという現象は、世界各国で起きています。
ベトナム共産党が懸念しているのは、政治的な反対派の台頭だけでなく、外部からの情報工作——いわゆる「カラー革命」リスクでもあるようです。

そのための「解毒剤」として、体制側が積極的にSNSに入り込み、ポジティブな情報を大量に流すという発想です。
すでに一部のインフルエンサーは招集済みで、ある人物はロイターに「自律性を守るために断った」と語っています。
承認されたクリエイターには公式イベントへの招待などの特典が提供されるとのことです。

SNSマーケターが注目すべき視点

この計画を「独裁国家のプロパガンダ」として片付けてしまうのは簡単です。
ただ、国家がインフルエンサーエコノミーを戦略的に設計しているという事実は、SNSマーケティングに関わる人間にとって他人事ではありません。

インフルエンサーを組織化し、コンテンツの方向性を揃え、ネガティブな情報を技術的に排除しながら「好感度の高い空間」を作る——この構造は、ブランドがSNSコミュニティを育てる際のロジックと重なる部分があります。
影響力を持つ発信者をパートナーとして巻き込み、世界観を共有してもらうという手法は、多くの企業がすでに実践していることです。

もちろん、民主主義の文脈ではなく統制の文脈で使われることに大きな違いがあります。
ただ、「SNSで情報環境を設計する」という発想の精度が年々上がっているという事実は、注視しておく価値があるでしょう。

なお、日本のXでも「中国のSNS工作」に関する報道が過去に話題になっており、民主国家における情報戦への関心は高まっています。

さらに深掘りしたい方へ

まとめ

ベトナム共産党のインフルエンサー活用計画は、国家レベルのSNS情報設計として注目すべき事例です。
SNSが「情報を届ける場」であると同時に「世論を設計できる場」になっている——その現実は、マーケターにとっても無関係ではありません。
どの組織がどんな意図でSNS空間を動かそうとしているのか、情報の出所を意識する目を持つことが、これからますます重要になっていくでしょう。