時速50キロで3.5秒よそ見すると警告——2031年、新型車に「監視カメラ」が義務化される理由
時速50キロで走行中、スマートフォンに視線を向けて3.5秒。
国土交通省が固めた新しい基準では、この3.5秒が「ながらスマホ」と判定される境界線になります。
2031年9月以降に発売される新型車には、この基準を自動で見張るドライバーモニタリングシステム(DMS:車内カメラやセンサーで運転者の視線やまぶたの動きを監視する装置)の搭載が義務付けられる方針です。
運転席の前にあるカメラが、自分の視線を常に追いかけている——スマホやガジェット好きにとっても、他人事ではない話ではないでしょうか。
この記事では、義務化の具体的な検知基準や対象範囲、そして海外との違いまで一次情報をもとに整理します。
先に結論をまとめると:
– 2031年9月から新型車、2033年から継続生産車にドライバーモニタリングシステム(DMS)の搭載が義務化されます
– 脇見運転は時速50キロ以上で3.5秒以上、時速20〜50キロで6秒以上の視線逸脱、居眠り運転は時速70〜130キロでの挙動から検知します
– 背景には2025年上半期のながらスマホ関連事故の増加と、欧州に足並みをそろえた国際基準の採択があります
何が起きたのか——日経の速報が伝えたこと
この方針が広く知られるきっかけになったのが、日本経済新聞の速報でした。
「ながらスマホ」運転、自動検知・警告義務付け 31年から全新型車にhttps://t.co/Z6mki8ET5H
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) 2026年8月23日
見出しには「31年から全新型車に」という一文だけが添えられていましたが、この短い一報が伝える範囲は小さくありません。
今後発売されるほぼすべての新型車の運転席に、運転者を常時監視するカメラが搭載されることを意味するからです。
ただ、速報だけでは検知の仕組みや対象車両の細かい線引きまでは分かりません。
そこで国土交通省の方針や各社の報道を確かめてみました。
調べて分かったこと
なぜ今、義務化に踏み切るのか?
警察庁のまとめでは、2025年1〜6月に発生したながらスマホに起因する死亡・重傷事故は68件で、統計を取り始めた2007年以降で最多を更新しました。
こうした事故の多発が、義務化を後押しする一因になったとみられます。
加えて、日本も参加する国連の自動車基準調和世界フォーラム(自動車の安全基準を国際的に統一するための会議体)で、2026年3月にDMSの新しい国際基準が採択されました。
国土交通省はこの基準の発効にあわせて2026年9月に保安基準(車の安全性能の最低ラインを定めた国の規則)を改正し、2031年9月から新型車に義務付ける方針です。
どんな運転を「危険」と判定するのか?
検知の基準は、走行速度によって変わります。
脇見運転は、時速50キロ以上で3.5秒以上、時速20〜50キロでは6秒以上、視線が前方から手元付近にそれると作動する設計です。
高速道路なら3.5秒、街中の速度域なら6秒が、スマホを見てよいか悪いかの境目になる計算です。
居眠り運転は、時速70〜130キロで走行しているときのまぶたや眼球の動き、ハンドルのふらつきなどから検知するとされています。
異常を検知すると、警報音やハンドルの振動で運転者に知らせる仕組みのようです。
どの車が対象になるのか?
対象になるのは、国産車・輸入車を問わず新たに販売される新型車です。
2031年9月から新型車に適用したうえで、2033年には既存モデルを継続生産している車にも搭載が義務付けられます。
約2年の猶予を置くことで、モデルチェンジの時期が近い車種にも対応の時間を確保する狙いがあるとみられます。
海外ではもう義務化されているのか?
実は日本が先行しているわけではありません。
欧州ではすでに新車へのDMS搭載が義務化されており、日本は国際基準にあわせて追いかける形になります。
国内メーカーの中にも、法規制に先立って独自にDMSを実用化している例があります。
SNSでは歓迎ばかりではない?
報道を受けたSNS上の反応は、手放しの歓迎ばかりではないようです。
「運転が簡単になりすぎるのでは」「免許確認やアルコール検知のほうを優先すべきでは」といった声のほか、新車価格の上昇や運転技術の低下を懸念する意見も見られます。
センサーやカメラの追加はコストに直結するため、対象になる2031年前後の新車価格にどう跳ね返るかは、今後の注目点になりそうです。
Shiritomo GADGET編集部の考察:義務化は「新技術」ではなく「普及」の話
今回の義務化で見落とされがちなのは、DMSそのものが目新しい技術ではないという点です。
国内メーカーでは、スバルが2018年発売の新型フォレスターにすでに顔認識カメラによるドライバーモニタリングシステムを搭載しており、居眠りやよそ見への注意喚起は一部の市販車ですでに実現していました。
つまり今回の義務化は「発明」ではなく、上位グレードの安全装備だった機能を、すべての新型車の標準仕様に引き上げる「普及」の政策と捉えるほうが実態に近いはずです。
ガジェットの世界でも、指紋認証やAIカメラが高級機からエントリー機へ降りてきた流れと構図はよく似ています。
価格転嫁がどの程度に収まるかは、センサー部品の量産効果とサプライチェーンの成熟度にかかっており、2031年に向けて車載カメラ・センサー業界の動向を追う価値がありそうです。
まとめ
2031年からの新型車には、運転者の視線とまぶたを常時見張るドライバーモニタリングシステムの搭載が義務付けられます。
「監視される」ことへの抵抗感より先に、事故を減らす仕組みとしてどこまで定着するかが問われる5年間になりそうです。