「長い。読まん」「地味。見ない」——刺さったマーケ論に、脳科学とブーメランが追いついてきた理由
「長い。
読まん」
「地味。
見ない」
「難しい。
わからん」
「めんどい。
やらん」
「で、俺になんの得があるの?」
SEOに強いマーケティング会社LANY代表の竹内渓太さん(@take_404)が投稿したこの一言に、631件のいいねと40件の引用が集まりました。
提案の中身はシンプルです。
マーケティングをするときは、脳内に「ドパガキのペルソナ」を飼っておけばいい、というもの。
SNS運用や広告の企画に携わる方なら、明日からすぐ使えるチェックリストとして読めますが、この投稿には続きがあります。
共感の声と同じくらい、「それを煽っているのは誰なのか」という指摘が広がったのです。
先に結論をまとめると:
- 竹内さんの提案は「情報が届かない」を防ぐための実務的な鉄則で、LP・動画・文章づくりにそのまま使えます
- 一方で「その設計こそがドパガキを増やしているのでは」という反応も相次ぎました
- 中国の研究チームが、ショート動画を見ている最中に脳の自己抑制機能が一時的に弱まることをfMRIで確認しており、懸念は感覚だけの話ではなくなっています
LP・動画・文章、竹内渓太氏が示した「6つの鉄則」
竹内さんの投稿は、まず「ドパガキ」という前提を脳内に置くことから始まります。
「長い文章は読まない」「地味な見た目は素通りされる」「難しい言葉はわからない」「面倒な手順はやらない」——ここまで厳しめの前提を置いた上で、次の6つを挙げていました。
- LPはファーストビュー(開いて最初に見える画面)で一瞬で価値を伝える
- 動画は冒頭3秒に死ぬほどこだわる
- クリエイティブはまず目を止めさせる
- 文章は小学生でもわかるくらい簡単にする
- CTA(行動喚起ボタン)までのハードルを極限まで下げる
- 便益は「結局、自分に何がいいの?」まで翻訳する
マーケティングをするときは、脳内に「ドパガキのペルソナ」を飼っておくといいかも。
— 竹内渓太 / LANY(レイニー) (@take_404) 2026年8月25日
「長い。読まん」
「地味。見ない」
「難しい。わからん」
「めんどい。やらん」
「で、俺になんの得があるの?」
くらいの前提で考える。
その上で、
・LPはFVで一瞬で価値を伝える…
「ちゃんと見れば伝わる、はだいたい伝わらない」という一文が、実務者の間で強く共感を呼んだようです。
ただ、この投稿への反応を追っていくと、賛同だけでは終わっていませんでした。
「ドパガキ」はいつから広まった言葉なのか?
「ドパガキ」は、ドーパミンの頭2文字と「ガキ」を組み合わせたネットスラングです。
ショート動画やSNS、ゲームなど強い刺激に慣れすぎて、集中力が続かず常に次の快感を求めてしまう状態を皮肉る言葉として、2024年末ごろの投稿をきっかけに広まったと言われています。
2025〜2026年にかけてZ世代の間で「今日の自分、ドパガキムーブだった」のように自虐的なハッシュタグとしても定着しつつあるようです。
「煽っているだけ」という指摘は本当なのか?
竹内さんの投稿の引用欄では、共感と並んで「僕らが育てている側では」という声が目立ちました。
「ドパガキ」って、もしかすると僕ら大人が、みんなでこうやって丁寧に育てているのかもしれないなと最近よく思う。
— 鳥井 弘文 (@hirofumi21) 2026年8月26日
実務としてはほんとうにその通りなんだろうなあと思うし、実際、効果も間違いなく出るんだろうなと思いつつ、… https://t.co/p4e9tpPUH6
この投稿は「実務としては間違いなく効果が出るやり方だと思う」と前置きした上で、「みんなが自分たちのつくるものを短く・派手に・わかりやすくしていくほど、それを受け取る人間、とくに柔軟な子どもたちほどそのペルソナに寄っていく」と続けています。
そして最後には「大人たちが最近の若い子はドパガキ化して長いものは読めないと嘆く」という皮肉で締めくくられていました。
施策としての正しさと、それが積み重なった先の副作用は、別の話だという指摘です。
広告運用の実務者からも、似た感覚を語る投稿がありました。
広告運用をやってきた身として、これは真理です。
— ナセ (@senasnsai21) 2026年8月26日
しかも僕は会社員時代、アドアフィの部署にいたので
ドパガキの気持ちが痛いほど分かるんです。
管理画面を開けば5分おきにCVが発生する環境。
通知が鳴るたびにドーパミンが出て、
気づけば1日中数字を眺めてました。… https://t.co/hAyBsVFAxe
管理画面を開けば5分おきに成果が発生する環境に身を置いていた経験から、「通知が鳴るたびにドーパミンが出て、気づけば1日中数字を眺めていた」という振り返りです。
マーケティングをする側自身が、同じ設計に取り込まれてしまうという構図が見えてきます。
一方で、逆の視点を投げかける声もありました。
B to Bの現場では「もっと詳しく知りたいはず」「最後まで読んでくれる」という、ドパガキ的な前提とは逆の期待でフィードバックされることがあり、やりにくいという指摘です。
難しさを知りたい人はむしろ少数派で、大多数は「決めてもらいたい」だけだという竹内さんの主張を裏付ける反応とも読めます。
脳科学は「ドパガキ化」をどう見ているのか?
感覚論で終わらせず一次情報を確認すると、この懸念には根拠がありました。
浙江大学の研究チームが2026年2月、学術誌「NeuroImage」(327巻、121722頁)に発表した論文です。
平均23歳の56人を対象に、fMRI(脳活動の測定)とMRS(脳内物質の濃度測定)を組み合わせ、最後まで見た興味のある動画と、途中でスキップした動画を見ているときの脳の反応を比較しました。
その結果、興味のある動画を最後まで視聴している最中、行動の監視や注意の制御に関わる前帯状皮質背側部(dACC)と背外側前頭前野(dlPFC)の活動が、安静時より低下していたことがわかりました。
さらに、安静時のdACCにおけるグルタミン酸(脳の働きを活発にする神経伝達物質)の濃度が高い人ほど、動画視聴中もこの活動低下が弱く、自己抑制機能が保たれやすい傾向も見られたそうです。
研究チームは、動画へのハマりやすさには意志の強さだけでなく、個人の脳内化学物質のバランスも関わっている可能性を示しています。
竹内さんの提案自体は、視聴中の脳の状態を狙って設計したものではありませんが、「短く・派手に・わかりやすく」という手法が結果として、この脳の反応を引き出しやすい情報の届け方と重なっている、とは言えそうです。
Shiritomo編集部の考察:効かせる技術と、副作用への自覚は両立できる
竹内さんの6原則は、SNS運用の現場で明日から使える実務的な指針です。
ここを否定する必要はありません。
問題は、この手法が効くこと自体ではなく、効かせる技術と、それが積み重なった先で何が起きるかへの想像力は、別々に持てるはずという点です。
エンゲージメント最適化を突き詰めるほど、コンテンツは短く・強い刺激に寄っていきます。
これはSNSプラットフォームのアルゴリズムが評価する指標とも一致するため、個々の運用者だけの責任にはできない構造的な問題でもあります。
だからこそ、「今回のCTAはどこまでハードルを下げるべきか」を考えるのと同じテーブルで、「この設計を続けた先で読者の情報処理能力にどう影響するか」も検討材料に加える運用チームが、長期的には信頼を積み上げていくのではないでしょうか。
まとめ
「ドパガキのペルソナ」という提案は、情報を届けるための実務的な鉄則として広く支持されました。
ただし引用欄で広がった反応や脳科学の知見を追うと、効かせる技術とその副作用は表裏一体だとわかります。
さらに深掘りしたい方へ
ショート動画視聴中の脳活動については、研究内容を詳しく報じた記事もあわせてご覧ください。