「学習されるのがイヤならネット公開をやめましょう」に7925いいね——政府が出した答えの中身
「(AIに)学習されるのがイヤならネット公開をやめましょう」。
このひと言に対する怒りの投稿には、7,925件のいいねが集まっていたと見られます。
発言の主は、クールジャパンの推進に関わってきた人物だとXでは指摘されています。
同じ週に、政府はこの怒りへの一つの回答とも取れる決定を下しました。
AIで作品を発信するかどうかにかかわらず、SNSに絵や文章を投稿している人なら他人事ではない話です。
先に結論をまとめると:
– 政府は8月25日、生成AI事業者向けの知的財産権保護の基本指針「プリンシプル・コード」を決定した
– AIの学習方法やデータの種類を事業者がホームページで公開し、権利者からの照会に応じることが柱
– 法的な強制力はなく、従わない場合は理由の説明を求める「コンプライ・オア・エクスプレイン」方式にとどまる
クリエイターの不満がXで再燃していた
発端は2023年にさかのぼる投稿でした。
「学習が嫌ならネット公開をやめよう」という趣旨の発言に対し、8月下旬になって「なぜ私たちが描いた絵を載せられないのか」という反論が漫画家やイラストレーターの間で改めて広がり、大きく拡散しました。
「(AIに)学習されるのがイヤならネット公開をやめましょう」
— アータゴングル (@artagongulgul) 2026年8月24日
コレが「クールジャパン」や「コンテンツ大国5ヵ年計画」の座長をやり、クリエイターを苦しめる著作権法30条の4の制度づくりにも関わった方の発言。
…信じられる?有り得ないでしょ…こんな発言。 https://t.co/nxLYKGDVzL
(引用元の投稿より。
「クールジャパン」や「コンテンツ大国5ヵ年計画」の座長を務め、著作権法30条の4(AI学習など情報解析のための著作物利用を原則認める規定)の制度設計にも関わった人物の発言だと指摘されている)
同じ投稿者は、生成AIプラットフォームに日本のマンガやアニメ、ゲームのキャラクターが無断で学習・拡散されている状況にも触れ、「この条文はこうした事態を想定していたのか」と問いかけています。
AI画像学習を「合法化」した結果、生成AIプラットフォームに日本のマンガ・アニメ・ゲームのキャラが勝手にAI学習さればら撒かれてる訳ですが…
— アータゴングル (@artagongulgul) 2026年8月25日
貴方たちはコレを「想定」して著作権法30条の4を定めたのですか?企業の版権キャラをAIにコピーさせる侵害性のある行為を「合法化」しただけでは…? https://t.co/nxLYKGDVzL pic.twitter.com/3mQbhZoUEv
この2つの投稿が話題になった直後、政府から発表があったというタイミングの一致が、さらに反応を大きくしました。
政府が「決定」したのは何なのか?
複数の報道を確認すると、政府が8月25日に決定したのは「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード」です。
担当は知的財産戦略を担当する小野田紀美大臣でした。
柱になっているのは3つです。
①AIモデルの学習方法やデータの種類についての概要開示、②権利者から照会があった場合の対応、③AI利用者から照会があった場合の対応。
事業者は自社のホームページでこれらを公開することが求められます。
対象は日本国内でAIサービスを提供する事業者で、海外企業も含まれます。
ここで重要なのが「法的拘束力はない」という点です。
守らなくても罰則はなく、代わりに「コンプライ・オア・エクスプレイン(従うか、従わない理由を説明するか)」という方式が採られています。
運用開始は今秋を予定しており、事業者からの届け出を受け付けるところから始まります。
「ネット公開をやめれば」への答えになっているのか?
ここが今回いちばん意見が分かれるところです。
指針は学習データの「透明性」を高める仕組みであり、「AIに学習されること自体を拒否する権利」を新たに作るものではありません。
つまり、クリエイター側が求めていた「無断学習をやめさせる」という要求に、直接応えるものではないのです。
一方で、これまでは事業者がどんなデータをどう使っているか外から確認する手段がほとんどありませんでした。
開示が進めば、少なくとも「何が学習されているか分からない」という不透明さは減ります。
Xでもこの点を歓迎する声がある一方、「結局は自主申告に任せる仕組みで、実効性があるのか」という懐疑的な見方も広がっています。
時事通信の報道への反応にも、この温度差がよく表れていました。
「"AIが学習に使ったデータの公開"を促し、透明性の確保を求めることが柱」
— なんじゃ (@11_nan_ja_11) 2026年8月25日
!!!!!!!!!!!!!!!!!
AI学習データ開示要請(時事通信)#Yahooニュースhttps://t.co/mxfnKoHUa6
Shiritomo編集部の考察:「透明性」と「拒否権」は別の話
今回の指針を読み解くうえで大事なのは、「透明性の確保」と「学習を拒否する権利」は制度としてまったく別物だという点です。
今回決まったのは前者だけで、後者にあたる著作権法30条の4の改正論議は、依然として続いている段階にあります。
SNS上の議論を見ていると、この2つが混同されたまま「政府がクリエイターを守った」「結局何も変わらない」という両極端な受け止め方が同時に広がっているように見えます。
実際には「情報公開の一歩目」が決まっただけで、無断学習そのものへの賛否は今後も別の議論として続いていくはずです。
次に注目すべきは、今秋の届け出開始後にどれだけの事業者が実際に開示に応じるか、そしてその情報を権利者側がどう活用するかでしょう。
まとめ
政府は8月25日、生成AI事業者に学習データの透明性を求める基本指針「プリンシプル・コード」を決定しました。
強制力はなく、クリエイターが求める「無断学習の拒否」に直接応えるものでもありませんが、これまで見えなかった学習の中身を確認する手がかりが増える一歩にはなりそうです。
さらに深掘りしたい方へ
政府の指針の詳細は、ITmedia AI+の解説記事でも対象範囲や運用方針が詳しく紹介されています。

