新作・発表 読了 6 分

実写『ルックバック』、「シャッ」という音がかっこいい――原作者の一言から是枝監督がこだわった理由

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年9月4日 更新
実写『ルックバック』、「シャッ」という音がかっこいい――原作者の一言から是枝監督がこだわった理由

「ベテランアシスタントの方がペンで迷いなく線を引く『シャッ』という音がかっこいいんです」。
原作者・藤本タツキさんがこう語った一言だけで、9月11日公開の実写映画『ルックバック』は演出の芯を変えました。
公式Xアカウントが、主人公の藤野と京本が漫画に没頭する本編映像を解禁したのは9月4日の朝のことです。

公開まで1週間というタイミングで、なぜこの一場面だけを切り出して見せたのか。
調べてみると、映像の裏には俳優が4か月かけて積み上げた練習と、劇場側の限定企画がいくつも重なっていました。

先に結論をまとめると:
– 是枝裕和監督は原作者・藤本タツキさんの発言をヒントに、キャラクターの成長に合わせてペンの音を変える演出にこだわった
– 藤野役の出口夏希さんと京本役の蒔田彩珠さんは、クランクインの約4か月前から漫画を描く練習を積んでいた
– 9月11日の公開に合わせ、藤本さん描き下ろしの入場者プレゼントやDolby Cinema上映など劇場側の企画も動いている

本編映像が見せているのは「部屋に響く音」だけ

公式アカウント(@lookback_movie)が公開した本編映像は、派手な展開があるわけではありません。
窓から夕方の光が差し込む一室で、二人がそれぞれの机に向かい、黙々とペンを走らせる――それだけの数十秒です。
切り出された一枚の写真にも、書き込みだらけの資料棚や描きかけの原稿に囲まれた、生活感のある部屋が写っています。

投稿はこう続きます。

いいねは1,000件を超え、公開直前の一報としては十分すぎる反応です。
ただ、この静かな映像がなぜここまで注目されているのかは、テキストだけでは分かりません。
そこで、公式発表や取材記事から背景を確かめてみました。

調べて分かったこと

なぜ「音」にここまでこだわったのか?

本編映像で強調されているのは、ペンが紙を滑る音と、紙が擦れる音そのものです。
是枝監督はこの演出について、原作者・藤本タツキさんの「ベテランアシスタントの方がペンで迷いなく線を引く『シャッ』という音がかっこいいんです」という発言から着想を得たと明かしています。

その上で監督は、「やっぱり音がだんだん変わらないといけないと思っていた。
最初は、子供だった2人が恐る恐る描いていた線が、成長した時に『シャッ、シャッ』という音になってないとダメ」と語りました。
キャラクターの13年にわたる成長を、セリフではなく「線を引く音の変化」だけで観客に伝えようとしていることになります。
実写ならではの挑戦と言えそうです。

出口夏希と蒔田彩珠は、この芝居のために何を積み重ねたのか?

音にこだわった演出を成立させるには、俳優自身がペンを扱えなければなりません。
出口さんと蒔田さんは、クランクインの約4か月前から漫画を描く練習に取り組み、撮影期間中も時間を見つけてはペンを握っていたといいます。

本編映像を見た本人たちのコメントも公開されています。
蒔田さんは「手元の寄りは緊張して震えちゃって。
でも完成した映像を見たら、ちゃんと上達していく感じが出ていた」と振り返り、出口さんは「自信満々に描いていました」と話しています。

8月20日に開かれた完成報告イベントでは、藤野・京本の少女期を演じた七瀬ふうりさんと岡田六花さん(ともに12歳)が登壇し、岡田さんは大人になった二人の芝居を「神々しい」と絶賛しました。
原作者の藤本タツキさんも会場で太鼓判を押したと伝えられています。
地道な練習の積み重ねが、現場でも評価されていたことがうかがえます。

原作ファンの間ではどんな声が上がっているのか?

原作の巻頭には、藤本タツキさんらしい遊び心が仕込まれた一コマがあることで知られています。
実写化にあたってその細部がどう扱われているかを巡り、ファン同士のやり取りも起きていました。

考察の当否はさておき、公開前から原作の細部まで語り合うファンがこれだけいること自体、期待値の高さを物語っています。

公開直前、劇場やグッズ展開はどうなっているのか?

キャンペーン面の動きも活発です。
9月11日から17日までの期間限定で、藤本タツキさんが描き下ろしたA5ビジュアルカードが入場者プレゼントとして配布されます(数量限定でなくなり次第終了)。
写真集(仮)も3,630円で販売される予定です。

上映規格にも力が入っています。
全国358劇場での公開のうち、11劇場がDolby Cinema、37劇場がDolby Atmosでの上映に対応しており、これは是枝監督作品として初めての試みだといいます。
原作漫画を書店で購入すると実写版のオリジナルポストカードがもらえるフェアも、全国763書店で行われています。

Shiritomo MOVIE編集部の考察

是枝裕和監督は、これまでオリジナル脚本のドラマで評価を重ねてきた作家です。
その監督が人気コミックの実写化に踏み出したこと自体が異例であり、本作がヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門、トロント国際映画祭のスペシャルプレゼンテーション部門に選出されている事実は、単なる「話題作の実写化」ではなく作家性の強い一本として世界に受け止められている証と言えそうです。

原作は2024年に劇場アニメ化され、興行収入20億円を突破するヒットとなりました。
実写版は同じ原作をもう一度スクリーンに届ける挑戦であり、アニメ版で原作を知ったファン層をどう取り込むかが、公開後の興行を占う一つの軸になりそうです。

まとめ

「シャッ」という音一つに込められた作り手のこだわりは、原作者の一言から生まれたものでした。
公開直前まで積み重ねられてきた俳優の練習や劇場企画を知った上で、9月11日の本編を見比べてみると、また違った発見がありそうです。

さらに深掘りしたい方へ