未ソートの部品箱から、迷わず必要な1個を取り出す——BMW工場で”人型”が担い始めた仕事
重い部品の箱を後ろ向きに引きながら運ぶ、二足歩行のロボット。
そんな動画が7月上旬にXで共有され、AI業界のウォッチャーの間で静かに話題になっています。
撮影されたのはBMWグループのサウスカロライナ州スパータンバーグ工場。
主役は、米Figure AI社が開発した人型ロボット「Figure 03」です。
前世代機は11カ月で3万台超のX3生産を支えた
BMWとFigure AIの協業は今回が初めてではありません。
前世代機「Figure 02」は2025年からスパータンバーグ工場のボディショップ(車体組み立て工程)に投入され、11カ月間で3万台を超えるBMW X3の生産を支えました。
溶接前の未加工の金属パーツを正確な位置に差し込む作業を担い、スピードと精度の両方が求められる工程で実績を積んできたのです。
その後継機となるFigure 03が今回配属されたのは、ボディショップではなく物流エリアです。
米メディアアカウント「The Humanoid Hub」は、未ソート(仕分け前)の部品が入ったコンテナから必要なパーツをピックアップし、組み立て順に並べたトロリー(台車)へと積み替える仕事を担うと伝えています。

The Figure-BMW partnership is expanding to Figure 03.
— The Humanoid Hub (@TheHumanoidHub) 2026年6月30日
BMW is deploying Figure AI's new Figure 03 humanoids at its Spartanburg plant, moving from a body-shop pilot to a logistics sequencing task: picking unsorted parts from containers and sorting them into a "just-in-sequence"…
並べ替えられた部品は無人搬送車がライン脇の作業者のもとへ運び、作業者は必要な部品を必要な順番で受け取れるようになります。
生産管理担当のUlrich Wieland副社長は、この配置転換について従業員の身体的負担軽減と生産性向上を強調しています。
Figure AIのCEOであるBrett Adcock氏本人も、Figure 03が物流作業を開始したことを自身のアカウントで報告しました。
Figure 03 humanoid robot has started performing a logistics workflow at BMW Group Plant Spartanburg
— Brett Adcock (@adcock_brett) 2026年6月30日
You can read more about it here: https://t.co/eMoPRXriqH
「メタトレンドの一つ」——日本のAIウォッチャーも注目
この動きは海外だけでなく、日本のAI関係者の間でも話題になっています。
ソフトウェア開発者でAI動向に詳しいSatoshi Nakajima氏は、次のように投稿しました。

「BMWの工場で働き始めた、Figureの人型ロボット、F.03。
私が注目しているメタトレンドの一つ。」
BMWの工場で働き始めた、Figureの人型ロボット、F.03。私が注目しているメタトレンドの一つ。 https://t.co/puVHU1QpOD
— Satoshi Nakajima @MulmoCast (@snakajima) 2026年7月1日
一つの投稿としては控えめな表現ですが、「メタトレンド」という言葉には示唆があります。
単発の実証実験ではなく、製造業全体で人型ロボットの実用範囲が「精密作業」から「物流・搬送」へと着実に広がりつつある——そうした大きな流れの一部として、この配属を捉えているということです。
Figure 03自体のハードウェアも前世代から進化しています。
安全性を高める柔らかい外装素材、稼働時間を延ばすワイヤレス充電、作業者と自然にやり取りできる音声対話機能に加え、触覚センサーとカメラを内蔵した新設計のハンド(手部)により、物をつかむ精度が向上したとされています。
単に「歩けるロボット」から、「現場で頼れる同僚」へと設計思想そのものが変わってきていることがうかがえます。
Shiritomo編集部の考察
人型ロボットの活用事例は、これまで「デモ動画で驚かせる」段階のものが多く、実際の量産ラインでの継続稼働はニュースバリューが高い一方、SNSでの拡散力はまだ限定的です。
今回もいいね数自体は突出して多いわけではありませんが、Figure AIのCEOが自らアカウントで発信し、それを日本のAI有識者が引用する形で紹介する——という伝播の仕方そのものが、この分野の情報がまだ「専門家クラスタ」の中で回っている段階にあることを示しています。
SNS担当者にとっての示唆は、こうした「バズる前」の技術トレンドをいち早く拾い、わかりやすく翻訳して届けることの価値です。
一般消費者向けのバズネタと違い、Physical AI(AIとロボットを組み合わせた物理世界での自動化)のような分野は、話題になった時点ではすでに海外では実装が進んでいることが多く、”先取り”して伝える記事ほど検索流入の面で優位に立ちやすい傾向があります。
前世代機Figure 02の11カ月・3万台という具体的な実績数字も、今後同様の企業導入事例を評価する際の一つの基準になりそうです。
まとめ
BMWがFigure 03を物流工程に迎え入れたことは、人型ロボットが「溶接」のような単一の精密作業だけでなく、判断力を要する仕分け・搬送業務にも対応できる段階に入ったことを示しています。
前世代機の実績を踏まえると、今後さらに複雑な工程への展開も現実味を帯びてくるでしょう。