100gのMeta VR Glassesと399ドルのLISAコラボグラス、その裏でVR顔トラッカーは98台リコール――顔まわりのVR/ARが動いた1ヶ月【編集部まとめ】
100グラム、399ドル、1,598万円。
別々の記事に出てきたこの3つの数字を並べてみると、共通する場所が1つ見えてきます。
顔のすぐそばです。
この1ヶ月、Shiritomo GADGETで扱ったVRグラス・ARグラス・表情トラッカーの記事を並べてみると、各社が狙っている場所がそろって同じだったことに気づきました。
デバイス選びで「軽さ」や「見た目」だけを見ていると、その裏で起きていたことを見落とすかもしれません。
先に結論をまとめると:
- Meta・Snap・LISA・個人開発チームまで、顔のすぐそばに機器を乗せる動きがこの1ヶ月に集中しました
- 軽量化とブランド力で評価を得た事例がある一方、クラウドファンディング発の実機はリコールに至った例もあります
- 「顔に乗る」デバイスは、軽さや見た目だけでなく量産・品質管理の実績も購入判断の材料になります
いま、顔まわりのVR/ARに何が起きているのか
2026年9月23日のMeta Connect 2026を境に、動きが一気に加速しました。
同じイベントで、本体約100gの「Meta VR Glasses」とBLACKPINKのLISAが手がけたスマートグラス「Meta Glasses by LISA」が同時に発表され、直後にはSnapのARグラス「Specs」を使った遊戯王のデモ動画がXで469万インプレッションを記録しました。
さらに9月26日にはValveの新型VR「Steam Frame」専用の表情トラッカーがProject Babbleから発表され、クラウドファンディングで話題になったVR顔トラッカー「FocusRay」の実機トラブルも同じ1ヶ月の話題として流れてきています。
形はVRヘッドセット、スマートグラス、ARグラス、表情トラッカーとバラバラです。
ただ、どれも「顔のすぐ近くに機器を寄せて、そこで何を検知・表示するか」を競っている点は共通しています。
この1ヶ月、顔のすぐそばに機器を寄せる動きが一斉に集中しました。
違ったのは、その動きを支える体力です。
資金と量産体制を持つ大手は軽量化やブランド展開に成功した一方、クラウドファンディング発の製品は支援金が集まっても量産品質までは追いつかない場面が出ています。
ここからは、5つの事例を動きが起きた順に見ていきます。
顔のまわりで起きていた5つの動き
1. Meta VR Glasses——100gで「圧倒的軽量」なのにQuestとほぼ同じ体験
Meta Connect 2026で発表された「Meta VR Glasses」は、グラス本体の重さが約100g、単三電池4本ぶんほどの軽さです。
グラス本体は100g、演算とバッテリーは光学ケーブルでつながる約300gの外部パック側に分離という設計で、顔にかかる重さをメガネ程度まで落としています。
価格は1,299.99ドル、発売は2027年春に日本を含む13カ国で予定されているとのことです。
操作は視線追跡とハンドジェスチャーが中心で、コントローラーを持たずに遊べるタイトルは75以上あるとされています。
『逆転裁判5 VR』『牧場物語 Your ワンダフルライフ』などの対応タイトルも同時に発表されました。
ゲームメディアの投稿には「それまでの『Quest』シリーズでやれたことはほぼ出来るといっていいのに圧倒的軽量」という反応が寄せられ、2,000件超のいいねを集めました。
2. Meta Glasses by LISA——テンプルの星に見えたブランドの狙い
同じMeta Connect 2026のステージで発表されたのが、BLACKPINKのLISAとのコラボモデル「Meta Glasses by LISA」です。
価格は399ドルで、9月24日から発売が始まりました。
ラインナップは四角いフレームの「Adventurer LISA Edition」と、キャットアイ型の「Capri LISA Edition」の2種類。
テンプルの先端には小さな星があしらわれ、専用の充電ケースにはLISAが飼うペットたちをモチーフにしたチャームがランダムで1つ付属します。
ただし発売対象はシンガポール・韓国・メキシコ・UAEなど一部地域のみで、LISA仕様の星の刻印やペットチャームといった外装は今のところ日本未展開です(通常版のMeta Glassesは8月26日から日本でも発売されています)。
前項のMeta VR Glassesが「軽さ」という機能で勝負したのに対し、こちらは著名人の意匠の作り込みで勝負した格好です。
3. AR遊戯王デモ——Snap公式ではなかった1本の動画
木製のテーブルに並べた遊戯王の物理カードに、ARグラスをかけて覗き込むとモンスターが3Dで召喚される——そんな動画がXで469万インプレッション、2.8万いいねを集めました。
舞台になっているのはSnapが2026年6月16日に正式発表したスタンドアロン型ARグラス「Specs」(価格2,195ドル、米英仏で今秋出荷開始)です。
ただし調べてみると、このデモはSnap社や遊戯王のブランドホルダーが公式に発表したものではなく、海外の開発者が個人的に作った試作動画でした。
実態は「Snapのグラスで何ができるかを示す一例」です。
4. Project Babble——Steam Frame専用、口元だけを追う新型トラッカー
9月26日、VR向け表情トラッキングのオープンソースプロジェクト「Project Babble」が、Valveの新型スタンドアローンVR「Steam Frame」専用の新型マウストラッカー(口の動きを読み取る装置)を発表しました。
従来モデルが単眼カメラだったのに対し、新型はデュアルカメラを搭載し、キャリブレーション(初期調整)が不要でSteam Frame単体で動作するのが特徴です。
発表は公開から半日足らずで850件超のいいねを集め、VRChatユーザーを中心に反応が広がりました。
既存のアイトラッキング機能では、まばたき・まぶた・瞳孔の大きさ・視線トラッキングがすでに実装済みで、今後は眉と目の開閉具合の追加も予定されています。
価格・発売時期はまだ「近日公開」のままですが、オープンソースプロジェクトがVRの主要ハードにいち早く対応してみせた点が目を引きます。
5. FocusRay——1,598万円集めた顔トラッカーが辿った先
VRChatなどで自分の表情をアバターに反映させる顔トラッキングデバイス「FocusRay」は、2026年3月18日から5月12日まで実施されたKickstarterキャンペーンで達成率399%、支援者1,134人、総支援額1,598万円を集めました。
開始からわずか3時間で目標金額に達するほどの人気ぶりだったといいます。
ところが8月から先行出荷が始まった有線モデルでは、IRLED(赤外線)の光量不足や本体の作りの甘さを指摘する声が上がりました。
開発元のAoharuNEXTは9月4日、配線不良や発煙・発火のおそれを公式に認めて謝罪し、対象ロット(JBX-00000001〜JBX-00000120)のうち98台のリコールを発表しています。
対象ロット120件のシリアル番号のうち98台がリコール対象という規模です。
無線モデルについては本体重量を約10.5g増やし、バッテリー容量を500mAhから1000mAhへ引き上げるなど設計変更が済んでいる一方、有線モデルの品質改善は現時点で明言されていません。
資金調達の成功が、そのまま量産品質の保証にはならないことを示す事例です。
5つの事例を1枚にまとめると
| 事例 | 数字 | 効いたもの |
|---|---|---|
| Meta VR Glasses | 本体約100g/1,299.99ドル | 演算・バッテリーを外部パックに分離した軽量設計 |
| Meta Glasses by LISA | 399ドル/2モデル展開 | LISA本人の意匠(星の刻印・ペットチャーム) |
| AR遊戯王デモ | 469万インプレッション・2.8万いいね | Snap Specs(2,195ドル)の応用力を示した個人開発 |
| Project Babble新型 | デュアルカメラ・キャリブレーション不要 | Steam Frame単体で完結する設計 |
| FocusRay | 達成率399%・支援額1,598万円→98台リコール | クラウドファンディングの期待と量産品質のギャップ |
Shiritomo GADGET編集部の考察
5つの事例を並べて見えるのは、「顔に近づける」という設計思想が、手がける側の体力によってまったく違う結果を生んでいるという構造です。
資金と量産体制を持つ大手企業は、軽量化とブランド力を同時に実現できました。
一方、FocusRayのように支援金は集められても量産品質の作り込みまでは追いつかないケースも起きています。
クラウドファンディングの支援と量産品質は別物だと考えたほうがよさそうです。
読者が明日からできることは2つあります。
1つは、クラウドファンディングの新型ウェアラブルを検討するとき、公式発表だけでなく先行出荷を受け取った支援者の実機レポートを確認すること。
もう1つは、海外先行発売のスマートグラスに興味があるなら、個人輸入や保証の扱いを事前に調べておくことです。
まとめ
顔に乗るVR/ARデバイスは、この1ヶ月で軽さとブランド力を武器にする側と、量産の壁にぶつかる側の両方を見せつけました。
次に気になる新型が出てきたら、数字の裏に量産実績があるかどうかも一緒に確認してみてはいかがでしょうか。
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