「専門家」が偶然居合わせて防げた大惨事——モバイルバッテリー火災、去年1年で482件

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年8月16日 更新
「専門家」が偶然居合わせて防げた大惨事——モバイルバッテリー火災、去年1年で482件

台湾の新幹線車内で、座席の間に白っぽい粉が飛び散り、焼け焦げたポーチが床に転がっている。
8月10日、そんな写真とともに「モバイルバッテリーが過熱して煙が出た」という投稿がXで3,000件を超えるいいねを集めました。
幸い、たまたま乗り合わせていた「専門家」の対応で大事には至らなかったといいます。

この投稿を見て、日本でも同じことが起きているのではと調べてみると、消防庁が3月に公表したばかりのデータに行き着きました。
モバイルバッテリーが原因の火災は、2025年の1年間で482件。
あなたのカバンやリュックに入っているそれも、無関係ではないかもしれません。

先に結論をまとめると:
– モバイルバッテリー火災は2025年に482件発生、前年(290件)比66%増と急拡大している
– CBCテレビの調査では、市販品6個中5個で表示容量を下回り、中には表示の10分の1しかない粗悪品もあった
– PSEマーク(安全基準を満たした証の表示)は自主検査のため第三者チェックがなく、偽造マークも出回っている

Xで広がった「発煙」の目撃談

冒頭で紹介した投稿は、台湾の高速鉄道の車内で撮影されたものでした。
投稿者は「携帯やモバイルバッテリーを持っている人にはぜひ知っておいてほしい」と前置きした上で、乗り合わせていた「専門家」の対応のおかげで大きな火災を防げたと伝えています。

添付された写真には、座席の通路に白っぽい粉末が広範囲に散らばり、黒く焦げた巾着状の袋が床に置かれている様子が写っていました。
粉末は消火剤とみられ、乗客が座っていた足元一帯に飛び散っています。
車内には制服姿の係員らしき人物も確認でき、事後の対応に当たっている場面のようです。

投稿へのリプライでは「怖い」「他人事じゃない」といった反応が相次ぎました。
ただ、この投稿だけでは「台湾で起きた一件」で終わってしまいます。
日本ではどれくらいの頻度でこうした事故が起きているのか、公的なデータを確かめてみました。

調べて分かったこと

日本でも「対岸の火事」ではなかった

消防庁が2026年3月26日に公表した調査結果によると、モバイルバッテリーが原因の火災は2024年の290件から2025年には482件へと増加していました。
増加率は66%(消防庁の発表では「約7割増」と表現)で、リチウムイオン電池を使った製品の中でもモバイルバッテリーの増え方が際立っています。
出火原因を特定できたもののうち、外部からの衝撃を受けた場合や、高温下で使用・放置した場合が上位を占めていました。
満員電車でのかばん同士の圧迫や、炎天下の車内への放置が、実は火種になり得るということです。

なぜここまで増えているのでしょうか。
背景の一つと見られているのが、市場に出回っている製品そのものの品質です。

「容量は表示の10分の1」の粗悪品はどこから来るのか

CBCテレビが独自に行った調査では、市販されているモバイルバッテリー6個を検証しています。
その結果、5個で実際の容量が表示よりも少なく、中には表示の10分の1程度しかない製品もあったと報じられています。

モバイルバッテリーを含む一部の電気用品には「PSEマーク」の表示が義務付けられていますが、これはメーカーによる自主検査で、第三者機関のチェックを経ていません
取材では、検査を代行する会社への取材を通じて、ニセのPSEマークを付けた製品の存在も指摘されています。
正規に検査を通して費用をかけた製品と、検査を省いた製品とでは、1個あたり4,000〜5,000円ほどの価格差が生まれるといい、安さの裏に何があるかが見えてきます。

こうした実態を受け、消費者庁は信頼できるメーカーの製品を選ぶこと、そして本体の膨張や異臭など異常を感じたら使用をやめるよう呼びかけています。
Xでも「やっぱり日本製や大手メーカー品を選ぶべき」「価格だけで選んでいた自分が怖くなった」といった声が上がっており、購入時の基準を見直す動きが広がりつつあるようです。

Shiritomo GADGET編集部の考察

モバイルバッテリーは家電量販店だけでなく、100円ショップやネット通販の格安ストアでも当たり前に買えるようになりました。
その手軽さの裏で、検査体制が「自主申告」に依存している構造そのものが今回の問題の根っこにあります
第三者検査を義務化すれば価格は上がり、消費者の選択肢は狭まるかもしれません。
ですが、事故の増加ペースを見る限り、性善説だけに頼った制度設計は限界に近づいているのではないでしょうか。

実務的な対応としては、購入時にPSEマークの有無だけでなく、販売元の会社情報がきちんと明記されているか、極端に安すぎないかを確認することが挙げられます。
また、モバイルバッテリーの経年劣化も見逃せない要因です。
膨らみや発熱を感じたら「もったいない」と使い続けず、早めに手放す判断も必要でしょう。
今後は自治体やメーカー側での回収・リコール体制の整備が、次の焦点になりそうです。

まとめ

モバイルバッテリーの火災は、遠い国の出来事でも特殊な使い方をした結果でもなく、身近な製品選びと使い方の延長線上で起きています。
安さだけで選ばず、異常のサインを見逃さないことが、今できる一番の備えです。

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