「買っておいてよかった」の安堵、これから組む人の戸惑い――DDR5メモリが1年で4倍超えに膨らんだ理由
DDR5メモリ(パソコンの主記憶に使う規格の一つ)32GBキット、1年前は6万円もしませんでした。
いま国内の店頭では約6万円からと、実はまだ良心的な部類に入ります。
64GBキットになると8万〜11万円、128GBキットは30万円を超える値札が並んでいます。
これからパソコンを組もうとしている方、あるいはノートパソコンの買い替えを考えている方にとって、この値上がりは他人事ではありません。
パーツ単体だけでなく、完成品のパソコン本体の値段にもじわじわと反映され始めているからです。
先に結論をまとめると:
– DDR5メモリは容量帯によって1年で3〜4倍前後まで値上がりし、当面値下がりする見通しは立っていません
– 原因はAIデータセンター向けの特殊メモリにメーカーの生産ラインが奪われていること
– パソコンメーカーのVAIOも9月18日から本体価格を再値上げする予定で、パーツもPC本体も「待てば下がる」とは言いにくい局面が続いています
Xでの盛り上がり
きっかけの一つは、自作PCユーザーの投稿でした。
来月のボーナスでパーツを組もうと考えていたユーザーが、「来年になると価格が上がる」という噂を聞いて早めに購入したそうです。
それでも、既に値上がりの波にのまれていたという体験談です。
メモリ(DDR5の32GB)だけで2万7000円、SSDも合わせて2万6000円ほど、想定より値上がりしていたといいます。
来月の賞与時に組み立てようと思っているPCのパーツ
— つじ (@t_tsuji) 2026年5月14日
来年になると価格が上がるというお話が飛び交っていたので早めに購入した結果
メモリ(DDR5の32GB)が2万7千円高騰
(85,000円→112,000円)
SSD(CrucialのM.2の2TB)が
1万3千円高騰×2で2万6千円高騰
(37,000円×2→50,000円×2)…
「早めに動いたつもりだったのに、もう値上がりしていた」という感覚は、この半年でパーツを触った人の多くが共有しているようです。
ただ、個人の体験談だけでは「たまたま高い時期に買った」だけかもしれません。
そこで実際の価格推移を調べてみました。
調べて分かったこと
なぜここまで値上がりしたのか?
背景にあるのは、AI開発の過熱です。
データセンター向けの高性能メモリ「HBM(広帯域メモリ:AIの演算処理に使う高速・高価格なメモリ規格)」の需要が世界的に急増しています。
メーカーがそちらの生産に工場のラインを振り向けた結果、パソコン向けの一般的なDDR5メモリの供給が細り、価格が跳ね上がりました。
秋葉原の店頭価格を定点観測しているAKIBA PC Hotline!の投稿では、64GB×2枚組のキットで24万8000円という値札も報告されています。
DDR5を中心にメモリの暴騰が止まらず、64GB×2枚組で248,000円の例も [12月前半のメモリ価格](相場調査) https://t.co/yM7SeEe9f8 pic.twitter.com/w1sxV3B1Ns
— AKIBA PC Hotline! (秋葉原) (@watch_akiba) 2025年12月10日
さらに追い打ちをかけているのが、大手メーカーMicronが2025年12月に一般消費者向け市場からほぼ撤退したことです。
供給元は実質2社体制に減りました。
海外相場では、DDR5-4800の32GBキットが2025年8月の約90ドルから2026年8月には425ドルへ、1年で4.7倍まで上昇しました。
円安による輸入コスト増も重なっています。
パソコン本体の値段にも波及しているのか?
パーツ価格の上昇は、完成品のパソコンにも及んでいます。
VAIOは2026年4月にも個人向け・法人向けPC製品を値上げしたばかりですが、それからわずか5カ月後の9月18日から、再び価格を改定すると発表しました。
理由として同社が挙げるのは「生成AIの普及によるメモリ半導体の需要拡大」で、対象はアウトレット品と「Reborn VAIO」を除くほぼ全製品だといいます。
BTOパソコン(注文に応じてパーツを組み合わせて販売するパソコン)のカスタマイズ価格でも、同様の値上げが起きています。
ドスパラのカスタマイズ価格が値上げされた。なんてこった😓メモリDDR5-4800 32GBが+13,900円→+28,400円、SSD 1TBが+6,000円→+8,500円。 pic.twitter.com/54wCSlNZyH
— 管理人@ゲーミングPC徹底解剖 (@gamingpcsjp) 2025年12月4日
メモリ高騰はいつ落ち着くのか?
一番知りたいのはここでしょう。
専門メディアの分析では、今後の見通しとして3つのシナリオが挙げられています。
楽観的な見方でも年内に10〜15%程度下がる程度、最も現実的とされるのは2027年前半まで現在の水準が続くという予測です。
悲観的なシナリオでは、さらに10〜20%上昇するリスクも指摘されています。
「そのうち落ち着く」という前提で待つには、少し長すぎる時間軸かもしれません。
Shiritomo GADGET編集部の考察
過去にもメモリ・半導体不足による値上がりは何度かありました。
ただ、その多くは工場の稼働停止や物流の混乱といった一時的な供給トラブルが原因で、事態が収まれば価格も落ち着いていきました。
今回が厄介なのは、原因が一時的な事故ではなく、AIデータセンターという巨大かつ継続的な需要と、パソコン向けメモリの生産ラインを奪い合う構造そのものにある点です。
AI開発への投資が続く限り、メモリメーカーが「儲かるほう」に生産を寄せる力学は変わりにくいでしょう。
つまり、過去の値上がりのように「待てばそのうち元に戻る」という前提が、今回はそのまま当てはまらない可能性があります。
読者にとっての現実的な判断材料は一つです。
「必要になってから探す」より「必要になりそうな時期から逆算して早めに動く」ほうがリスクが小さい、という点ではないでしょうか。
VAIOのように本体価格への転嫁を予告してから実施する例は珍しくありません。
価格改定のアナウンスが出た直後は、駆け込み需要で店頭在庫が先に動くこともよくあります。
まとめ
DDR5メモリの高騰は一時的な品薄ではなく、AI需要という構造的な要因に支えられており、当面続く可能性が高いようです。
パソコンの購入や増設を考えている人は、値下がりを待つ前提そのものを一度疑ってみる価値がありそうです。