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「カップで口元を隠す」「後ろ姿だけ投稿」——若者がSNSで顔を出さない本当の理由

shiritomo | AI・SNS・話題のテック情報メディア by Hashout編集部 @shiritomoAI_jp 2026年5月6日 更新
「カップで口元を隠す」「後ろ姿だけ投稿」——若者がSNSで顔を出さない本当の理由

カフェで撮った写真を見せてもらうと、ちゃんと顔が映っていない。
カップで口元を隠していたり、後ろ姿だけだったり、窓枠越しの景色を前景に置いて自分はぼやけていたり。
最初は「うまく撮れなかった」のかと思っていたのですが、本人に聞くと全部意図的だと言います。

これ、最近のZ世代に広がっている「顔出しなし投稿」のスタイルです。
SNSに顔を出すことへの抵抗感が、思っていた以上に若い世代に根付いていると知って、気になって調べてみました。

SNS運用を仕事にしていると、「顔を出してリアルな声を届けよう」というアドバイスをする機会は多いです。
でも、若い世代にとっての「顔出しなし」は消極的な選択ではなく、むしろ積極的な意思表示なのかもしれない——調べれば調べるほど、そう感じるようになりました。

「顔が映るのは当たり前」ではなくなった

Yahoo!ニュースに掲載された特集記事によると、17歳のヒナさんは「加工した自撮りを投稿することへの抵抗感がある」と語っています。
20歳のさーちゃんさんは「顔より雰囲気を大事にしたい」という考えで、後ろ姿や横顔の写真を選んで投稿しているとのこと。
どちらも、「可愛く撮れた写真を見せびらかしたい」という従来の自撮り文化とは、明らかに異なる価値観です。

SHIBUYA109 lab.の調査では、Z世代の75.6%が「顔が映った写真をSNSに投稿することに抵抗がある」と回答しています。
具体的な撮影スタイルとしては、鏡越しの写真(56.9%)、横向き・後ろ姿(43.6%)、スマホで顔を隠す(43.3%)が多く使われていました。
「自分の姿がすべて映ることは当たり前ではない」という感覚が、半数近い若者に浸透しているわけです。

Xで広がる「顔出しなし」の声

Xのタイムラインでも、「顔出しはネットリテラシーの基本として避けている」という声が以前から相次いでいます。
「身バレが怖い」「投資家としてのアカウントと趣味アカウントを分けている」「オタク活動はリアルにバレたくない」といった実利的な理由が多く、プライバシー意識というよりも「リスク管理」として捉えているユーザーが目立ちます。

こうした流れは若者に限りません。
Yahoo!ニュースの記事でも触れられていたように、投資家やオタクコミュニティなど、特定の属性を持つユーザーが「顔出しなし」を徹底することで身を守るという文化は、世代を超えて浸透しつつあります。

なぜ顔を出したくないのか——3つの理由

① 身バレ・特定リスクへの現実的な対応

学校名・バイト先・自宅周辺など、写真の背景から本人を特定してしまうリスクを、若者たちはリアルな脅威として認識しています。
コメント欄やDMでの嫌がらせ、いわゆる「特定班」による個人情報収集が今もSNS上で起きていることを、Z世代はよく知っています。
「映えより安全」という優先順位が、自然と顔出しを遠ざけています。

② マスク文化が「顔を隠す」ことを自然にした

博報堂の研究員は「マスク文化の延長で、顔を隠すことが自己防衛の手段として自然に受け入れられている」と分析しています。
コロナ禍以降、顔の一部を隠した状態が社会的に認められた経験が、SNSにおける「顔出しなし」スタイルへの心理的なハードルを下げた、という見方です。
たしかに、マスク姿が日常だった数年間を経た後では、「顔を全部見せる」ことの方が特別な行為に感じられるかもしれません。

③ 「承認欲求」から「接続欲求」へ

Z世代のSNS研究では、「広く浅く発信して承認を得る」スタイルから「狭く深く共有して接続する」スタイルへのシフトが指摘されています。
インスタのClosefriendsやBeRealといった、限られた相手に向けた投稿が支持されているのも、この流れの表れです。
「不特定多数に見せる」ことを前提としない投稿スタイルに変わってきている以上、顔を出す必要性もまた薄れていくのかもしれません。

SNSマーケターへの示唆

「商品を使っている自分の顔をタグ付きで投稿してください」というUGCキャンペーンは、Z世代には響きにくくなっています。

代わりに効果的なのは、顔を出さなくても参加できる投稿形式の設計です。
「商品だけのフラットレイ」「手元だけのクローズアップ」「雰囲気が伝わる後ろ姿・横顔OK」という条件を明示するだけで、投稿のハードルが大幅に下がります。
「顔を出さなくてもおしゃれに投稿できる体験」を設計した方が、Z世代からの自然なUGC拡散につながるでしょう。

また、「インフルエンサーを起用して顔出しで宣伝」という施策も、若者向けには慎重に設計が必要です。
顔を出しているインフルエンサーに共感するのは、同じように顔を出すことに抵抗がないユーザーに限られる可能性があります。
顔出しなしのスタイルで発信しているクリエイターと組む選択肢も、ターゲット層によっては有効です。

さらに深掘りしたい方へ

まとめ

「顔出しなし」は若者のマナー違反でも消極的な選択でもなく、プライバシー意識とリスク管理が交差した積極的なスタイルです。
SNSマーケターにとっては、若者のUGC設計の前提を見直す良いタイミングかもしれません。