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「気持ちよく騙されるの気持ちいい」──菊正宗の60周年動画、38テイクに込めた仕掛け

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年8月29日 更新
「気持ちよく騙されるの気持ちいい」──菊正宗の60周年動画、38テイクに込めた仕掛け

「瓶詰め樽酒発売60周年記念!」。
日本酒メーカー・菊正宗の公式X(@kikumasa_kimoto)が2026年8月27日夕方に投稿したのは、この短い一文と絵文字だけでした。
それから1日足らずで、「いいね」は2.7万件を超え、表示回数(インプレッション:投稿が表示された延べ回数)は900万回を超えました

企業の公式アカウントが動画を出しても反応が薄い、と悩んでいる運用担当者は少なくないはずです。
この投稿はなぜここまで伸びたのか。
中身を見ていくと、動画の出来だけでなく、その後の「見せ方」にも理由がありそうでした。

先に結論をまとめると:
– 60周年記念動画は投稿から1日足らずで2.7万いいね・900万インプレッション超を記録
– 漫画家の内藤泰弘氏(@nightow)ら著名アカウントの引用リツイートが拡散を後押しした
– 「38テイク」という撮影の裏側を自ら明かした続報投稿が、動画の信頼感を補強している

何が起きたのか、菊正宗の記念動画に何が写っていたか

投稿された動画そのものの結末は確認できていませんが、冒頭の静止画からは場面の雰囲気が伝わってきます。
サングラスをかけた男女2人が、菰樽(こもだる:わらで包んだ酒樽)を背に、お揃いの紺色のポロシャツで並んで立っています。
手前の丸いテーブルには、日本酒の入ったグラスが1つ置かれていました。
積み上げられた樽には「菊正宗」の文字と菊の花のラベルが並び、背景だけでブランドが一目で分かる構図です。

元の投稿には、こう書かれています。

反響の中心は、動画そのものよりも「オチ」に集まっていました。
引用リツイートには「オチをつけるのが関西人のいいところ」「絶対最後までみるの!」といった声が並び、内容を明かさずに「見てほしい」と勧める投稿が目立ちます。
中でも目を引いたのが、漫画『トライガン』の作者として知られる内藤泰弘氏(@nightow)による引用でした。

「気持ちよく騙されるの気持ちいい。」という短い一言だけの投稿ですが、いいねは2.5万件を超え、表示回数は350万回に迫っています。
フォロワー数の多い著名人が短く感想を添えて拡散する、いわば「太い導線」が本アカウント以外からも生まれたことになります。
ただ、いいねや引用の数字だけを見ていても、なぜここまで気持ちよく「騙された」と感じさせられたのかは分かりません。
撮影の裏側を追ってみることにしました。

調べて分かったこと

「38テイク」の裏側はなぜ明かされたのか

元の動画からほどなくして同日中に、菊正宗の公式アカウントは続報を投稿しています。

「たまにはオフショットをお届け!🎥 これ、簡単そうに見えて意外と難しいんです!📷🇦🇹 #トータル38テイク」という文面から、公開した動画のワンシーンを撮り切るまでに38回撮り直したとみられます
この投稿のいいねは253件と、元動画に比べれば小規模ですが、「簡単そうに見えて実は難しい」場面を人力で作り上げたという事実そのものが、視聴者の「気持ちよく騙された」という感想を裏側から支えている構図です。
CGでも生成AIでもなく、人が何度も撮り直して仕上げた一瞬だと分かった上で見返すと、動画の印象がもう一段変わってきます。

これは偶然の効果ではなさそうです。
引用リツイートの中には「こういうのを見るとまず生成AIを疑ってしまうような時代に良いオチのつけ方をしたセンスある映像広告と思った」という指摘もありました。

この投稿は1万3千件を超えるいいねを集めており、動画の完成度そのものだけでなく「本当に人が撮ったのか」という視点で評価が広がっていたことがうかがえます。
ここに、38テイクという裏側の情報公開が答え合わせのように機能したと考えられます。

バズる動画はどう作れば作れるのか

「うちの会社でもこういう動画をバズらせたい」と考える運用担当者は多いはずです。
実際、「バズる動画」という言葉の検索需要は月間260件前後で、直近1年ほぼ横ばい(跳ね1.0倍)と、一時的な話題ではなく常に一定数の人が調べ続けているテーマです。
「バズる動画の作り方」で調べる人も月140件ほどいます。

今回の事例からヒントを挙げるなら、①動作や仕掛けそのものより「オチ」を伏せて見せる引きの強さ、②撮影の苦労を隠さず公開して信頼感を補う続報の出し方、の2点が挙げられます。
派手な演出よりも、視聴者に「最後まで見たくなる」余白を残すことと、見た後の裏側まで含めて楽しませることが、拡散の後押しになっていました。

なお、瓶詰め樽酒は1966年発売のロングセラー商品で、2016年に発売50周年、2021年に発売55周年のキャンペーンを実施した実績があります。
今回の「60周年」はその延長線上にある取り組みで、老舗ブランドが節目の年ごとに施策を積み重ねてきた結果とも言えそうです。
生酛造り(きもとづくり:伝統的な手法による日本酒の仕込み方)で醸した辛口酒を吉野杉の樽で貯蔵し、香りの良い飲み頃に瓶詰めするというのが、この商品の一貫した特徴です。

Shiritomo編集部の考察:真似すべきは「動画の作り」より「見せる順番」

今回の反応で目を引くのは、動画本体(2.7万いいね)と続報のオフショット(253いいね)の差の大きさではありません。
いいね数こそ小さくても、オフショット投稿が公開された流れそのものが、引用リツイートでの「本当に人が撮ったのか」という疑問に先回りして答える役割を果たしていた点です。
生成AIによる映像が身近になった今、視聴者はまず「これは本物か」を疑う癖がついています。
その疑いに対して「38テイク」という具体的な数字を自ら開示したことが、動画単体では得られない信頼感を後から積み増していました。
企業アカウントの運用としては、1本の動画で完結させるのではなく、反応が伸び始めたタイミングで「作り方」を見せる二の矢を用意しておく設計が、今後さらに有効になっていくのではないでしょうか。

まとめ

菊正宗の60周年記念動画は、動画そのものの完成度に加えて、著名アカウントによる拡散と「38テイク」という裏側の開示が重なったことで、2.7万いいね・900万インプレッション超という反応につながりました。
オチを伏せた引きの強さと、撮影の苦労を隠さない続報の出し方は、他の企業アカウントにもそのまま参考になりそうです。

さらに深掘りしたい方へ

瓶詰め樽酒の商品説明や生酛造りの詳しい解説は、菊正宗の公式ブランドサイトで確認できます。