「情弱ぼったくり価格」――医師会HPの見積もり60万円にAIで作れの声、専門家は逆の懸念
医師会のホームページを新しく立ち上げる打ち合わせで示された見積もりは、初期費用60万円、管理維持費は月額2万5000円だったといいます。
この内容をXに投稿した開業医は、Claudeのような生成AIを使えば同じレベルのサイトは一瞬で作れるとして、見積もりを「情弱ぼったくり価格」と断じました。
この投稿には「言うべきか、このまま流すべきか」という迷いも添えられていましたが、結果的に大きな議論に発展しています。
AI活用を発信する立場でも、SNS運用に関わる立場でも気になるのは、「AIで安く済む仕事」と「専門家に任せるべき仕事」の線引きがどこにあるかという点でしょう。
実際の相場や、受託開発に詳しい人たちの反論を確認しました。
先に結論をまとめると:
– ある開業医が医師会HPの見積もり(初期60万円・月額2万5000円)を「情弱ぼったくり価格」とXで批判し、議論が広がりました
– 一般的な企業サイトの制作相場は初期20万〜150万円、維持費は月1万〜3万円が目安で、60万円という金額自体は中小企業向けの標準的な範囲に収まります
– ただし医師会のような組織サイトは会員の個人情報を扱うデータベースや組織内の意思決定プロセスが絡むため、受託開発に詳しい専門家からは「安すぎる」という逆の指摘も出ています
何が起きたのか
発端になったのは、次の投稿です。
今、医師会でホームページ立ち上げの打合せが始まってるけど、初期費用600,000円であとは管理維持費に月額25,000円らしい
— ぼくねん医 (@hotspring_on) 2026年9月28日
Claudeに任せれば一瞬のレベルのホームページでマジで情弱ぼったくり価格
これは言うべきか、このまま流すべきか…
医師会というと権威のある組織のイメージがありますが、実際のホームページ制作は一般的な中小企業と同じように外部業者へ発注されており、その見積もり額がそのままXに晒された形です。
投稿者は医療現場でAIを日常的に使っている立場から、「この金額ならAIで十分では」という率直な疑問を投げかけていました。
ただ、この投稿だけでは「60万円が本当に高いのか」「AIで本当に代替できるのか」は分かりません。
実際の相場と、受託開発の現場からの反応を確認してみました。
調べて分かったこと
ホームページ制作の相場は、結局いくらなのか
複数の制作会社の料金情報を確認したところ、中小企業向けホームページの制作相場は、小規模な紹介サイトで20万〜50万円、標準的な企業サイトで50万〜100万円、制作会社に依頼する場合は80万〜150万円が目安とされています。
維持費についても、制作会社経由なら月1万〜3万円が一般的な範囲です。
この相場だけを見ると、医師会HPの初期費用60万円・月額2万5000円という金額は、中小企業向けの標準的な範囲に収まっており、突出して高いとは言えません。
専門家が「安すぎる」と指摘する理由は何か
一方で、受託開発に詳しい人たちの反応は、投稿とは逆方向でした。
IT業界側からは、次のような反論が上がっています。
医者がIT業界に対して「ホームページ制作なんてAIに任せれば安い値段で簡単に作れるよね」と意見している件。
— マスクド・アナライズ 本「会社で使えるChatGPT」好評発売中 (@maskedanl) 2026年9月29日
逆にIT業界の人間が医者に向かって「AIがあれば病気の診断や治療なんで、医者がいなくても簡単だよね」と言い出したら、どう思うかを考えるべきだと思う。 https://t.co/jnpNgwBsuV
医師会のホームページが扱うのは、単なる紹介文ではなく全国の会員医師の個人情報を含む会員データベースです。
この領域に詳しい専門家の分析によれば、会員管理システムの開発費用は一般的に100万〜200万円が相場とされ、医療機関向けの同種システムでは520万〜1,100万円規模の事例もあるといいます(note「医師会ホームページ60万円はぼったくり批判は本当か?」)。
この観点に立つと、60万円という金額には、会員情報を守るためのセキュリティ対策や要件定義にかかる費用が十分に含まれていない可能性があるという指摘です。
AIで作れる部分と、組織だからこそ必要な部分
見た目が整ったホームページ自体は、AIのツールを使えば個人でも短時間で作れる時代になっています。
ただし医師会のような組織の場合、サイトを作って終わりではなく、理事会での承認や委員会での意見調整、原稿の催促といった組織運営上のやり取りが継続的に発生します。
現役医師による分析でも、役員が任期制で入れ替わる組織では、個人がホームページの管理を担うと「その人が辞められなくなる」リスクがあるため、外部の業者に任せること自体には合理性があると指摘されています(note「医師会のホームページ60万円は高いのか」)。
つまり、価格だけを個人サイトの感覚で比べると見えにくい、組織運営ならではのコストが背景にあるということです。
Shiritomo編集部の考察:「安い/高い」は比較対象で逆転する
今回の件が興味深いのは、同じ60万円という数字に対して「ぼったくり」と「安すぎる」という正反対の評価が同時に出た点です。
これは医師会HPを「個人のホームページ」の延長として見るか、「会員の個人情報を預かる組織システム」として見るかで、適正価格の基準そのものが変わってしまうためだと考えられます。
SNS上でAI活用の事例が拡散するとき、多くは個人や小規模事業者の成功体験であり、組織特有の意思決定コストやセキュリティ要件は視野に入りにくい構造があります。
AI活用の発信をする側としては、「AIで代替できた」という投稿を見たときに、相手が個人なのか組織なのか、また守るべき情報の性質が何かを合わせて見る視点を持っておくと、話題を正しく読み解きやすくなるでしょう。
今後、AIによる低コスト化の事例とセキュリティ・組織統治の必要性を巡る議論は、医師会に限らず士業団体や自治会など他の組織にも広がっていく可能性があります。
まとめ
医師会HPの60万円という見積もりは、一般的な中小企業サイトの相場としては標準的な範囲ですが、会員の個人情報を扱う組織システムとして見ると「安すぎる」という専門家の指摘もあります。
AIで代替できるかどうかは、個人サイトか組織システムかという前提の違いによって変わってくるようです。
さらに深掘りしたい方へ
ホームページ制作費用の相場についてさらに詳しく知りたい方は、ホームページ作成費用の相場と内訳の解説記事も参考になります。
医師会HPを巡る専門家の反論の全文は、会員データベースのコスト構造を分析したnote記事で読めます。
