「生成AIで作られていて目が滑るから気持ち悪い」——外注のAI活用で質が落ちたと感じるクリエイターたち
「目が滑るから気持ち悪い」。
産直の直売所に立てられた、生成AI製とおぼしき一枚のポップに、あるX利用者がそう投稿しました。
翌日、同じ場所に行くと生産者による手描きの巨大なポップに差し替えられていたといいます。
似たような「外注先がAIに任せた途端、なんだか質が落ちた」という声が、いまイラストや漫画の制作現場でも相次いで語られています。
発注する側にとっても、他人事では済みません。
成果物のクオリティをどう見極めるか、その基準そのものが揺らぎ始めているからです。
先に結論をまとめると:
– 外注先が生成AIを使い始めてから仕上がりの質が落ちた、という体験談がXで相次いで共有されています
– 問題視されているのは生成AIそのものというより、確認や修正の手間を省く「使い方」だという指摘が出ています
– 発注する側も、成果物を最終チェックする目——いわゆる審美眼——を手放さない姿勢が求められそうです
外注先のAI活用で何が起きているのか
X上では9月中旬から、外注先が生成AIを使い始めた途端に成果物の質が下がった、という体験談が相次いで共有されています。
漫画家や編集者を名乗るアカウントから「審美眼が失われつつある」「AI使用を理由に発注を控える動きが出ている」といった声も伝えられていますが、編集部で本人の投稿そのものを一次情報として確認できたわけではないため、特定の個人の発言としては扱わず、以下では実際に確認できた投稿だけを取り上げます。
同じタイミングで、実際に似た体験を語る投稿がXで拡散していました。
この間産直のポップが生成AIで作られていて目が滑るから気持ち悪いとポストしたんですけど、今日行ったら生産者さんによるクソデカ手描きポップが掲げられていて大変よかったです。
— ヨシタカユキコ (@YOSHITAKA_log) 2026年9月19日
生成AIで作られたポップに「目が滑る」と感じ、手描きのポップに差し替えられて安心した——この投稿には1万件を超える「いいね」が集まっており、「効率化のつもりが逆に伝わらなくなる」という感覚への共感が広がったことがうかがえます。
ただ、この一件だけでは「生成AIそのものが悪い」のか「使い方の問題」なのか、判断はつきません。
そこで、外注現場で具体的に何が起きているのかを掘り下げてみました。
調べて分かったこと
なぜ審美眼の喪失が心配されているのか
外注先の生成AI活用で懸念されているのは、単に「AIっぽい絵が納品される」ことだけではないようです。
むしろ問題は、その事実が発注者に伝わりにくくなっている点にあります。
Xでは、こんな指摘も出ていました。
生成AI使用がバレた際、「外部のイラストレーターの希望により名前を伏せます」案件が多すぎない? ぶっちゃけた話、そんなイラストレーターいるの??
— 鐘の音(除夜の鐘)脳年齢35歳 (@kanenooto7248) 2026年9月19日
「外部のイラストレーターの希望により名前を伏せます」という説明とともに生成AIの使用が発覚する案件が目立つ、という趣旨の投稿です。
実在するイラストレーターが本当にそう希望しているのか確認しようがないという点が、この投稿の核心にある疑問でしょう。
発注側が「誰が」「どう作ったか」を追いにくくなれば、質を見極める目そのものが鈍っていく——これが審美眼の喪失という懸念の正体に近いようです。
生成AI自体が悪いのか、使う側の姿勢が問題なのか
一方で、AIの登場前から似た問題があったという指摘もあります。
生成Aiが出るまでは平和だった
— シンノ-Illustrator- (@shinno_Arts) 2026年9月19日
というわけでは決してなく無断転載もトレパクもあったしなんか"加工師"と名乗る謎の人たちがいて他人のイラストを彩度ガンガンにあげてガサガサのフォントで文字入れして「あなたのイラストをカッコよく加工しました」とか言ってDM来たりしてた。
道具は使いようだね。
他人のイラストを許可なく彩度や文字入れで加工し「カッコよく加工しました」と持ちかける“加工師”のような存在は、生成AI以前から存在していたという内容です。
投稿は「道具は使いようだね」という一言で締めくくられており、問題の本質が技術そのものではなく、使う人間の姿勢にあることを示唆しています。
なお、「AIに頼り切ることで判断力そのものが鈍るリスクがある」という指摘も一部で伝えられていますが、編集部で一次ソースを確認できていないため、この記事では断定材料には含めていません。
発注する側は、AIイラストの見分け方をどう身につければいいのか
実務的な悩みとして、「外注先がAIを使っているかどうか、どう確認すればいいのか」という疑問は今後も繰り返し出てきそうです。
「AIイラストの見分け方」という検索は今後も継続的に発生するとみられ、一過性の話題では終わらなそうです。
分かりやすい見分け方が確立されているわけではありませんが、いくつか手がかりはあります。
指先や背景文字、影の向きといった細部の不自然さ、同じ作家なのに過去作とタッチが急に変わっていないか、修正依頼への対応スピードが不自然に早すぎないか、といった点です。
ただし、こうした違和感だけで「生成AIだ」と決めつけるのは禁物です。
世の中は広いので「チート級に上手いっすね」「今日可愛いね、どこのクリニック?」「走るの速すぎてドーピング疑うレベル」とかを褒め言葉として使う方もいるのだろうけど、その言い方には品が無いし一般的には侮辱だと覚えておいた方が良い。
— 絵師の愚痴垢 (@aruguchieshi) 2026年9月18日
絵に対して「生成AIかと思った」も同じ。下品な侮辱。
絵を見て「生成AIかと思った」と口にすることは、本人が生成AIを使っていなければ単なる侮辱になる、という投稿です。
発注前の見極めは大切ですが、根拠のない疑いをそのまま相手にぶつけることとは分けて考える必要がありそうです。
Shiritomo編集部の考察:発注担当者が明日からできること
SNSやコンテンツ制作の発注に日々関わる立場から見ると、今回の話は「値段」や「納期」だけで発注先を選ぶ従来のフローを見直すきっかけになる内容です。
生成AIの活用自体を一律で禁止するのは現実的ではありませんが、納品物の最終チェックを人間の目で行う工程を発注フローに明示的に組み込むことは、今すぐにできる対策です。
ラフや途中経過の共有を条件にする、修正依頼への対応内容を細かく確認するといった運用面の工夫だけでも、質の低下を早い段階で察知できる可能性は高まります。
「AIを使ったかどうか」を問い詰めるより、「仕上がりが求める水準に届いているか」を都度確認する体制のほうが、長期的には実務に馴染むのではないでしょうか。
まとめ
生成AIの外注活用で質が落ちたという体験談は、AI自体の是非というより、発注者・受注者の双方が最終確認を怠っていないかを問い直すきっかけになっています。
便利さに乗じて確認作業を省いた瞬間、質は静かに下がっていくのかもしれません。

