ビデオ通話の「その顔」は本物ですか?リアルタイムディープフェイク詐欺が世界で急増中

shiritomo | AI・SNS・話題のテック情報メディア by Hashout編集部 @shiritomoAI_jp 2026年5月20日 更新
ビデオ通話の「その顔」は本物ですか?リアルタイムディープフェイク詐欺が世界で急増中

「画面の向こうにいる上司の顔が、実は偽物だったら?」——少し前なら冗談にしか聞こえなかったこの話が、2026年に現実の脅威として動き出しています。

Xではここ数週間、リアルタイムでの顔すり替え技術を使った詐欺動画の拡散が相次いで報告されています。
ビデオ通話中に相手の顔をリアルタイムで別人にすり替えるこの技術が、詐欺師に悪用される事例が世界各地で増加しているのです。

「本人と話しているつもりが……」という詐欺の手口

セキュリティ研究機関の調査によると、「Haotian AI(皓天AI)」と呼ばれるソフトウェアがZoom・WhatsApp・Teams上でのリアルタイム顔すり替えを可能にしており、詐欺グループに広く使われています。
経営幹部や著名人の顔に入れ替えてビデオ通話を行い、偽の指示を出したり、送金を促したりする手口です。

実際、ある防犯企業が公開した検証動画では、一人の人物がウィル・スミスの顔をリアルタイムで重ね合わせながら会話するデモが披露されました。
品質は「すぐに偽物とわかるレベル」ではなく、自然な表情や動きも忠実に再現されています。

このフランス語の投稿では「驚くべき同時に不安な技術だ」と評され、Incogniaという詐欺防止企業のデモ動画が引用されています。
(日本語訳:「本物と区別がつかないレベルで、Will Smithの顔を別人に重ねて話しているリアルタイム映像。
デジタルIDが脅かされている」)

規模は「氷山の一角」——世界の被害額は2190億円超

報告されている被害は深刻な水準に達しています。
ディープフェイクを使った詐欺の直接的な損失は世界で21億9000万ドル(約3290億円)以上に上り、うち16億5000万ドルが2025年だけで発生しています

なかでも急増しているのが、CFO(最高財務責任者)や経営幹部を装ったビデオ通話詐欺です。
攻撃者がZoom会議に上司に見せかけた顔で参加し、緊急の資金移動を指示するシナリオが多数報告されています。

2026年5月にはシンガポール警察と金融機関が連携して500件以上の進行中の詐欺を一斉摘発しました。

「HELLO BOSS」と題されたこのポストは、中国発のリアルタイムディープフェイクソフトが世界中の詐欺を支えている実態を伝える調査報道記事を紹介しており、「これは恐ろしい」というコメントとともに多くの人に拡散されました。
(元記事(英語): “Inside the Chinese Realtime Deepfake Software Powering Scams Around the World”)

一次情報で確認した対策と現実

404 Mediaの調査報道によれば、詐欺グループは「AIモデル」と呼ばれる実在の人間を雇い、その顔にディープフェイクを重ねる二段階の手口を使うことも増えています。
AIだけに頼らず、人間の動きや表情の自然さと組み合わせることで、見破られにくくしているのです。

現時点では「ビデオ通話だから本物」という認識が最大の落とし穴になっています
企業の情報セキュリティ担当者の間では、重要な取引前にコードワードで確認する手順や、独立した通信経路での追加確認が推奨され始めています。

EUのAI法が2026年から本格適用されており、ディープフェイク動画への警告表示や制作者の開示義務が段階的に導入されています。
日本でも対策の議論が始まりつつありますが、技術の進化に法整備が追いついていない状況が続いています。

さらに深掘りしたい方へ

まとめ

ビデオ通話の顔を信頼する時代は、静かに終わりを告げつつあります。
リアルタイムディープフェイクは「SFの話」から「明日の脅威」へと移行しています。
見知った顔の向こうに何があるか——問い直す習慣が、これからのデジタル時代には必要になるでしょう。