AI動画生成に電子レンジ1時間分の電力、番組で衝撃の事実

shiritomo | AI・SNS・話題のテック情報メディア by Hashout編集部 @shiritomoAI_jp 2026年5月24日 更新
AI動画生成に電子レンジ1時間分の電力、番組で衝撃の事実

突然ですが、5秒間の動画を作るのに、どれくらいの電力が必要だと思いますか?

先日、テレビ朝日の「池上彰のニュースそうだったのか!!」で、この問いへの答えが紹介されて話題になりました。
答えは——電子レンジを1時間回し続けるのと同じ電力。
つまり、約1kWh。
それが、AI動画生成のリアルな「エネルギーコスト」です。

SNSでは「え、そんなに?」「気軽に使ってたけど…」という声が広がり、番組は大きな反響を呼びました。

番組にはタレントの大久保波留さんも出演し、話題の広がりに一役買いました。

AIが「便利なツール」として日常に溶け込むいま、その裏側で何が起きているのか。
数字を追っていくと、思った以上に大きな絵が見えてきます。

「5秒の動画=電子レンジ1時間」——MITの研究が示した数字の重さ

番組で紹介された数字の出どころは、MITテクノロジーレビューが2025年に報じた研究です。

AIと気候変動の研究者であるSasha Luccioni氏(Hugging Face所属)が、「Code Carbon」というツールを使って動画生成AIのエネルギー消費量を計測したところ、最新モデルで5秒の動画を1本生成するのに約340万ジュール、およそ944Wh(≒1kWh)のエネルギーが必要だとわかりました。

電子レンジの消費電力は一般的に約1,000W。
つまり1時間フル稼働させたときの消費電力とほぼ同じです。
しかも、これは「低品質」の動画の話。
同じモデルの旧バージョンと比べると、品質が上がった代わりにエネルギー消費は実に700倍以上に跳ね上がっているそうです。

「たった5秒の動画に1kWh」——この数字を聞いた瞬間、スマホで気軽に動画を生成していた自分の行動が少し違って見えてきます。

画像生成との比較でいえば、高品質な静止画を作るのに必要なエネルギーは動画の700分の1以下。
動画はそれだけ計算量が多く、電力を食う処理なのです。

データセンターが街を熱くしている——「データヒートアイランド効果」とIEAの予測

エネルギー消費の話はAI動画だけではとどまりません。

2026年4月に発表された国際的な研究チームの報告によると、世界中のデータセンターから放出される排熱が、周辺半径10km以内の地表面温度を平均で2℃上昇させていることが明らかになりました。
研究チームはこの現象を「データヒートアイランド効果」と名づけています。

都市のヒートアイランド現象はビルや道路の熱として知られていますが、その「主因」がデータセンターだとするこの研究は、世界3億4000万人に影響が及ぶ可能性も指摘しています。
日本の夏が「なぜこれほど暑いのか」という問いに、AIインフラが一役買っているかもしれない——そんな視点で見ると、身近な問題として感じられます。

IEA(国際エネルギー機関)の予測は、さらに長期的なスパンで警告を鳴らしています。

2022年時点でデータセンターの世界の電力消費は約460TWh。
これが2026年には最大1,050TWhに達する可能性があるとされ、これは日本全体の年間消費電力量に匹敵する規模です。
また、2025年にはAI特化型データセンターの電力消費が前年比50%増という急成長を記録し、2030年までにはさらに3倍になると見込まれています。

「AIが日本一国分の電力を食う時代」——数字の大きさが現実感を失わせるほどです。

省エネに向けて動く業界、でも「需要」はその先をいく

こうした問題に対して、業界側も手をこまねいているわけではありません。

冷却技術の革新は特に注目されています。
従来の空冷方式に代わり、サーバーを高熱伝導性の液体に直接浸す「液浸冷却」が普及しつつあり、冷却に使う電力を大幅に削減できるとされています。
日本でもNTTデータやKDDI、富士通などが省エネ型のデータセンター開発を進めており、大成建設やENEOSといった異業種からも参入が相次いでいます。

AI側でも効率化の動きがあります。
ある大手通信会社は、従来モデルと比べて学習コストを最大300分の1、推論コストを約70分の1に削減したエネルギー効率の高いAIモデルを開発したと発表しました。
また、政府レベルでも、省エネ・非化石転換法に基づき、2030年までにデータセンターの40%以上でエネルギー効率改善を達成する目標が掲げられています。

ただ、課題はこれらの効率化を「需要の増加スピード」が上回りかねない点です。
AIが普及すればするほど動画生成の総件数も増え、1件あたりのエネルギーが減っても全体の消費は増え続けるという構造が続きます。

テクノロジーの進化と環境負荷のトレードオフをどう考えるか——これはユーザー一人ひとりに突きつけられた問いでもあります。

さらに深掘りしたい方へ

まとめ

「池上彰のニュースそうだったのか!!」で取り上げられた「5秒のAI動画=電子レンジ1時間分の電力」というデータは、MITや IEAといった機関が裏付ける紛れもない事実です。

AIの便利さを享受しながら、その裏側にあるエネルギーコストを知っておくこと。
それが、テクノロジーと付き合う上での最初の一歩ではないでしょうか。
省エネ技術や政策も動き始めていますが、業界全体の答えが出るまでの間、「使う量」を少し意識するだけでも変わることがあるかもしれません。