「AIが書いたコード、あなたは読んでいますか?」——エンジニアを二分する議論の正体
「最近は自分でコードを書いてないし、AIが書いたコードも読んでない」——こんな発言がXで話題になっています。
ベテランエンジニアのように聞こえるこの言葉に対して、ある人はうなずき、ある人は眉をひそめました。
AIコーディングツールが普及した2026年の今、エンジニアのコミュニティでは「AI生成コードをエンジニアは読むべきか」という問いを巡って、活発な議論が起きています。
きっかけはVercelのエンジニアの投稿
議論の火付け役のひとつになったのは、VercelのエンジニアLee Robinson氏の投稿です。
「AI生成コードが本番環境で問題を起こす事例を見てきた。
エンジニアはシステムを理解すべきだ」という主張で、「コードを理解せずに生産環境に投入することへの警鐘」として受け取られました。
この投稿に対して、日本のエンジニアコミュニティでも「読む派」「読まない派」が真っ向から対立しました。
「読まない派」の言い分
「読まない派」の代表的な主張は、「外注と同じだ」という考え方です。
プロジェクト全体の仕様さえ把握できていれば、コードの一行一行を理解する必要はない——業界の著名エンジニアの間でも、こうした意見が多く聞かれます。

AIツールが普及したことで「抽象度が上がった」という表現をするエンジニアもいます。
将棋のAIが人間の理解を超えた手を指すように、コーディングも同様の変化が起きている、と。
設計と検証に専念できれば、実装は任せてよいという考え方です。
Xでもこんな投稿が注目を集めました。
熟練のエンジニアが言う「最近は自分でコード書いてないし、もう AI が書いたコードも読んでない」はテストの直前の「全然勉強してない」と同じぐらい信用したらダメなやつだと思ってる
— Shinya Kato (@0x19f) 2026年5月25日
(たぶんみんな普通に AI が書いたコードも読んでるし、必要なところは部分的に自分で書いてる)
「テスト直前の『全然勉強してない』と同じくらい信用したらダメ」という辛辣な視点は、「読まない」と言いながら実際はちゃんと見ているベテランへの皮肉として読む人も多く、笑いとともに拡散されています。
「読む派」の言い分
一方、「読む派」は「コードの責任は最終的にエンジニアが負う」と強調します。
AIが書いたコードを理解せずに本番に上げた場合、バグが発生したときに原因を特定するのが極めて難しくなります。
特に複雑なビジネスロジックが絡む部分では、「AIが書いたから仕方ない」では済まない場面も多いでしょう。

業界調査では、AI生成コードに関連するバグを経験したエンジニアが78%に上るというデータもあり、品質管理の重要性が改めて浮かび上がっています。
この議論に対して、こんな本質的な指摘も飛び出しています。
AIにコーディングさせて人間がレビューしてたらどう考えても人間が物凄いボトルネックになるわけで、人間がコードを読むべきか否かなんて話じゃなくて、どうすれば人間はコードを読まずにAI生成のコードの品質を担保できるかって話だと思うんだけどな
— せん (@S_SenSq) 2026年5月25日
AIにコーディングをさせて人間がレビューするなら、「人間がボトルネックになるのでは?」という問いかけは、そもそもの開発プロセスを根本から見直すべきだという提言でもあります。
「読む・読まない」より大切なこと
この議論を整理してみると、実は「読む・読まない」は本質的な問いではないと気づきます。
大切なのは、コードの内容ではなく、システムの振る舞いを理解しているかという点です。
テストを書く、差分を確認する、ドキュメントを読む——コードを一行ずつ追わなくても、システムを把握する手段はいくつもあります。
エンジニアの役割は「コードを書く人」から「AIを使って正しく動くシステムを設計・検証する人」へと移行しつつあります。
「コードを読むか」という問いよりも、「自分はこのシステムを責任を持って説明できるか」という問いの方が、これからのエンジニアには重要かもしれません。
基礎的なコンピュータサイエンスの知識がなければ、AIが書いたコードの品質を評価すること自体が難しくなります。
「コードを読まなくていい」は、「CSの基礎が要らない」ではないということは、多くのエンジニアが共通して指摘しています。
さらに深掘りしたい方へ
まとめ
「AIが書いたコードを読むべきか」という問いは、今のエンジニアが直面している根本的な変化を映し出しています。
答えは「読む・読まない」の二択ではなく、「自分がそのシステムの動作に責任を持てるか」にあるのかもしれません。
ツールが進化するほど、問われるのは技術力ではなく、判断力と説明責任ではないでしょうか。