「AIは新たなバベルの塔」——教皇レオ14世がAI時代に問いかけた人間の尊厳
先日のXのタイムラインに「教皇、バチカンの奴隷制正当化を謝罪」という速報が流れてきて、思わず立ち止まりました。
それは、5月25日に発表されたレオ14世教皇の初の回勅「Magnifica Humanitas(マニフィカ・フマニタス:壮大なる人間性)」に関するニュースでした。
83ページにわたるこの文書の中に、AIについての強烈な言及があることを知り、さらに深掘りしてみました。
テクノロジーの進化を語る場に教皇の声が届くとは思っていなかっただけに、驚かされた発見でした。
教皇は何を訴えたのか
回勅の署名日は2026年5月15日、レオ13世の有名な回勅「レールム・ノヴァールム」(労働者の権利を訴えた歴史的文書)の公布から135年目に当たる日です。
この日を選んだことにも、歴史との対話を意識したメッセージが込められていると感じます。
教皇がAIを評して使ったのが「新たなバベルの塔」という表現です。
人間が神の領域に踏み込もうとして崩壊した塔の物語は、技術の暴走への警告として読み取れます。
回勅が特に強調したのは、AIの「兵器化」への反対と、「人間の存在そのものの尊厳」の保護です。
軍事AIを「非人道的」と明確に非難し、国際的な規制強化を求めています。
急速に発展するAI技術が雇用喪失や不平等の拡大につながるリスクにも触れ、テクノロジー企業に対して「共通善」への責任を問いかけています。

この速報ニュースは世界中に広まりました。
【速報】教皇、バチカンの奴隷制正当化を謝罪https://t.co/1IQyUy7D1D
— 47NEWS (@47news_official) 2026年5月25日
この投稿に示されている「バチカンの奴隷制正当化への謝罪」は、回勅の中で教会の歴史的過ちへの反省も含まれていることを示しています。
Anthropicの共同創業者が登壇した理由
この発表で注目を集めたもうひとつの点は、AI安全性研究企業AnthropicのChristopher Olah共同創業者が発表イベントに登壇したことです。

宗教の場にAI企業の創業者が登場するのは極めて異例です。
これはバチカンがAIを「単なる技術の問題」ではなく、人類全体に関わる道徳的・倫理的課題として位置づけていることの表れと言えるでしょう。
一方で、教会とテクノロジー企業のこうした接近に懸念を示す声もあります。
「宗教的権威がAI企業に利用される」「倫理の衣をまとったPRではないか」という指摘も出ています。
AIは人間の心のつながりを持てるか
教皇は回勅の中で、司祭たちにAI生成の説教を禁じています。
「AIには人間の心のつながりや道徳判断は生み出せない」という立場です。
この主張は、AIがどれだけ自然な言葉を生成できるようになっても、「言葉の背後にある経験・責任・関係性」は代替できない、という信念から来ています。
説教とはテキストではなく、語る者の人生と結びついたものだ、という考え方です。
技術者からは「AIが書いた文章と人間が書いた文章に差がなくなっている」という反論もあるでしょう。
でも教皇の問いかけは別のところにあるのかもしれません。
「誰が書いたか」より「誰が責任を持つか」という問いです。
AIが文章を書き、映像を作り、音楽を生成する時代に「人間の尊厳とは何か」という問いを、宗教的権威が世界に向けて投げかけた意味は小さくないと思います。
さらに深掘りしたい方へ
- ローマ教皇レオ14世がAI時代の指針を示した初の回勅「壮大なる人間性」を発布(カラパイア)
- AI発展は「新たな産業革命」——教皇が重要文書発表、尊厳と正義訴え(朝日新聞・Yahoo!ニュース)
- ローマ教皇、回勅で「正当な戦争」は時代遅れと一蹴 AIの倫理的課題にも警鐘(AFPBB・Yahoo!ニュース)
- 『マニフィカ・フマニタス』教皇レオ14世の初の回勅(バチカン・ニュース公式)
まとめ
「AIは新たなバベルの塔かもしれない」という教皇の言葉は、技術の進歩を否定しているのではなく、「何のために、誰のために技術を使うのか」を問い直せというメッセージのように聞こえます。
宗教とテクノロジーという一見遠い世界が交差した今回の出来事は、AI時代の人間の役割を考えるひとつの問いかけとして、しばらく頭に残りそうです。