AIエージェントを止め忘れたら、一晩で4700万円——miHoYo社員が体験した「AI代」の恐怖
週末が明けた月曜日の朝、出社した社員を待ち受けていたのは、想像を絶する請求額だったそうです。
中国の大手ゲーム会社・miHoYo(崩壊シリーズ・原神などの開発元)の社員が、数十個のAIエージェント(自律的にタスクをこなすAIプログラム)を停止し忘れたまま帰宅しました。
翌朝、確認したトークン(AIの利用単位)の消費量は、約200万元——日本円にして約4700万円。
一晩で消えていたというのです。
「まさかそんなことが」と思いたいところですが、これは決してフィクションではありません。
Xでもこの話題が急速に広まっていました。
中国の大手ゲーム会社、miHoYoの社員が不注意で、
一晩で200万元(約4,700万円)のtokenを燃やしてしまったらしい
『崩壊』シリーズのプロデューサーである蒋大衛さんが、AIに関する講演の中でこんな話をしていた… pic.twitter.com/A0ptZEsW0t— 荒井健一 AK (@aarai666) 2026年5月29日
AIエージェントが「普通のAI」とどう違うのか
この事件が起きた背景には、AIエージェントという技術の特性があります。
普段、ChatGPTやClaudeに「このメールを要約して」と頼むような使い方をすると、1回のやり取りで消費するトークンは比較的小規模です。
ところがAIエージェントは違います。
自分で計画を立て、複数のツールを呼び出し、結果を評価して次の行動を決める——こうしたサイクルを何十回、何百回と繰り返しながら動作するため、消費トークン量はシンプルなLLM利用の1000倍以上に達することもあるとも言われています。
miHoYoの事件は、5月20日に開催されたアリクラウドサミット(アリババ傘下のクラウドサービスの年次イベント)で公開されました。
登壇した崩壊シリーズAI NPC & Gameplay技術チームの担当者によれば、複数のAIエージェントを一晩中協働させる実験中に、モデル利用料が急激に膨らんだとのこと。
同社はこの出費を「AIを探索するための授業料」と表現し、運用コストの予測困難性を率直に認めました。
「AIコスト爆発」は世界各地で起きている
この種の話は、miHoYoに限りません。
Axiosの報道によれば、ある米国の大企業がAnthropicの「Claude」エンタープライズライセンスを全社員に無制限で付与したまま運用を続けた結果、わずか1カ月で約5億ドル(約750億円)の請求が発生したとされています。
従業員ごとの使用上限も、消費量のダッシュボードも、アラート設定も——何一つなかったといいます。
同様の問題は他の企業でも顕在化しています。
配車大手のUberは2026年のAI予算をわずか4カ月で使い果たし、COO(最高執行責任者)が「投資対効果が見えない」と公言する事態になりました。
Microsoftは社内のClaude Codeライセンスの多くを解約しており、「2026年最大規模の企業AIコスト削減」とも評されています。

共通しているのは、AIツールを「まず全員に配って、後から考える」スタイルで導入してしまったことです。
個人が使うには十分な無料枠も、数千人規模で解放した瞬間に別の次元の請求書に化けます。
なぜこんなに使ってしまうのか
もう一つ、AIコスト問題には人間の心理的な要因も絡んでいます。
「タダで使える(ように見える)なら、何でも頼んでみよう」——そう思う人は少なくありません。
天気を調べる、スケジュールを確認する、ちょっとした翻訳を頼む。
それ自体は些細なことですが、何千人もが一日中それを続ければ、膨大なトークンが消費されます。
さらに、AIエージェントが「自動で動き続けている」状態では、人間が気づかないうちにコストが積み上がっていく構図になります。
miHoYoのケースで言えば、社員は帰宅前にエージェントを止め忘れただけ。
悪意は一切なかったはずです。
それでも、翌朝には4700万円が消えていた。
「上限設定」がAI活用の必須スキルになる時代
こうした事例が相次いで表面化したことで、Xでは「予算アラートを設定しよう」「エージェントには必ずタイムアウトを入れよう」といった声が急増しています。
企業のAI担当者の間では、「月次の利用量チェック」から「リアルタイムの上限管理」へと意識が変わりつつある時期かもしれません。
AIを使いこなすためのスキルに、コスト管理の知識が加わりつつあります。
個人で使う範囲なら、まず無料プランや月額料金の範囲で収まります。
ただし、APIキーを使った自作のスクリプトやエージェントを動かす場合は要注意。
使い放題に見えても、1回の実行で思わぬトークンを消費することがあります。
まとめ
AIエージェントの普及が進む中で、「どれだけ使ったか」を把握する仕組みが欠かせない時代になりました。
4700万円という数字は衝撃的ですが、同様の「うっかり」はスケールを下げれば誰にでも起こりえます。
上限設定とコスト可視化——これからのAI活用の基本として、今一度確認しておきたいところです。


