マイケル・バリー氏「The end is nigh」再び 記録的高値の裏でXが騒然とした半導体株の行方
S&P500が7483ポイント、ナスダックが26040ポイント。
どちらも過去最高値圏で取引を終えた同じ週に、Xにたった一言の投稿が流れてきました。
「The end is nigh(終わりが近い)」。
投稿主は、映画『ビッグ・ショート』の主人公のモデルとして知られる投資家、マイケル・バリー氏です。
バリー氏が何を根拠にこう言っているのか、なぜ市場最高値のタイミングでこの発言が拡散されているのか。
気になって一次情報を追ってみると、単なる煽りではなく、半導体株の異常な過熱と、AI関連銘柄に群がる個人投資家たちの熱狂という、2つの現象が同時に進行していることが見えてきました。
誰が・何を発端に・なぜ話題になったのかを整理すると、バリー氏がXと自身のSubstackで半導体ETFや複数のAI関連株への大規模な空売りを開示したことがきっかけで、市場参加者と個人投資家の双方が反応した、という構図です。
バリー氏の警告とXでの受け止められ方
バリー氏は今回、Philadelphia Semiconductor Index(フィラデルフィア半導体指数、SOX指数の算出母体)が200日移動平均線から歴史的な水準まで乖離していると指摘しました。
この乖離幅は、ドットコムバブルが崩壊した2000年以来の高さだといいます。
加えて、AI関連のトークン(生成AIが処理するテキストの最小単位)消費量と価格を組み合わせた指標が、5月のピークから約20%下落していることも根拠として挙げました。
これは需要そのものが揺らぎ始めているサインだ、というのがバリー氏の見立てです。
一方でXの空気は、バリー氏の警告よりも「実際に半導体株で何が起きているか」という個人投資家の生々しい体験談で盛り上がっていました。
ここ最近、日本のX上ではキオクシアホールディングスの株価急騰・急落をめぐる投稿が相次いで拡散しています。
たとえば、新卒からコツコツ貯めた250万円を失ったという投稿主は、含み損が広がる恐怖に耐えきれず損切りした経緯を綴っていました。
日本語での告白なので原文のまま紹介します。

お久しぶりです。
— みうみう@月配当10万円目指す投資OL🌼 (@namacokelove) 2026年7月5日
キオクシアで全財産失いました。
新卒からコツコツ貯めてきた250万円。
もう少し待てば良かったのに、まばたきするたびに損失が増えていくのが耐えられなくなって…
「これ以上下がったら本当に死ぬ」と思い、最後は「ここから解放されたい」という気持ちで損切りしました。… pic.twitter.com/6yihYeKP9H
同様に、身近な投資仲間の損益を並べて紹介する投稿も大きな反応を集めました。
ボーナスを全額つぎ込んで数十万円の損失を出した人、数千万円規模の含み損に白旗を上げた人など、金額のインパクトがそのまま拡散力になっていた形です。
<今週の株クラ>
①あやみな「夫のボーナスを全額キオクシアに突っ込みました」→−53万
②初心者おじさん「本日キオクシアに白旗を上げました」→−3500万
③りゅん「キオクシア高値掴み選手権。勝てる人おらんやろ」→−2億
④株ゴリラ「株やってる奴は仕事に集中してないから即解雇した方が良い」 pic.twitter.com/1hBQ4evVLo— とんかつ@インデックス投資 (@tonkatsu_index) 2026年7月5日
さらに、NISA(少額投資非課税制度)でキオクシア株を買ったという短い投稿も2500件超のいいねを集めており、個人投資家が値動きの荒い銘柄に次々と資金を投じている様子がタイムライン上でも可視化されていました。
調べてわかった実際の値動きと市場の温度差
Xでの盛り上がりを受けて一次情報を確認すると、バリー氏の発言は単なるパフォーマンスではなく、実際の投資行動を伴っていることがわかりました。
7月1日付のSubstack投稿では、エヌビディア、テスラ、アプライド・マテリアルズ、キャタピラー、そして半導体ETFであるiシェアーズ半導体ETF(SOXX)に対する空売りポジションを開示。
同日、マイクロンに対しても1株あたり約1051.87ドルで空売りを建てたことを明らかにしています。
バリー氏は、AI関連の設備投資ブームを「大量の依存症のようなもの」と表現し、韓国勢による大規模な半導体増産計画を「終わりの始まり」と評しました。
トークン消費指数についても実在が確認できました。
Silicon Data社が算出する「LLM Token Expenditure Index」は、12月の算出開始以降ほぼ倍増していたものの、5月のピークから約20%下落しています。
この指数は価格と利用量を掛け合わせた指標のため、下落の解釈は割れています。
単なる値下げ競争の結果なのか、利用者側の「これ以上は払わない」という上限に達しつつあるサインなのか、Silicon Data自身も断定を避けています。
日本市場に目を向けると、キオクシアホールディングスは2024年12月の上場時の公開価格1455円から、2026年6月22日には終値で10万8700円まで急騰していました。
約75倍という驚異的な上昇です。
ところが6月下旬から7月初旬にかけて、米SOX指数が数営業日で6%超下落するなど利益確定売りが優勢となり、東京市場でもキオクシアをはじめとする半導体関連株に売りが集まりました。
1日で8%下落した翌日に6%上昇するような荒い値動きも報じられており、「危ない銘柄」というより「振れ幅が極端に大きい銘柄」というのが実態に近いようです。
それでもS&P500やナスダックは記録的な高値圏を維持しており、バリー氏の警告に対しては懐疑的な声も根強くあります。
2026年上半期の米国株式市場は四半期として2020年以来の好成績だったと報じられており、市場全体が崩壊シナリオに同調しているわけではありません。
バリー氏自身、過去の警告が早すぎたと批判された経緯もあり、今回の空売りが的中するかは未知数です。
さらに深掘りしたい方へ
一次情報を直接確認したい方は、以下も参考にしてください。
- Michael Burry「Trading Post July 2, 2026」(Substack)
- Bloomberg「AI Token Prices Drop, Raising Questions on Sector’s Pricing Power and Growth」
- 株探ニュース「キオクシア—大幅続落、AI・半導体からの資金流出など警戒も」
SocialReport編集部の考察
今回の一連の投稿を分析視点で見ると、バリー氏の警告よりも個人投資家の「損失告白」ツイートの方がエンゲージメント量で上回っている点が目を引きます。
250万円の損失報告は1800件超、複数人の損益をまとめた投稿は2000件超のいいねを獲得しており、抽象的なマクロ経済の警告よりも、具体的な金額を伴う個人の体験談の方が拡散構造として強いことがうかがえます。
SNS担当者にとっての示唆は、専門家の分析を発信する際も「誰が・いくら・どうなったか」という個人視点の物語に落とし込むと反応が伸びやすいという点です。
また、暴落警告と個人の逆張り投資が同時にバズる状況は、2021年のミーム株騒動時のリスク許容度の可視化と似た構造であり、SNS上の熱狂と実際の市場指標の乖離を定点観測する価値がありそうです。
まとめ
バリー氏の警告は根拠のない煽りではなく、実際の空売りポジションと具体的な指標に裏付けられたものでした。
ただし市場は記録的高値を更新し続けており、警告と現実の温度差こそが、今回Xで話題になった本質だといえそうです。

