「推しキュレーター」から中古マンションを買う時代——店舗ゼロの不動産会社が2年8ヶ月で300億円を売った理由
築28年、7300万円。
中古マンションとしては決して安くない買い物を、InstagramやLINEだけで完結させる人たちが増えています。
舞台は東京・渋谷に本社を置くファンズ不動産株式会社。
路面店を一切持たず、SNSで物件を紹介する「キュレーター」と呼ばれる12人のインフルエンサーを軸に、設立からわずか2年8ヶ月で累計300億円超の成約を積み上げました。
数千万円の買い物というと、対面での丁寧な説明や信頼関係が欠かせない領域だと思われがちです。
ところが実際には、SNS上の緩やかな関係性がその信頼を代替し始めています。
企業アカウントを運用する立場からすると、「高額商材はSNSに向かない」という前提そのものが揺らいでいる事例として見逃せません。
この記事では、何が起きているのかを一次情報で確認したうえで、SNS運用にどう応用できるかまで掘り下げます。
先に結論をまとめると:
– ファンズ不動産は設立2年8ヶ月で取扱件数500件超・成約総額300億円超を達成し、12人の「キュレーター」がInstagramなどで物件を紹介している
– 顧客の80%超が20〜30代で、平均販売価格は約7300万円、平均築年数は28年という中古マンションが中心
– 高額商材でも「フォロー→信頼→LINEでの個別相談」という導線を作れば、SNSはブランディングだけでなく成約まで担えることを示した事例

何が起きたのか(SNS発の不動産仲介が急拡大)
ファンズ不動産は2023年9月に設立された不動産仲介会社です。
一般的な不動産会社のように店舗を構える代わりに、Instagramなどで物件を紹介する「キュレーター」と呼ばれるインフルエンサーを起用し、興味を持ったユーザーをLINE公式アカウントに誘導する仕組みを取っています。
同社は自社サービスを「SNS不動産®」と称し、PR TIMESの発表によれば2026年5月時点で累計取扱件数が500件を超え、2026年4月には累計取扱高が300億円を突破したと報告しています。
このビジネスモデルは同社独自の発明として認められており、以下は2025年1月20日付でビジネスモデル特許を取得した際のプレスリリース投稿です。
◾️プレスリリース
— Funds(ファンズ) (@Funds_jp) 2025年2月12日
当社は、SNSを活用した不動産仲介事業を展開する子会社「ファンズ不動産株式会社」において、SNS・インフルエンサーマーケティングを活用した物件情報の紹介の技術に関するビジネスモデル特許を2025年1月20日付けで取得したことをお知らせいたします。https://t.co/crHMAuPGjl
特許の名称は「インフルエンサー物件紹介システム、インフルエンサー物件紹介方法及びプログラム」というもので、積極的に物件を探しているわけではない潜在顧客に、インフルエンサー経由でリーチする仕組みそのものを特許化した点が特徴です。
単なる集客手法ではなく、事業の根幹をなす技術として位置づけられていることが分かります。
ただ、特許を取っただけでビジネスが伸びるわけではありません。
実際にどれだけの人が、どんな条件で家を買っているのか、次の章で数字を確認していきます。
調べて分かったこと(なぜ数千万円の買い物がSNSで動くのか?)
実際の購入者はどんな人たちなのか?
ITmediaビジネスオンラインの報道によると、ファンズ不動産の顧客層は30代が55.7%、20代が26.6%を占め、合計で80%を超えています。
物件の平均販売価格は約7300万円、平均築年数は28年とされており、都心の築古中古マンションを、住まいと投資の両面から捉えて購入する層が目立つといいます。
同記事では「半分は投資、半分は住まい」という発想で購入を決める人が多いとも紹介されていました。
新築マンション価格の高騰が続くなか、同世代がまとまった資金を動かせる選択肢として中古マンションに目を向け始めているという構図が見えてきます。
実際の購買プロセスはどう動いているのか?
購買までの流れは、キュレーターのSNS投稿を見た人が興味を持ち、同社主催の内覧会に参加するところから始まります。
ITmediaの取材では、内覧会に集まる30〜50人のうち実際の購入に至るのは1人程度とされる一方、購入に至らなかった人の多くはLINE公式アカウントに登録し、次の物件紹介を受け取る見込み客として蓄積されていく仕組みが紹介されています。
同記事によれば、このLINE登録者数はすでに2万人規模に達しているとのことです。
低い成約率を嘆くのではなく、成約しなかった人を資産として残す設計になっている点が、この仕組みの肝と言えるでしょう。
こうした取り組みが評価され、2026年6月1日発売の日経MJ一面でも取り上げられました。
以下は掲載を報告する同社の投稿です。
◾️メディア掲載のお知らせ
— Funds(ファンズ) (@Funds_jp) 2026年6月2日
6月1日発売の『日経MJ』一面にて、ファンズ不動産を取り上げていただきました。
「店舗なし・インフルエンサーと組む・創業2年半で成約300億円超」という私たちの不動産仲介の新しいかたちを、丁寧に記事にしていただいています。
是非お手に取ってご覧ください❗️ pic.twitter.com/x1a0kWshUi
日経MJの報道内容として、店舗を持たずインフルエンサーと連携し、創業2年半で成約金額300億円超に達したという同社のビジネスモデルが紹介されたとされています。
業界紙の一面で取り上げられるほど、既存の不動産業界にとってもインパクトのあるモデルとして受け止められていることがうかがえます。
X上でも「斬新な集客モデル」と評価する声が見られる一方、中古マンション特有の修繕費リスクについて慎重な意見も見られました。
実際、築年数の経った物件は給湯器やエアコンなどの設備更新費用がかさみやすく、購入時には長期修繕計画や修繕積立金の状況を確認することが一般的に推奨されています。
SNSでの気軽な出会いと、数千万円規模の意思決定という重さのギャップを、同社がどう埋めているのかが今後も注目されるポイントになりそうです。
Shiritomo編集部の考察:高額商材のSNS活用で押さえるべき3つのポイント
ファンズ不動産の事例が示しているのは、「SNSは認知獲得の入り口にすぎない」という従来の発想を超えて、成約までの導線をSNSとLINEだけで完結させられるという可能性です。
企業のSNS運用担当者が学べる点は大きく3つあると考えます。
1点目は、フォロワーとの関係を「発信者対受信者」ではなく「キュレーター対相談者」という個人的な信頼関係に近づけている点です。
企業アカウントの硬い発信よりも、特定の個人が継続的に物件を紹介するスタイルの方が、高額商材でも心理的なハードルを下げやすいのでしょう。
2点目は、成約に至らなかった見込み客をLINEという1対1のチャネルに留めている設計です。
SNSのフォロワーは離脱しやすい一方、LINE登録者は継続的なアプローチが可能なため、この二段構えの導線設計は他業界にも応用しやすいはずです。
3点目は、ビジネスモデル自体を特許化することで、模倣されにくい競争優位を築いている点です。
単発のバズを狙うのではなく、仕組みそのものを資産化する発想は、SNS運用を単なる広報活動ではなく事業戦略として捉え直す好例と言えるでしょう。
まとめ
ファンズ不動産は、店舗を持たずキュレーターとLINEを組み合わせた仕組みで、設立2年8ヶ月にして300億円超の成約を積み上げました。
高額商材だからこそSNSに向かないと考えていた業界にとって、この事例は発想の転換を迫るものになりそうです。
さらに深掘りしたい方へ
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