「歴史に逆らってまで」――PSの決定ボタンが○から×になった、たった一人の交渉の中身
「なんで海外勢はわざわざ歴史に逆らってまで『✕、下ボタン決定』を推進しちゃったの?」——Xでこう投げかけた投稿に、7,000件を超える「いいね」と500件近いリツイートが集まりました。
任天堂ハードでもXboxでも、決定ボタンは長らく右側・下側に置かれてきました。
ところがPlayStationだけは、海外仕様で長らく×(バツ)が決定、日本仕様では○(マル)が決定という「同じハードなのに国で違う」状態が続いてきました。
しかもPS5になってからは、日本国内向けの本体でも×決定に統一されています。
ゲームを長く遊んでいる人ほど、この違いに一度は指を止められた経験があるのではないでしょうか。
先に結論をまとめると:
– ○×の割り当てを決めたのは初代プレイステーションの設計チームで、当初は日本の「○=Yes」という感覚に合わせて○決定にしていた
– 米国市場に出す際、現地スタッフが×を確認ボタンと解釈し、当時米国チームに唯一いた日本人スタッフの仲介で海外仕様だけ×決定に変更された
– PS5では世界共通で×決定に統一され、日本の本体でもシステム設定では変更できない仕様になっている
Xで再燃した「なぜ違うのか」という疑問
投稿の主は、長年ゲームに触れてきた人ほど感じる違和感を言葉にしていました。
任天堂は今でもずっとAボタン決定でしょ?プレステだってそれに習って近年まで◯ボタン決定だった訳で。
— ひばりミカン (@hibari_mikan) 2026年8月22日
つまりゲーマーには古より「A、◯、つまり右側のボタンが決定」という常識の中で育って来たはずなのに、逆に何で海外勢はわざわざ歴史に逆らってまで「✕、下ボタン決定」を推進しちゃったの?
任天堂ハードは「Aボタン決定」、Xboxも同様に右下のボタンが決定です。
ゲーム機に触れ始めた世代からすれば、右側・下側のボタンが確定操作というのはほぼ共通言語のようなものでしょう。
そこにPlayStationだけが「グローバルでは×決定」という別ルールを持ち込んでいるように見えるため、疑問が繰り返し話題に上がるのだと考えられます。
ただ、この投稿だけでは「なぜそうなったか」までは分かりません。
実際に何があったのか、一次情報にあたって確認しました。
なぜ日本では○が正解のイメージなのか
○×の役割を最初に決めたのは、初代プレイステーションのデザインを手がけた後藤禎祐氏です。
コントローラーの4つのボタンに○×△□の記号を割り当てた際、日本語圏の感覚に合わせたとみられ、「○=Yes・決定」「×=No・キャンセル」という関係になったと考えられています。
日本では丸バツ形式のテストや採点で「○=正解」に触れる機会が多く、直感的に理解しやすい配置だったといえます。
海外ではなぜ×決定になったのか
一方、プレイステーションを米国市場に投入する段階で、この割り当てがそのまま通用しない問題が浮上しました。
米国のスタッフは○×の記号に対して日本と同じ感覚を持っておらず、×を「選択・確定」の記号として捉える解釈が出てきたためです。
当時、米国側のローンチチームに唯一在籍していた日本人スタッフが間に入り、海外仕様では×を決定ボタンに変更するよう調整したことで、日本と海外で決定ボタンが分かれる形になったと伝えられています。
海外ではその後もこの割り当てが定着し、長く続くことになりました。
PS5でついに統一された理由
この「国によって決定ボタンが違う」状態は、PS4まで続いてきました。
しかしPS5では、日本国内向けの本体を含めて世界共通で×決定に統一されています。
ソニー公式によれば、システムメニューとゲーム内操作で決定ボタンの扱いが食い違う混乱を避け、開発側の負担も軽くする狙いがあるとされています。
システム設定から○決定に戻す手段は用意されておらず、日本のユーザーにとっては「ずっと○で覚えてきたのに、いきなり×に切り替わった」形になりました。
実際、「ps5 決定ボタン 慣れない」という言葉には今も一定の検索数があり、発売から数年が経った今でも戸惑う人が一定数いることがうかがえます。
Switchなど任天堂ハードとPS5を行き来するユーザーほど、切り替えのたびに指が迷う場面が多いのかもしれません。
Xbox・任天堂・セガはどうなのか
比較すると、Xboxは一貫してAボタン(下側)が決定として使われており、任天堂も同様にAボタンが決定という配置を長く保っています。
セガも過去のハードで下側・右側のボタンを決定に割り当てており、PlayStationの海外仕様だけが、ボタンの位置自体は他社ハードと同じ下側でありながら、キャンセルを連想させやすい×を決定ボタンに採用してきた格好です。
今回Xで話題になった投稿の「歴史に逆らって」という表現は、こうした他ハードとの並びを踏まえたものだったと考えると納得感があります。
Shiritomo GAME編集部の考察
このエピソードが面白いのは、記号の意味づけという一見些細な設計判断が、四半世紀以上たった今もSNSで議論を呼び続けている点です。
○×の割り当ては当初、日本市場向けの直感的な設計として決められましたが、海外展開の過程で「現地の感覚に合わせる」という別の合理性がぶつかり、結果的に地域差という形で残りました。
さらにPS5での統一は、今度は「グローバルでの一貫性」という別の合理性が優先された結果です。
ユーザー体験の設計は、どの基準を優先するかで正解が変わってしまう典型例といえるでしょう。
ゲーム機に限らず、複数の地域・文化圏を相手にするプロダクトを作る人にとっても、示唆のあるエピソードではないでしょうか。
まとめ
PlayStationの決定ボタンが○から×に変わった背景には、日本と米国それぞれの感覚のズレを埋めようとした、たった一人のスタッフの調整がありました。
PS5での統一によって議論に区切りがついたようにも見えますが、Xでの反響を見る限り、この「なぜ」への関心はまだしばらく続きそうです。