本物のフィギュア写真がAI生成と判定される皮肉——海洋堂がXに声明を発表

shiritomo | AI・SNS・話題のテック情報メディア by Hashout編集部 @shiritomoAI_jp 2026年5月13日 更新
本物のフィギュア写真がAI生成と判定される皮肉——海洋堂がXに声明を発表

「専属カメラマンが撮影した写真なのに、AI生成と表示されてしまいます。」

そんな告知を海洋堂の公式Xアカウントが2026年5月11日に投稿し、1万8500件以上のいいねを集めました。
本物の職人技が、AIの判定システムには「本物に見えすぎる」ために誤判定される——なんとも皮肉な話です。

何が起きたのか

海洋堂は、「リボルテック」シリーズをはじめとする精巧な造形フィギュアで知られる老舗メーカーです。
今回の件は、新製品「城之内克也」(漫画『遊☆戯☆王』キャラクター)の商品写真に、Xの自動判定が「AIで生成」というラベルを付与したことがきっかけです。

海洋堂の公式告知はこちらです。

「一部ポストに『AIで生成』と表示される場合がありますが、これはX側の自動判定によるものです。
海洋堂では商品写真にAI生成画像は使用しておらず、専属カメラマンによる撮影を行っております」という内容でした。

グラフィックデザイナーのムキデザさんも「自分でも誤判定を経験した」として同様の状況を共有しています。

なぜ誤判定が起きるのか

Xは投稿された画像を自動解析し、AI生成と判定されたものには「AIで生成」ラベルを付与する仕組みを持っています。
ユーザーが自分で付けることもできますが、今回は自動判定によるものです。

誤判定の原因について調査が進むと、意外な事実が判明しました。
Photoshopでロゴやウォーターマークを画像に追加するために使われたテンプレートファイルが、元写真とまったく同一のピクセルサイズ・フォーマットを持っていたことで、Xの検出システムがAI生成画像の特徴パターンと誤認識した可能性があるとのことです。

フィギュアの精巧な造形そのものが、AIが生成するような「現実離れした完成度」をカメラが捉えた結果、判定モデルを混乱させた面もあるようです。

「自分の写真にも付いた」——クリエイターたちの共感

海洋堂の投稿には、フォトグラファーやアートディレクターから「うちにも同じことが起きた」という声が続きました。

精密なプロダクト写真・合成した広告クリエイティブ・高精細な接写写真など、人間が丁寧に作り込んだ画像ほどAI生成と誤判定されやすい、という状況が浮かび上がっています。

本来、「本物か偽物か」を区別するために導入されたラベルが、本物を偽物扱いしてしまうパラドックスです。
クリエイターにとっては「自分の仕事が疑われる」という心理的な負担にもなりかねません。

Xのラベル判定が抱える課題

Xがこの「AIで生成」ラベル機能を強化したのは、AI生成画像による誤情報やなりすましへの対策が目的です。
意図としては正当で、必要な取り組みでもあります。

ただし、今回の事例が示すのは「精度が追いついていない」という現実です。
誤検知が増えれば「ラベルが付いていても本物かもしれない」という空気が生まれ、ラベルそのものの信頼性が下がるという悪循環になる可能性があります。

Xのシステム側での誤検知率の改善が求められているのはもちろんですが、「誤判定されたときにクリエイターが異議を申し立てる仕組み」が整っていないことも、今回の反響の背景にあるように見えます。

実際のところ、AIが生成した画像と人間が作り込んだ画像の区別は年々難しくなっています。
高解像度のフィギュア写真は背景のボケ方や光沢の反射が「AIらしい完成度」に近くなり、フォトレタッチを施した商品写真はAI生成の後処理パターンと重なることがある、とされています。
つまり「本物だからこそAIと間違えられる」という逆説が、技術の進歩とともに深刻化しているのです。

クリエイターがコミュニティノート(ユーザーが文脈補足を加える機能)で「専属カメラマン撮影」と補足を入れようとする試みも見られましたが、自動ラベルを消す直接的な手段にはなりません。
「AI生成かどうか」を証明する責任がクリエイター側に向いている現在の構造は、作る側の負担を増やすだけでなく、信頼の前提そのものを揺さぶっています。

さらに深掘りしたい方へ

まとめ

本物の仕事がAI生成と誤判定される事例は、今後さらに増えていく可能性があります。
「AI生成かどうか」の判定は技術的に難しいだけでなく、誰が誰のために何を守るのかという問いを突きつけています。