AI規制・政策 読了 5 分

「無作為抽出により不採択」——文科省のAI研究費、研究者を悩ませた”抽選”の中身

Shiritomo編集部 @shiritomoAI_jp 2026年8月21日 更新
「無作為抽出により不採択」——文科省のAI研究費、研究者を悩ませた”抽選”の中身

「無作為抽出により不採択」。
文部科学省の研究費事業からそんな通知を受け取ったという投稿が、8月後半のXで相次いで共有されています。
審査で内容を否定されたわけではなく、抽選で外れただけ——そう聞くと拍子抜けする方もいるかもしれません。
研究資金の審査に関心がある方はもちろん、AI活用が広がる中で「限られたリソースをどう配分するか」という論点に関心がある方にとっても、気になる事例です。

先に結論をまとめると:
– 文部科学省の「AI for Science萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD)」第2回公募で、審査の一部に無作為抽出(抽選)が使われていることが研究者の間で話題になっています
– ピアレビュー(専門家による審査)に加えて抽選を組み合わせる審査方式を、研究評価・資金配分手法の改善に資する知見を得る目的で導入したと文科省は説明しています
– 第1回は応募15,868件に対し採択456件(採択率2.9%)。
第2回も同程度の狭き門だったとみられ、研究者からは戸惑いと諦観が入り混じった反応が出ています

Xで盛り上がっていること

「AI for Scienceの『無作為抽出により不採択』。
課題としては良かったけれど、抽選でダメだったのか。
それとも事前に抽選されて、レビューすら受けられなかったのか」。
そんな投稿が8月21日にXへ寄せられました。

「内容が不十分だった」という結果より、抽選で外れたという結果のほうが精神的なダメージが少ない、と前向きに捉える声もある一方、「AI推進のための事業でランダム審査というのは違和感がある」という指摘も見られます。
ただ、そもそもなぜ抽選という手法が使われているのか、公式の説明を確かめてみました。

調べて分かったこと

なぜ無作為抽出という方式なのか?

文部科学省の事業公式サイトによると、SPReADは全分野の研究者がAIを研究に活用することを後押しする事業で、年間約1,000課題の採択を目標に掲げています。
公式サイトには「無作為抽出やAIの補助的活用など、機動的かつ挑戦的な仕組みを取り入れた審査手法を導入」という記載があり、研究評価・資金配分手法の改善に資する知見を得ることが目的だと説明されています。
つまり抽選は例外的な運用ではなく、事業として明言された方式ということになります。

背景には、応募数の規模があります。
第1回公募は応募15,868件に対して採択456件、採択率にして2.9%という狭き門でした。
すべての応募を通常のピアレビューだけで審査するのは体制上難しく、抽選を組み合わせる方式が採られたとみられます。

第2回はどれくらいの競争率だったのか?

第2回公募の採択結果は8月18日に公表されましたが、取材時点(8月19日時点)で文科省側から応募件数・採択件数の集計値は正式発表されていません。
Xでは、公表された採択課題一覧を独自に数えた研究者から「採択が17,914件中656件(3.7%)」という投稿も出ていますが、これは研究者個人の集計であり、文科省の公式発表ではない点には注意が必要です。

もしこの数字が実態に近いなら、第1回よりも応募が増えつつ採択率はわずかに改善した計算になります。
それでも30倍近い競争率であることに変わりはなく、抽選という手法への戸惑いの声が広がるのも無理はなさそうです。

Xでは「SPReADがコミケみたいな年2回の祭りになって、当落報告のツイートがタイムラインを埋め尽くす感じになってほしい」という、やや自虐まじりの投稿も見られました。
研究費の抽選結果をコミケの当落に例える感覚は、研究者コミュニティならではの空気を映しているのかもしれません。

Shiritomo編集部の考察:「効率化」と「公平感」は両立しにくい

AIを研究に取り入れることを後押しする事業で、審査そのものに抽選という「機動的な仕組み」が使われているのは、なかなか興味深いねじれです。
全数を丁寧に審査すれば時間とコストがかかり、機械的に絞れば公平感が損なわれる——これはAI活用が広がるどの分野でも直面するトレードオフに近い構図です。

過去にも、応募が集中する助成金・補助金制度で抽選や先着順を取り入れた例はありますが、多くは「内容を問わない機会の公平性」を重視した設計です。
今回のSPReADのように、ピアレビューと抽選を組み合わせる方式は、審査の質と処理速度の両立を狙った折衷案といえそうです。
ただし、当落の基準が見えにくいと、応募者側の納得感は得にくくなります。
今後、文科省が採択プロセスの内訳(レビュー落ちと抽選落ちの割合など)を公開するかどうかが、この制度への信頼を左右しそうです。

まとめ

文部科学省のAI研究支援事業「SPReAD」第2回公募で、審査の一部に無作為抽出が使われていることが研究者の間で話題になっています。
研究評価・資金配分手法の改善に資する知見を得る目的の「機動的な仕組み」として公式に説明されている一方、研究者からは戸惑いの声も上がっており、今後の運用の透明性が注目されそうです。

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