「歴史知ってるととんでもなく凄い」モトローラの折りたたみ広告、Appleへの45年越し返歌説
「新人さんへ。
折りたたみの世界へ、ようこそ。
こっちはもう22年目。
先輩として、いつでも相談に乗りますよ💪」
モトローラ・モビリティ・ジャパンの公式X(旧Twitter)アカウントが2026年9月13日の夜に投稿した広告コピーです。
文面だけを見れば、新入社員を迎える先輩社員のような、ただの挨拶に読めます。
ですが、いいね500件を集めた引用ツイートが、この4行に仕込まれた仕掛けを解き明かしていました。
折りたたみスマホの新製品情報を追っているだけでは気づけない、業界の因縁が絡む話です。
この記事では、その仕掛けの真偽と、広告の主役である新モデルの中身を、一次情報で確認しながら整理します。
先に結論をまとめると:
– モトローラの広告は、自社の折りたたみ端末シリーズが2004年発表の初代RAZR(V3)から数えて22年目を迎えたことを振り返る内容です
– 引用ツイートが指摘する「Appleの1981年広告への返歌」説は、Lenovoの買収の歴史を踏まえた読み解きであり、モトローラが公式に認めたものではありません
– 広告の主役である新モデル「motorola razr 60」は2025年10月10日に日本発売済みで、チタン製ヒンジとAI機能が特徴です
Xで盛り上がった「先輩からの挨拶」広告
冒頭の投稿には、モトローラの折りたたみ端末を並べた画像が添えられています。
実際に画像を確認すると、左側にはガラケー時代のような小型の折りたたみ端末、右側には画面が大きく広がる現行の折りたたみスマートフォンまで、合計10台が2列に並んでいます。
形状は世代を追うごとに変化していますが、投稿の画像自体には個々の機種名を示す表記はなく、「22年間、お待ちしていました。」という一文と「razr」のロゴが添えられているだけです。
この投稿は公開から半日ほどで、いいね1,416件・リポスト451件・引用96件(2026年9月14日時点)を集めました。
そこに現れたのが、いいね500件を獲得した引用ツイートです。
新人さんへ。
— Motorola Japan (@MotorolaJP) 2026年9月13日
折りたたみの世界へ、ようこそ。
こっちはもう22年目。
先輩として、いつでも相談に乗りますよ💪 pic.twitter.com/JwOvzFqDpr
ただ、この投稿だけを読んでも「22年目」が何を指すのか、なぜAppleの名前が引き合いに出されているのかは分かりません。
一次情報を確かめてみました。
調べて分かったこと
なぜ「22年目」なのか?
モトローラを一躍有名にした薄型折りたたみ携帯「RAZR V3」は、2004年に発表・発売されました。
当時としては異例の薄さで、世界累計1億台以上を売り上げました。
アメリカ市場では、2008年7〜9月期にiPhone 3Gに抜かれるまでの3年間、販売台数トップの座を守り続けた端末です。
今年は2026年ですから、2004年のRAZR V3から数えるとちょうど22年目にあたります。
投稿の「こっちはもう22年目」という一言は、誇張ではなく、モトローラの折りたたみ端末の歴史そのものを指していると見てよさそうです。
Appleへの「返歌」説は本当に成り立つのか?
引用ツイートで話題になったのが、以下の指摘でした。
「IBMのPC部門を持つレノボグループのモトローラ」として読むと、1981年のApple広告への返歌に見える、という指摘です。
その広告とは「Welcome, IBM. Seriously.」のこと。
「歴史知ってるととんでもなく凄い」という一言が添えられています。
これ、“IBMのPC部門持ってる、レノボグループのMotorola”として読むと、
— 橋本 新義 (@Shingi) 2026年9月13日
かの1981年Apple広告“Welcome,IBM. seriously.”への返歌でもあるんだよな……。
歴史知ってるととんでもなく凄い。https://t.co/wtZGmIde25 pic.twitter.com/V12at95F5F
この指摘の背景にある事実関係を、それぞれ確認しました。
まず、Appleの広告は実在します。
1981年8月24日、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル紙に掲載された全面広告です。
IBMがパソコン市場に参入したことを「Welcome, IBM. Seriously.」という見出しで歓迎する体裁を取っています。
その裏で、パーソナルコンピュータ市場を切り開いてきたのは自分たちだと暗に示す内容でした。
一方の企業関係も、確かにつながっています。
モトローラは2014年10月にGoogleからLenovo(レノボ)へ買収が完了しています。
そのLenovoは、2005年5月にIBMのパソコン事業(ThinkPadブランドを含む)を買収しています。
今の「モトローラ」はLenovoグループの一員という意味で、間接的にIBMのパソコン部門の資産を受け継ぐ企業の傘下にあるわけです。
つまり「45年前にAppleがIBMを歓迎した構図」は、「今はIBMのPC事業を継いだ会社の傘下にあるモトローラが、新人を歓迎する側に回っている」とも読み替えられます。
この指摘は、事実関係としては筋が通っています。
ただし、モトローラ側がこの構図を意図して広告を作った、という公式な言及は確認できませんでした。
あくまで、歴史に詳しいユーザーが見つけた面白い符合として捉えるのが正確でしょう。
motorola razr 60は結局何が変わったのか?
広告の主役である新モデル「motorola razr 60」は、2025年10月10日に日本で発売されました。
直販価格は13万5,800円(税込)で、NTTドコモ版(razr 60d)、ソフトバンク版(razr 60s)でも取り扱われています。
上位モデルの「razr 60 ultra」は同年12月に発売され、KDDI(au)からも供給されます。
KDDIでのモトローラ端末の取り扱いは、2012年3月発売の「MOTOROLA RAZR IS12M」以来、実に13年ぶりという発表もありました。
ハードウェア面では、開閉部にチタン製のヒンジプレートを採用し、従来モデルより画面の折り目が目立ちにくくなっています。
防塵防水性能は、razr 60がIP4X(防塵)とIPX8(防水)の組み合わせです。
上位のrazr 60 ultraは、より高い等級のIP48(IP規格:数字が大きいほど埃や水への耐性が高いことを示す国際的な指標)に対応しています。
AI機能「moto ai」には、通知やメッセージをまとめて要約する「とりまリスト」(グローバル名称は「Catch me up」)が搭載されています。
見落とした連絡も、ここから折り返せる仕組みです。
処理性能にはMediaTek製の新型チップ「Dimensity 7400X」が使われています。
端末を閉じたままでもAI機能を素早く呼び出せる点が、競合との差別化ポイントとされています。
Shiritomo GADGET編集部の考察
今回の広告で興味深いのは、ノスタルジー狙いの演出が、実機のスペックと矛盾していない点です。
「22年」という数字も、チタン製ヒンジや防塵防水の等級も、どちらも一次情報で裏付けが取れました。
話題性だけの企画ではなく、実際に売り物として勝負できる中身を伴っています。
もうひとつ見逃せないのが、KDDI(au)が13年ぶりにモトローラ端末を取り扱う点です。
折りたたみスマホ市場はサムスンが先行し、記事冒頭のニュースでも競合キャンペーンと並べて語られていました。
モトローラは「複数キャリア+直販」という併売網を広げることで、市場シェアそのものを取りに来ているように見えます。
広告のユーモアは話題作りの入り口に過ぎず、本命は販路の拡大だと捉えると、この一連の動きの意味が見えてきます。
まとめ
モトローラの「先輩からの挨拶」広告は、22年分の折りたたみ端末の歴史を振り返る内容でした。
Appleの1981年広告への「返歌」説は、Lenovoの買収史をたどると筋が通る面白い読み解きです。
広告の裏側では、新モデル「motorola razr 60」がすでに日本で発売され、実際のスペックも着実に積み上げられているようです。