配線むき出しの謎装置、正体は1000円のチープカシオが動かす自動水やり機でした
黄色いプラスチックのたらいに、水を吸い上げるチューブが差し込まれています。
その隣にあるのは、赤いLEDやブザー、抵抗がびっしり並んだ小さな基板(電子部品を固定してつなぐ土台)。
基板の左側には、見慣れた黒い腕時計がそのままハンダ付けされています。
CASIOの「F-91W」、通称チープカシオです。
この装置を投稿したのは、いっぺいさん(@IppeiTotsuka)。
手元にある1000円台の腕時計が、家庭菜園の水やりタイマーに変わる様子は、電子工作に縁がない人でも「え、時計で?」と気になる組み合わせです。
ここでは投稿の中身と、なぜチープカシオが選ばれたのかを調べてみます。

先に結論をまとめると:
- マイコン(マイクロコントローラ:小型のプログラム可能な制御チップ)を使わず、F-91Wのアラーム機能を起点に水やりのタイミングを作る発想の装置
- F-91Wは1989年発売のロングセラーで、最安値は1500円前後、電池寿命は約7年とされ、壊れても惜しくない改造向きの時計
- 同じ「留守中の水やりを自動化したい」というニーズは自作勢だけでなく、市販のタイマー製品にも広がっている
「チープカシオF-91Wを使用した自動水やり機が完成」という一文から
いっぺいさんの投稿はシンプルでした。
「チープカシオF-91Wを使用した自動水やり機が完成」。
添えられていた動画のサムネイルには、片手で持ち上げた基板が写っています。
F-91Wの液晶にはアラーム設定らしき時刻が表示され、周囲にはブザーや赤いLED、端子台につながる赤黒のコードが伸びていました。
基板のすぐ先には黄色いたらいがあり、チューブが水面に沈んでいます。
チープカシオF-91Wを使用した自動水やり機が完成 https://t.co/cLGKBWn0jo pic.twitter.com/Gc229QjeyG
— 作業者いっぺい (@IppeiTotsuka) 2026年8月9日
いいねは2500件を超え、表示回数は24万回を超えました。
リツイートは599件、引用は91件です。
時計の中身がむき出しの回路につながっている見た目のインパクトも手伝ってか、「見た目が物々しい」と茶化す反応も引用ツイートに並んでいました。
ただ、見た目のインパクトだけで終わらせるのはもったいない話です。
マイコンなしでどうやってタイミングを作っているのか、そもそもなぜチープカシオが選ばれたのか。
ここから先を調べてみました。
なぜ「チープカシオ」だったのか、調べてみました
1500円の時計に、電子工作愛好家が集まる理由
F-91Wは1989年に発売され、今も現行品として売られているロングセラーのデジタル腕時計です。
価格.comの掲載情報では最安値が1500円台、電池寿命は約7年、サイズは38.2×35.2×8.5mm、質量は21gとされています。
アラームやクロノグラフ、LEDライトといった基本機能を備えつつ、樹脂ケースで加工しやすいことから、電子工作の愛好家の間では改造対象としてたびたび取り上げられてきた時計です。
壊しても惜しくない価格帯というのは、失敗を前提にした試作にとって案外重要な条件なのかもしれません。
マイコンなしでどうやってタイミングを作るのか
投稿には回路の詳しい解説がなく、いっぺいさん本人による補足のスレッドも見当たりませんでした。
そのため断定はできませんが、安価なデジタル時計のアラーム音(ブザー)の信号を回路で検知し、それをきっかけにスイッチ役の部品(リレーやトランジスタ)を動かして、ポンプなど外部の機器をオン・オフする、という手法自体は電子工作の界隈で以前から知られています。
Arduinoのようなマイコンボードを使わずに済むぶん、部品点数も少なく、消費電力も抑えられるのが利点とされています。
「時計で水やり」は他の自作勢にも広がっているのか
反応したのは見物人だけではありませんでした。
kunihondenさんは「チプカシは夏休みの電子工作にも使えるらしい」と書き込み、電子工作の題材としてチープカシオが定番になりつつあることをうかがわせています。
チプカシは夏休みの電子工作にも使えるらしい(・ω・)w https://t.co/nAqoodDhMc
— accuris_kunihonden (@kunihonden) 2026年8月10日
コメント欄には、ホースを分岐させて複数の鉢に同時に水をやる工夫や、水やりタイマーを導入したことでジムに通う日や旅行中でも水やりを気にしなくて済むようになった、という声も見られました。
留守中の水やりを自動化したいというニーズは、自作派に限った話ではなさそうです。
自分で回路を組まなくても、選択肢はあります。
タカギの「かんたん水やりタイマー」シリーズは蛇口に取り付けるだけで時間指定の散水ができ、雨センサー付きのモデルなら雨の日の水やりを自動でスキップしてくれます。
電子工作をしない人にとっては、こちらのほうが現実的な選択肢になりそうです。
Shiritomo GADGET編集部の考察
この装置がガジェット好きの目を引くのは、価格帯の逆転現象がそこにあるからだと考えます。
Wi-Fi接続や専用アプリを備えたスマート家庭菜園向けの製品は、数千円から1万円台に及ぶものも珍しくありません。
一方でいっぺいさんの装置は、1500円ほどの腕時計と手元にある部品だけで、同じ「決まった時間に水をやる」という機能を成立させています。
高機能なIoT機器が増えるほど、逆に枯れた技術(長年使われて信頼性が確立した技術)を組み合わせる面白さが際立つように感じます。
F-91Wは1989年の発売から仕様がほとんど変わっておらず、どこがどう壊れるかを想定しやすい時計です。
価格競争が激しい家庭菜園グッズ市場において、シンプルな機構で信頼性を確保するという設計思想は、メーカー側にとっても振り返る価値がある視点ではないでしょうか。
安さと壊れにくさが両立した部品を土台にする発想は、量産品の企画にも応用できる余地がありそうです。
まとめ
1000円台の腕時計が、マイコンなしで水やりを自動化する装置に化けました。
仕組みの細かい正体はまだ明かされていませんが、「壊れる場所が分かっている枯れた部品を組み合わせる」という発想は、家庭菜園グッズを選ぶときのひとつのヒントになりそうです。