「全員のスマホから音を出して盗撮を止めてるんだ」——日本のシャッター音、20年消せない理由
アメリカ人の同僚に「なんで日本のスマホってシャッター音鳴るの?」と聞かれ、「盗撮防止だよ」と答えたら、「え、全員のスマホから音を出して盗撮を止めてるんだ」と笑われた——。
そんなやり取りがXで共感を集めています。
言われてみれば妙な理屈です。
撮る人全員に音を鳴らして、撮られたくない人が気づけるようにする。
スマートフォンを日常的に使っている人なら誰もが体験している「あの音」の裏に、こんな経緯があったことは意外と知られていません。
先に結論をまとめると:
– 日本のスマホでシャッター音を消せないのは法律ではなく、通信キャリア・メーカー間の自主規制によるもの
– 発端は2000年発売の「J-SH04」。
盗撮事件をきっかけに、業界が独自にルール化した
– 世界で同様の規制があるのは日本と韓国のみで、海外版の同じ端末では音が鳴らない

Xで広がった「盗撮防止」への違和感
投稿を見た人たちの反応は、共感と皮肉が入り混じったものでした。
「言われてみれば確かに変」「盗撮したい人はマナーモードのアプリを使うのでは」といった声が相次いだようです。
実際、この規制がどこまで効果を発揮しているのか、Xでは以前から疑問視する声が上がっています。
シャッター音が鳴るのは日本と韓国だけですね。
— KOH|デジタルノマド (@KohNomad) 2023年11月12日
日本は通信事業者による自主規制、韓国は最小音量の義務付け。
盗撮が多いからとはよく言われますが、国際比較して日本が盗撮を含む性犯罪が多いというデータはありません。韓国はわかりません。… https://t.co/kSlBJ5PmNd
このポストが指摘しているとおり、シャッター音を義務付けている国は世界でも日本と韓国だけです。
しかも「盗撮を含む性犯罪が他国より多い」という国際比較データがあるわけではありません。
そうなると、なぜこの仕組みが20年以上も続いているのか、経緯を調べてみる必要がありそうです。
調べて分かったこと
いつ、何がきっかけで始まったのか?
シャッター音を消せない仕様の起点は、2000年にシャープが発売した日本初のカメラ付き携帯電話「J-SH04」です。
開発担当者が後年の取材で明かしたところによると、きっかけはタレントの盗撮事件が世間を騒がせたことだったといいます。
当時から「無断撮影の抑止」を理由に、シャッター音を切れない仕様が採用されました。
法律なのか、それとも業界のルールなのか?
ここが誤解されやすい点です。
日本には、スマホのカメラ音に関する法令や条例は存在しません。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に取材した報道によると、各社とも「盗撮・迷惑防止を目的とした自主規制」と回答しています。
つまり法律で決まっているわけではなく、キャリアとメーカーが顔を揃えて守っている「業界の申し合わせ」に近いものです。
海外向けに販売される同じ端末では、この自主規制が適用されないため、シャッター音がそもそも鳴らない設定になっています。
iPhoneだけの話ではないのか?
この話題、しばしば「日本のiPhoneだけシャッター音が鳴る」と誤解されて広まりますが、それは正確ではありません。
国内で販売されているiPhone、Pixel、Galaxy、AQUOSなど主要メーカーの端末は、いずれも同様にシャッター音を消せない仕様になっています。
唯一の例外に近いのがXperiaで、SIMフリー版は無音化できる一方、キャリア経由で販売される版は音が残るとする報告もあります。
つまり「iPhoneだから」ではなく、「日本で売られている端末だから」というのがより正確な理解のようです。
今も見直しの声はないのか?
実効性への疑問は年々強まっているようです。
2026年6月に報じられた調査では、約75%のユーザーが「シャッター音は不要」と回答し、約9割が「オフにできる設定をなくすべきではない」と答える結果が出ています。
食事の写真を撮るたびに音が鳴ることへの不満や、「本当に盗撮抑止に役立っているのか」という声が背景にあるようです。
一部メーカーでは設定でオフにできる機種も出てきており、大手各社も対応を検討しているとされますが、業界全体でのルール変更にはまだ至っていません。
Shiritomo GADGET編集部の考察
このケースが興味深いのは、「防犯のため」という説明が、20年間ほぼ検証されないまま前提として扱われてきた点です。
効果を測る国際比較データが乏しいまま、業界の申し合わせだけが独り歩きしている状態は、スペック表には出てこないものの使い勝手に直結する「隠れた仕様」の典型といえます。
海外の端末では鳴らない機能が日本の端末だけに残り続けているのは、規制緩和のハードルというより、キャリア・メーカー・世論のどこも「最初に音を消す」動きを取りたがらない構造のためではないでしょうか。
今回のようにXで海外との比較の声が広がることが、実効性を再検証する小さなきっかけになっていくのかもしれません。
スペック表や新機能の発表ばかりが注目されがちなガジェット報道の中で、こうした「当たり前すぎて疑われてこなかった仕様」を掘り下げる視点も、読者の端末選びや使い方の見直しに役立つはずです。
まとめ
日本のスマホでシャッター音が消せないのは法律ではなく、2000年から続く業界の自主規制です。
実効性への疑問の声は年々強まっており、当たり前だと思っていた「あの音」の背景には、意外と検証されてこなかった歴史がありました。
さらに深掘りしたい方へ
シャッター音の実態や見直しの動きは、以下の記事でも詳しく報じられています。
なぜ日本のスマホカメラはシャッター音が鳴るのか – ITmedia Mobile
あの「カシャッ!」は意味なし? スマホの「シャッター音」実態に即さず、ネットに見直しを求める声 – ITmedia Mobile