セガが出した500万ドル、それが今の時価総額800兆円企業を作った
「セガによる救済がなければ、今のNVIDIAはなかった」。
2026年7月15日、秋葉原のゲームセンターでそう語ったのは、世界最大級の時価総額を誇る半導体企業・NVIDIAのジェンスン・フアンCEOです。
舞台はオフィスでも高級ホテルでもなく、営業中のゲームセンター「GiGO秋葉原3号館」の6階。
約30年前、倒産寸前だったNVIDIAを救ったセガの元経営陣と、フアン氏が再会を果たしました。
この記事では、AI業界の巨人とゲーム会社の間に何があったのか、Xでの反応とあわせて深掘りします。
先に結論をまとめると:
– 1990年代、ドリームキャスト用GPU開発に失敗しかけたNVIDIAを、当時のセガ社長・入交昭一郎氏が約500万ドル(約5億円)の追加出資で救った
– その恩義に応えるかたちで、2026年7月15日にフアンCEOが来日し、セガの新作アーケードゲームのデモを披露するイベントが開催された
– NVIDIAはその後1999年に上場し、現在は時価総額約800兆円規模の企業に成長している
Xで何が話題になっているのか
このエピソードが公になると、Xでは一気に拡散されました。
ロイター通信の日本語アカウントが投稿した速報は、7800件を超えるいいねを集めています。
「セガによる救済がなければ、今のエヌビディアはなかった」 フアンCEOが30年前の恩義に感謝(字幕・15日)
「セガによる救済がなければ、今のエヌビディアはなかった」 フアンCEOが30年前の恩義に感謝(字幕・15日) pic.twitter.com/sCtqaPx8Ao
— ロイター (@ReutersJapan) 2026年7月16日
多くの投稿がここで気になるのは、「もしセガがNVIDIAの株を持ち続けていたら」という仮定です。
実際、こんな投稿もXで話題になりました。

セガ、
NVIDIAを助けた時の株を持ち続けていたら、今、余裕で日本の時間総額トップになっていたと。
3倍になっただけで売ってしまったと。
昨日のWBSより
セガ、
— Ring🇯🇵 (@xRINGx) 2026年7月16日
NVIDIAを助けた時の株を持ち続けていたら、今、余裕で日本の時間総額トップになっていたと。
3倍になっただけで売ってしまったと。
昨日のWBSより pic.twitter.com/tzmAUFbgrm
3倍で売却していたら、という「たられば」だけでも十分に胸が熱くなる話ですが、では実際にこの投資と技術的な失敗の裏側では何が起きていたのでしょうか。
一次情報を確認してみました。
なぜNVIDIAは倒産寸前だったのか
ことの発端は1994年に遡ります。
1993年創業のNVIDIAで、フアン氏は『バーチャファイター』の3D表現に魅了されて来日し、次世代ゲーム機「ドリームキャスト」用GPUの共同開発に乗り出しました。
ところが、ここで大きな技術的な誤算がありました。
NVIDIAが採用した「Forward Texture Mapping(順方向テクスチャマッピング)」と「Curved Surfaces(曲面処理)」という技術が、ドリームキャストの設計とかみ合わなかったのです。
実際に必要だったのは「Inverse Texture Mapping(逆方向テクスチャマッピング)」とポリゴンベースの処理でした。
開発開始から9カ月が経過して、ようやくこの方向性の誤りが判明したといいます。

フアン氏は famitsu.com の取材で、当時の状況をこう振り返っています。
「技術的な間違いを犯したにもかかわらず、(当時セガ社長だった)入交さんは、正しい人材がここにいると認めてくれました」。
開発の継続は絶望的とも思える状況で、フアン氏は契約解除と追加出資という異例の申し出をセガ側に持ちかけ、入交氏がこれを受け入れました。
この500万ドルの支援がなければ、NVIDIAはそのまま資金が尽きていた可能性が高いといいます。
イベントでは何が披露されたのか
7月15日のイベントには、フアン氏に加えて、セガサミーホールディングス社長兼セガ会長の里見治紀氏、セガ社長COOの内海州史氏、そして元セガ社長の入交昭一郎氏、『バーチャファイター』の生みの親である鈴木裕氏が集結しました。
このイベントで一際盛り上がりを見せたのが、NVIDIAの最新GPU技術「RTX Spark」上で稼働する新作『VIRTUA FIGHTER CROSSROADS』(2027年発売予定、対応ハードは未定)のデモです。
NVIDIAのCEO ジェンスン・フアン氏がセガとの思い出を語る
・元セガ社長 入交氏が、約30年前のNVIDIAに約5億円の資金支援を決断
・NVIDIA立ち上げの頃、ジェンスン氏はゲーセンで毎日『デイトナUSA』をプレイ
・RTX Sparkで動く『バーチャファイター クロスロード』お披露目
NVIDIAのCEO ジェンスン・フアン氏がセガとの思い出を語るhttps://t.co/yqPGtx2jWb
— 電ファミニコゲーマー (@denfaminicogame) 2026年7月16日
・元セガ社長 入交氏が、約30年前のNVIDIAに約5億円の資金支援を決断
・NVIDIA立ち上げの頃、ジェンスン氏はゲーセンで毎日『デイトナUSA』をプレイ
・RTX Sparkで動く『バーチャファイター クロスロード』お披露目 pic.twitter.com/EUlWVFtdTu
会場ではGeForce RTX 5090や、まだ発売前の次世代ノートPC「RTX Spark」もプレゼントとして配布され、登壇者がサインを入れる一幕もありました。
フアン氏の来日には別の狙いもありました。
翌16日には日本政府や大手企業とのAI・ロボティクス分野での大型パートナーシップ発表が控えており、高市早苗首相やソフトバンクの孫正義会長との面会も予定されていたのです。
Shiritomo GAME編集部の考察:なぜ今、この話が刺さるのか
このエピソードが単なる美談で終わらず、Xで大きく拡散した背景には、AIブームの主役NVIDIAの原点が「ゲーム」だったという再発見があると考えます。
GPU(画像処理用の半導体)は元々ゲームのために生まれた技術で、その延長線上に現在のAIブームがあります。
NVIDIAが「AI企業」として語られがちな今だからこそ、その足元にあるゲーム産業への敬意が新鮮に映ったのでしょう。
もう一つ興味深いのは、フアン氏が技術的な失敗を隠さず語った点です。
「間違った方向性で9カ月開発した」という事実を経営トップ自らが公の場で明かすのは、日本企業ではなかなか見られない振る舞いです。
失敗を認めた上で信頼関係を築くという姿勢そのものが、今回のイベントの説得力を支えていたのではないでしょうか。
業界の垣根を超えた「恩返し」のストーリーは、ビジネスの世界でも記憶され続けることを示す好例といえるでしょう。
まとめ
30年前の一つの投資判断が、今や時価総額800兆円規模の企業を支える礎になっていました。
ゲームセンターという原点回帰の舞台で交わされた感謝の言葉は、AIとゲーム産業のつながりを改めて浮き彫りにしています。