会場での動画撮影、ずっと禁止だった女子プロレス団体が「解禁」を選んだ理由
「みんな広めてね!」。
女子プロレス団体スターダムの岡田太郎社長が7月17日、そう呼びかけました。
長年禁止されてきた会場内での動画撮影を、一定の条件付きで解禁するという発表です。
観客が撮った映像をSNSに投稿すること自体は、多くのイベント運営にとって悩みの種でもあります。
肖像権やコンテンツの価値をどう守るか、他の観客の権利をどう扱うか——。
この記事では、スターダムが「解禁」と「ルール整備」をどう両立させたのか、そこから見えるファンコンテンツ活用のヒントを掘り下げます。
先に結論をまとめると:
– スターダムは会場での動画撮影を条件付きで解禁し、スマホ限定・連続30秒以内・BGM消音・第三者の顔へのモザイクなど具体的なルールを同時に定めた
– 生成AIによるディープフェイクの生成・加工は明確に禁止する一方、広告機能による収益化までは妨げないという線引きをしている
– 「ファンに広めてもらう」ことを目的に据えつつ、選手の権利とコンテンツ価値の保護を両立させる設計になっている
Xでの盛り上がり
発表を最初に伝えたのは、岡田社長本人のポストでした。

スターダムファンの皆様へ
— Taro Okada_岡田太郎 (@tokada_mh4e) 2026年7月17日
コンテンツガイドラインを制定しました。
分かりやすく言うと、動画撮影解禁、色々みんな広めてね!というところであります。
これも、ファンの皆様に楽しんでいただくためと、スターダムがもっともっと広まって行くための決断です。… https://t.co/kCuroKpF6h
「動画撮影解禁、色々みんな広めてね!というところであります」という言葉には、規制強化ではなく、あくまでファンとの距離を縮めるための施策だという意図がにじみます。
実際、投稿は1000件を超えるいいねを集め、ファンの間でも好意的な反応が広がりました。
ただ、「解禁」と一言でまとめてしまうと、ルールの中身までは伝わりません。
そこで公式サイトのガイドラインを確認してみました。
調べて分かったこと
「解禁」の中身は何が変わったのか
スターダムが公開したガイドラインによると、これまで禁止されていた会場での動画撮影が、スマートフォンに限り認められるようになりました。
ビデオカメラや一眼レフなど専門機材での撮影は引き続き禁止で、フラッシュ・三脚・自撮り棒の使用も控えるよう求められています。
投稿できる動画は「連続30秒以内」という上限付き。
1投稿に複数の動画を添付する場合も、合計で30秒を超えてはいけません。
試合全体を撮って公開する、といった使い方は想定されていないことが分かります。
なぜここまで細かいルールを定めたのか
ガイドラインが特に強調しているのが、音声と第三者の顔の扱いです。
入場曲や会場BGMなどの音楽はガイドラインの利用対象外とされており、投稿する際は消音するか、権利処理済みの別音源に差し替えることが必須になっています。
また、映り込んだ他の観客の顔については、ぼかしや削除といった配慮を行い、第三者の権利を侵害しないよう注意が求められています。

これは音楽の著作権と、観客自身のプライバシーという2つのリスクを同時に潰しにいく設計だと言えるでしょう。
ファンコンテンツを歓迎する一方で、権利面のトラブルの芽をあらかじめ摘んでおく——そんな設計です。
SNS運用担当者であれば、UGC(ユーザー生成コンテンツ)施策を考える際に参考になる視点でしょう。
生成AIの扱いはどうなっているのか
もう一つ目を引くのが、AIに関する明確な線引きです。
ガイドラインは「生成AIによるスターダム関連コンテンツの生成、加工(いわゆるディープフェイクの生成を含みます)は禁止」と明記しています。
一方で、映像の補正やノイズ除去、字幕作成といった付随的な用途でのAI利用は認められており、「AIを使うこと自体がダメ」という単純な話ではありません。
収益化についても同様に、線引きが具体的です。
プラットフォームの広告機能によるアカウント・チャンネルの収益化までは妨げないものの、対価を得るための直接的な商用利用は一切禁止されています。
ファンが自分のチャンネルで広告収入を得ることは許容しつつ、公式コンテンツを商材として売買するような行為には歯止めをかける、というバランス感覚が見て取れます。
Shiritomo編集部の考察:明日からやることは2つ
企業・団体アカウントがUGC施策を検討する際、今回のスターダムの設計は一つのお手本として参考にできます。
ポイントは「何を禁止するか」ではなく「何を明確に許可するか」から発想している点です。
撮影OK・秒数上限・音声処理・顔のモザイクという4つの具体条件を先に示すことで、ファンは迷わず投稿でき、運営側も想定外のトラブルを未然に防げます。
もう一つ注目したいのは、社長自身がXで直接呼びかけた点です。
公式アカウントからの告知ではなく、経営トップの肉声を通すことで「規制の緩和」というポジティブな受け止め方をファンに促す効果があったと考えられます。
SNS施策の告知は誰の口から発信するかによって印象が大きく変わる——今回の事例はその好例と言えるでしょう。
まとめ
スターダムは長年禁止していた会場での動画撮影を、条件付きで解禁しました。
秒数制限・音声処理・AI利用禁止などを盛り込んだファンコンテンツガイドラインも、7月17日に同時発表しています。
権利保護とファン参加のバランスを取ったルール設計は、企業・団体がUGC活用を進める際の参考事例になりそうです。